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馬車に揺られ、かれこれ小1時間。
辿り着いた先はこじんまりとした小さな教会だった。
くたびれた扉を抜け、礼拝堂の長椅子にドサッと下ろされる。
「ここまでで良いか?頼まれた通りにやっただろ?」
「…分かったわょ。はい。」
ポンっと投げ捨てられた皮袋の中を除き、男は満足したように笑いその場を立ち去っていった。
完全に1対1の状況。
「それで、何のようなの?」
身体を起こして、反対側に立つサラへと顔を向ける。手が縛られたままなのは癪だが、寝たフリをするのにも疲れていた。
「あら、目が覚めてたの。ふふっ。貴方に消えて貰おうと思って。」
妖艶に笑いながら話すサラは、以前の天真爛漫さは消え、どこか狂気めいた雰囲気を持っていた。
「…それはまた物騒ですこと。私が消えたとして、貴女に何の得があるの?」
(まぁ、簡単にはやられないけどね。)
直接話すのは初めてではあるが、1年前のことがある。むしろ恨むなら私の方じゃないのか…?なんてことを考えながら、シャルノアは辺りに目を向けて状況を把握していた。
「1年前、貴女はバルド様に選ばれたのでしょう?そのまま立場を確立すれば良かったのに、王宮から去ったのは貴女の意思ではなくて?」
「うるさいわね、貴女に何が分かるの⁈高位貴族に産まれて、家族にも愛されてきた貴女なんかに、私の気持ちが分かる訳ないわ。」
(…分かりたくもないわ。)
案外幼稚な話し方の相手に、シャルノアは呆れていた。表情に出ないように気をつけながら心の中で悪態をつく。
「家庭の状況は人それぞれでしょ。私が貴女を理解出来ないように、貴女にも私の苦労が分かる訳ないのよ。当たり前なことを言わないで。」
ピシャリと言い放つシャルノアに、憎悪の顔を向けながらもサラは唇を噛み締めていた。元々頭がキレるタイプではないので、どうやら言い返す言葉を必死に探しているらしい。
「それで、ここまで連れてきてどうするの?今の私は皇太子の婚約者よ?タダで済む訳ないわ。覚悟は出来てるのよね?」
シャルノアは相手にならない刺客たちも、サラの仕業ではないかと考えていた。大した実力者も雇えない今の状況で杜撰な計画を推し進めている自覚はあるのだろうか?
「…うるさいわね。攫われた貴女は夜盗に襲われて絶望の末、自ら命を絶つの。バルド様に操を立てられずにね。ちゃんと私が場所を整えてあげるわ。貴女さえいなければ。」
(頭大丈夫?そもそも夜会から攫ってきた人間が責任追及されるの分かってないのかしら?)
あまりの杜撰な計画に呆れてものが言えずにいると、シャルノアが怯えていると思ったのだろうか、サラは上手く勘違いしてくれたらしい。
「フッ。怖いようね。大丈夫、すぐには見つからないわ。貴女は行方不明のまま忘れ去られるの。あぁ、駆け落ちでもしたのかしら?彼女には王族の荷が重すぎたみたいね。そう噂が流れ出すわ。傷心のバルド様を支えるのは私の役目。」
フフフっと笑うサラは、自分の世界に入り込んでいる。
(私がいなくても、1度見限った人をあの人たちが求めることなんてないわ…)
王族の人間の覚悟や姿勢をシャルノアはよく知っている。自分が居なくなれば、他国の王女でも呼び出して政略結婚でも勧めるに違いない。その方が、断然この国にとっては良くなるだろう。
(今の彼女に話した所で理解されるハズないわね。…そろそろ良いかしら。)
スルッ。
縄を自力で解いたシャルノアは、自分に酔っているサラに背後から近づき、その首元に手刀を当て気絶させた。
「結局、大した理由じゃないのね。残念だわ。」
辿り着いた先はこじんまりとした小さな教会だった。
くたびれた扉を抜け、礼拝堂の長椅子にドサッと下ろされる。
「ここまでで良いか?頼まれた通りにやっただろ?」
「…分かったわょ。はい。」
ポンっと投げ捨てられた皮袋の中を除き、男は満足したように笑いその場を立ち去っていった。
完全に1対1の状況。
「それで、何のようなの?」
身体を起こして、反対側に立つサラへと顔を向ける。手が縛られたままなのは癪だが、寝たフリをするのにも疲れていた。
「あら、目が覚めてたの。ふふっ。貴方に消えて貰おうと思って。」
妖艶に笑いながら話すサラは、以前の天真爛漫さは消え、どこか狂気めいた雰囲気を持っていた。
「…それはまた物騒ですこと。私が消えたとして、貴女に何の得があるの?」
(まぁ、簡単にはやられないけどね。)
直接話すのは初めてではあるが、1年前のことがある。むしろ恨むなら私の方じゃないのか…?なんてことを考えながら、シャルノアは辺りに目を向けて状況を把握していた。
「1年前、貴女はバルド様に選ばれたのでしょう?そのまま立場を確立すれば良かったのに、王宮から去ったのは貴女の意思ではなくて?」
「うるさいわね、貴女に何が分かるの⁈高位貴族に産まれて、家族にも愛されてきた貴女なんかに、私の気持ちが分かる訳ないわ。」
(…分かりたくもないわ。)
案外幼稚な話し方の相手に、シャルノアは呆れていた。表情に出ないように気をつけながら心の中で悪態をつく。
「家庭の状況は人それぞれでしょ。私が貴女を理解出来ないように、貴女にも私の苦労が分かる訳ないのよ。当たり前なことを言わないで。」
ピシャリと言い放つシャルノアに、憎悪の顔を向けながらもサラは唇を噛み締めていた。元々頭がキレるタイプではないので、どうやら言い返す言葉を必死に探しているらしい。
「それで、ここまで連れてきてどうするの?今の私は皇太子の婚約者よ?タダで済む訳ないわ。覚悟は出来てるのよね?」
シャルノアは相手にならない刺客たちも、サラの仕業ではないかと考えていた。大した実力者も雇えない今の状況で杜撰な計画を推し進めている自覚はあるのだろうか?
「…うるさいわね。攫われた貴女は夜盗に襲われて絶望の末、自ら命を絶つの。バルド様に操を立てられずにね。ちゃんと私が場所を整えてあげるわ。貴女さえいなければ。」
(頭大丈夫?そもそも夜会から攫ってきた人間が責任追及されるの分かってないのかしら?)
あまりの杜撰な計画に呆れてものが言えずにいると、シャルノアが怯えていると思ったのだろうか、サラは上手く勘違いしてくれたらしい。
「フッ。怖いようね。大丈夫、すぐには見つからないわ。貴女は行方不明のまま忘れ去られるの。あぁ、駆け落ちでもしたのかしら?彼女には王族の荷が重すぎたみたいね。そう噂が流れ出すわ。傷心のバルド様を支えるのは私の役目。」
フフフっと笑うサラは、自分の世界に入り込んでいる。
(私がいなくても、1度見限った人をあの人たちが求めることなんてないわ…)
王族の人間の覚悟や姿勢をシャルノアはよく知っている。自分が居なくなれば、他国の王女でも呼び出して政略結婚でも勧めるに違いない。その方が、断然この国にとっては良くなるだろう。
(今の彼女に話した所で理解されるハズないわね。…そろそろ良いかしら。)
スルッ。
縄を自力で解いたシャルノアは、自分に酔っているサラに背後から近づき、その首元に手刀を当て気絶させた。
「結局、大した理由じゃないのね。残念だわ。」
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