魔甲闘士レジリエンス

紀之

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第55話 ドゥームズデイ④2人の救世主   魔甲闘神メサイヤ 登場

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スィスモスへと合身したレジリエンス、ガッシングラム、サンダーバードはもう一度光輝の宝珠の半球を使い、その力を引き出そうと両刃の大斧へ近づける。

だが結果は同じ。

力の反発が起こり、宝珠は空高く跳ね上がってしまった。

『あちらの力が強すぎる。あれを制御するにはもう一人分スィスモスかノテロスがいる』

『先に言えよ、そういう事は。こっちは3体しかいないのに無理じゃねえか』

サンダーバードとガッシングラムがそんなやり取りをしている間に類人猿型上級UMAマピングアリは相手に鎌を振り下ろす。

その背後に火球を見たスィスモスは怪物の盾となりその攻撃を受ける。

火球を撃ったエリクシリオが降りてくる。

「ここにいたのですね、タツト。でもなぜ」

彼女は手に宝珠を持っていた。

進路上に空中へ飛ばされた宝珠の光が見えたのでその確認をしようとした所で彼らに出会い、彼らと戦っているUMAへ攻撃を掛けたのだった。

「あいつは紗良が変化した物なんだ」

「何ですって?それでこの宝珠の力を使おうと?」

スィスモスは頷く。

そこに2人に割って入るようにマピングアリが襲いかかる。

2人はそれを躱し、距離を取る。

「そんな事をしたら貴方の体がどうなるか分かっているのですか?完全に人でなくなる可能性が高いのですよ。宝珠もそれに今私も父が人で無くなる瞬間を見てきました。そしてそれがどんな結果をもたらすか。危険極まる思想とそれを実行しようとする意志と力を行使しているのですよ」

「それでも俺は彼女を救いたい。紗良とその家族を。戦士ではなく、人間の生き方を教えてくれた彼らを。それにずっと考えていたんだ。何故俺とレジリエンスが今まで存在してきたのか。今日のこの災厄を止める為だってな」

「タツト、その考え方はいけません」

「そうかもしれない。だがあなたの父親は人間を捨てていないと思いますよ。あの塔の光が人の負の力の極限の体現ならば俺は、俺達は正の力の極限を体現しなければならない。そうは思いませんか?」

その言葉にエリクシリオは目を閉じて

「そうですね。私もサラを救いたいと願うのは同じです。タツトこちらに」

そう言うとスィスモスの手を取り半球へと乗せる。

「何を?」

「救うのでしょう、彼女と世界を。その為の作業工程をお互いに知っておく必要があると思うのですが」

「協力してくれるんですか?」

「『俺達が』といったでしょう?宝珠の制御をこちらでします。そしてアイディオンを宝珠の魔力の媒介にします。これでも膨大な魔力量にあなたの体が耐えきれるかどうか」

「いえ、それでいきましょう」

エリクシリオはアイディオンの鎧を脱ぐと宝珠を手に持ち呪文を唱え始める。

宝珠から光が放たれ、アイディオンの鎧は頭部がライオンである炎のグリフォンへと変化する。

「この世界に光を!超融合合身!!」

エリクシリオと達人の声が重なると同時にスィスモスの体におぶさるようにグリフォンが前足をその肩にかける。

グリフォンはケイモーン・ノテロスの姿へと変化すると各パーツがスィスモスの鎧の上に被さっていく。

ノテロスの兜の両側面にスィスモスの角が生えた頭部

肩のパーツが重なるように配置される。

両腕の爪が外れて左肩の戦鎚に合体して両刃斧となる。その腕の空いた部分にノテロスの
腕パーツがまるで手袋をはめるように合体する。その後斧は左腕に接続される。右手には両刃のトライデントを持つ。

両脚も下駄かブーツを履くようにそのままノテロスの脚パーツが合体

背部にノテロスの翼が装備される。この左の翼の可動域がスィスモスの左肩の斧の部分と干渉する為に斧の位置が変わったのである。

最後にスィスモスのライオンの頭をかたどった胸パーツの上にノテロスの鳥の胸甲が重なる。

「やった、成功したわ。ハイパー・ノテロスへの合身に」

エリクシリオは額の汗を拭う。

新たな敵の出現に動じることなく向かってくるマピングアリ。

それに対して、ハイパー・ノテロスは左腕の斧をクローに変化させると怪物の胸に突き刺す。

怪物の悲鳴と同時にその体に光の亀裂が走り、その中から神秘の爪が八重島紗良の体を引っ張り出した。

爪が高く上がるのと同時に右手のトライデントを怪物に突き刺す。

マピングアリは断末魔の叫びを短く上げて光の粒子となって消えていった。

「八重島さん、紗良を」

ハイパー・ノテロスが紗良を父親の八重島修一郎に渡す。

「ありがとう、達人君」

隣にいる八重島梓も夫と同じく礼を言う。

(後はあれだ)

ハイパー・ノテロスは翼を広げ塔へ向かった。



「これだけ攻撃しても傷一つ付けられんとは」

タワー攻撃の指揮を執る自衛官に緊急の連絡が入る。

「はい、いえ全く。…なんですって!?正気なんですか、しかし、しかしっ、分かりました」

「どうしたんです」

「全員退避だ。この一帯を核攻撃するそうだ。それも後2時間後だ」

「そんな馬鹿な!よく政治家はそんな事を了承しましたね?」

「自分達は生き残れると信じ切っているのさ。だが命には代えられんのも事実。マルスにも連絡を入れろ」


その様子を見ていたアポロは

「動きが慌ただしいな。何かあったか?」

『どうやら連中は核攻撃を決めたようだ』

「ティブロン、なんだねそれは?強力な兵器だというのは察せるが」

『あれは使用後に強力な毒素をばらまくのですよ』

「素晴らしい。それを浄化できればこの破壊劇の最高の終幕となるだろう。どうだね、魔甲闘神の調子は?」

『いつでも行ける。だが気を抜くとバラバラになりそうだ』

「しかし、いやあれはなんだ?」

アポロの目の前にハイパー・ノテロスが姿を現した。

「あれは・・しかし今更何をするつもりだ?」

アポロの疑問に答えるかの様にハイパー・ノテロスは両腕を突き出す。

右手のトライデント・左腕の大斧・そして胸の鳥の頭から赤い光がそれぞれ伸びて彼の目の前で巨大な光球を形作る。

そしてその赤い光球を塔目掛けて撃ち出した。

「いかん!」

光球はアポロの懸念通り塔のバリアーを容易く破るとそのまま塔を真っ二つにへし折り爆散させた。

「何という力!!我らが魔甲闘神メサイヤに匹敵する!!」

寸前で離脱したアポロはその爆発に吹き飛ばされながらもその力を開発者として称賛せずにはいられなかった。

その昔彼がレジリエンスに望んでいた力を今発揮したからである。


「あの野郎、やりやがった」

「帰るか、ナウエリト」

「そうだな。目的は達成されたからな」

2体のUMAは敵に称賛を送りながら消えていった。

「やった?やったのか!?これで日本は、世界は救われる」

自衛官は副官と共に安堵の表情を見せる。

その言葉通り、この情報は直ちに首相官邸と国連軍に通達され核攻撃は中断された。

「良かった良かった。これで我が国は危機を脱した訳だ。この空も直に元の青空になるだろう」

笑顔を見せる首相は秘書が軽蔑の目で自分を見ている事に気が付かなかった。


「後はこの空を戻せば」

だが達人はこれ以上ハイパー・ノテロスを浮遊させることができなかった。

4m近い巨体を何とか着地させた後ハイパー・ノテロスは仰向けに倒れてしまった。

「達人さん、しっかり」

アルトマルスがハイパー・ノテロスへ駆け寄る。

ハイパー・ノテロスの巨体が2つの甲冑と2体のUMAへ分離する。

マルスがレジリエンスを助け起こしたその時

空に眩い光が出現した。

「あれは・・天使か?」

光を放つその鎧は明らかに未知の魔法の鎧ソーサリィメイルだった。

U字に湾曲した角を持つ三つ目状のバイザーを持った兜

背中の4枚の翼

右腕が剣、左腕に丸盾を模した装甲をした腕甲

両脚のパーツは猛禽類の脚の様だった。

その魔甲闘士は右手を掲げ、人差し指を天に向ける

たちまちに空の割れ目は塞がり元の青空が戻り、荒れていた海は穏やかになった。

それが魔甲闘士、いや魔甲闘神メサイヤの力だった。

その姿と力は世界中の空に映し出され、早速信仰する者達が現れた。

この天使がこれから何をするのかも知らずに。



後に審判の日と呼ばれる出来事は終わった。

世界各地を襲った災害によって僅か1日で世界人口は半分となり、各地の水没によって世界地図もまた変わった。

大西洋上に浮かぶアトランティス大陸から驚くべき声明がメサイヤから発されるのはその次の日の事だった。

それは新たな世界をめぐる最大最後の戦いの始まりであった。

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