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子爵家
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「テイラー!ようやく君と一緒になれる!」
アリストは夜会の事を一先ず忘れて、テイラーに会いに行った。
テイラーは子爵家で、リノナリザの伯爵家よりも家格は落ちる。
それでも、家格よりもアリストはテイラーを望んだ。
「アリスト」
夜会では随分とおとなしかったテイラーも今は笑顔でアリストを迎え入れてくれた。
「本当…?アリストと結婚できる?」
「ああ!」
アリストが婚約成立の書類だと思っていたものは、婚姻書類だった。
サロンで知った息子の道化具合を知り、早く婚姻させるべきだと判断したようだ。
暫く、貴族の集まる場への出席は控えなければならない。
わざわざ笑われに行く程心が強くはない。
テイラーとの婚約期間がない事だけは、あの夜会の失態で唯一喜ぶべき点だったかもしれない。
「式はあげていないけど、書面上ではもう私達は夫婦となっているんだ」
「!…でも、私は子供を…」
「大丈夫だよ。跡継ぎなら養子を貰うことで話はついている」
テイラーの不安を取り除くように肩を抱いた。
「…ほんと?ほんとに?」
瞳に涙を浮かべるテイラーを愛しく思う。
「ああ、本当だ!」
「よっっっしゃあああっっ!」
「…テイラー?」
テイラーは拳を握って、雄々しく叫んだ。
「感謝するぜ!アリスト!これで気ままな貴族ライフ確定ー!っしゃあ」
「テイラー、…その声、」
少し掠れのある控えめな声が急に、低くよく通る元気の良いものに変わった。
「お?気づいた?そりゃそうか。アリストの愛しのテイラーたんは男の娘でしたー!なんつって!」
「え、…え?」
「いやーもう、この前の夜会でリノナリザの連れが、辺境の学園時代の知り合いだったからめちゃくちゃ焦ってたんだけど。バレる前に婚姻成立してよかったぁ♡」
「テイラー…?ど、して…私を、騙していたのか?」
「いや、別に騙してるって意識はないかな。隠してはいたけど。
言っとくけど、こっちからは仕掛けてないよ。アリストが色々勝手に勘違いして惚れたんじゃん?
アリストの親父さんは俺が男だって知ってるよ。知ってて認めてくれたって事でしょ。懐深いよねぇ」
この国では同性婚を認められている。
認められてはいるが、偏見が全く無いわけでもない。
『テイラーとの婚約は苦労する』
父親が言ったのは、そういう意味だったのだ。
「なんで、なんで男だって隠していたんだっ!」
「んー?面倒だったから。実家の継ぐことがね」
テイラーが男児だったなら、長子だ。
本来、子爵家の跡取りだったのだが、当主教育を受け、自分向きではないと、早々に諦めた。
テイラーが当主にならぬなら、弟が継ぐ事になる。
当然、いずれ家からは出て行かねばならぬわけで。
「寄生先を探してたんだよねぇ。楽して貴族生活続けられる方法。婿に行くことも考えたけど、当主にされるのも、補佐も…面倒じゃん?だからさー」
幼い頃から可愛らしい顔立ちのテイラーは、よく女装をしていた。
もちろん家の敷地内だけだったのだが、そこで出会い、アリストに惚れられた。
通う学園がアリストとは異なったので、テイラーの性別は知られることはなかった。
とは言っても、第三者の口から知られる可能性もあった。
そうなったらそうなったで、また別の寄生先を探すだけだったのだが、見事に『結婚』までこぎ着けてしまったのだ。
「ま、そんなわけで。よろしくね♡旦那様。
あ、もちろん寝室はわけといて。そっちの趣味はないから共寝とかマジ勘弁な?」
アリストは夜会の事を一先ず忘れて、テイラーに会いに行った。
テイラーは子爵家で、リノナリザの伯爵家よりも家格は落ちる。
それでも、家格よりもアリストはテイラーを望んだ。
「アリスト」
夜会では随分とおとなしかったテイラーも今は笑顔でアリストを迎え入れてくれた。
「本当…?アリストと結婚できる?」
「ああ!」
アリストが婚約成立の書類だと思っていたものは、婚姻書類だった。
サロンで知った息子の道化具合を知り、早く婚姻させるべきだと判断したようだ。
暫く、貴族の集まる場への出席は控えなければならない。
わざわざ笑われに行く程心が強くはない。
テイラーとの婚約期間がない事だけは、あの夜会の失態で唯一喜ぶべき点だったかもしれない。
「式はあげていないけど、書面上ではもう私達は夫婦となっているんだ」
「!…でも、私は子供を…」
「大丈夫だよ。跡継ぎなら養子を貰うことで話はついている」
テイラーの不安を取り除くように肩を抱いた。
「…ほんと?ほんとに?」
瞳に涙を浮かべるテイラーを愛しく思う。
「ああ、本当だ!」
「よっっっしゃあああっっ!」
「…テイラー?」
テイラーは拳を握って、雄々しく叫んだ。
「感謝するぜ!アリスト!これで気ままな貴族ライフ確定ー!っしゃあ」
「テイラー、…その声、」
少し掠れのある控えめな声が急に、低くよく通る元気の良いものに変わった。
「お?気づいた?そりゃそうか。アリストの愛しのテイラーたんは男の娘でしたー!なんつって!」
「え、…え?」
「いやーもう、この前の夜会でリノナリザの連れが、辺境の学園時代の知り合いだったからめちゃくちゃ焦ってたんだけど。バレる前に婚姻成立してよかったぁ♡」
「テイラー…?ど、して…私を、騙していたのか?」
「いや、別に騙してるって意識はないかな。隠してはいたけど。
言っとくけど、こっちからは仕掛けてないよ。アリストが色々勝手に勘違いして惚れたんじゃん?
アリストの親父さんは俺が男だって知ってるよ。知ってて認めてくれたって事でしょ。懐深いよねぇ」
この国では同性婚を認められている。
認められてはいるが、偏見が全く無いわけでもない。
『テイラーとの婚約は苦労する』
父親が言ったのは、そういう意味だったのだ。
「なんで、なんで男だって隠していたんだっ!」
「んー?面倒だったから。実家の継ぐことがね」
テイラーが男児だったなら、長子だ。
本来、子爵家の跡取りだったのだが、当主教育を受け、自分向きではないと、早々に諦めた。
テイラーが当主にならぬなら、弟が継ぐ事になる。
当然、いずれ家からは出て行かねばならぬわけで。
「寄生先を探してたんだよねぇ。楽して貴族生活続けられる方法。婿に行くことも考えたけど、当主にされるのも、補佐も…面倒じゃん?だからさー」
幼い頃から可愛らしい顔立ちのテイラーは、よく女装をしていた。
もちろん家の敷地内だけだったのだが、そこで出会い、アリストに惚れられた。
通う学園がアリストとは異なったので、テイラーの性別は知られることはなかった。
とは言っても、第三者の口から知られる可能性もあった。
そうなったらそうなったで、また別の寄生先を探すだけだったのだが、見事に『結婚』までこぎ着けてしまったのだ。
「ま、そんなわけで。よろしくね♡旦那様。
あ、もちろん寝室はわけといて。そっちの趣味はないから共寝とかマジ勘弁な?」
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