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ダンジョン~〝戦極〟覚醒編
066:奈落
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「十五分? なぜそんに待つ必要があるんだ?」
エカテリーナは「ふぅ」と疲れたように軽く息を吐き、戦極へと投げやりに話す。
どうやら待ち時間があることで、暇つぶしに話す様子がありありと伝わる。
「いいですこと下等種。このダンジョン名のもう一つの由来は、階段の先が〝暗黒空間〟につながるからですわ」
「暗黒空間? なんだよそれ」
「名前の通り、暗黒としか言いようのない〝光のささない暗闇〟だからですわ」
まてよ……一階にも日時計に似たオブジェがあった。
確かにこのドS女は、一階でも入る時にそれを確認していたし、ここでも似たように見ていたな。
つまりは当たりの時間に入らないと、そこへ飛ばされちまうって事かよ。
「だからタイミングを見てから入るってことか。その暗黒空間はどうなっているんだ?」
「普通のダンジョンですわ。ただ暗闇ですから視界は皆無、手持ちの明かりだけが頼りですわね」
手持ちの明かりか。
桜や真乃依なら明かりも出せるのか? 他の二人は戦士系だからムリかもしれない。
とうぜん俺はムリだ、が。まぁそんな所へ行かなければいいだけだ。
「その暗黒空間の情報があるってことは、生還者もいるんだろう?」
「えぇいましたわ。偶然に生き残り、なんとかキャンプ地へ帰還したらしいですわ」
という事は、上層へ戻れはするのか。
だがそもそも階段を登れば戻れると思うが、この感じだと使えないっぽいな。
ただ暗闇での行動は、通常は死を意味する。
帰還者はよほど運がよかったのか、それを覆す強さがあったかだな。
「チッ、話にならねぇ馬鹿女だな桜! それより今の話は本当なのかよ先生?」
「そのままですわ。だから使えない勇者は大人しくしていなさい」
そう言うとエカテリーナは周囲を見渡し、「来ていますわね」と呟く。
だがその言葉の意味が分からない昇司は、桜への苛立ちと、それの元となった戦極へと増悪をつのらせる。
(チッ、コイツも俺を馬鹿にしやがって! 剛流のボケも妙な自信でうぜぇ……。それもこれも戦極の野郎が全部悪い)
昇司は戦極を睨みながら、何か戦極へ嫌がらせが出来ないかと考える、と……。
(いるじゃあねぇか~丁度そこによぉぉぉぉ?)
嫌らしい笑みを浮かべ、戦極へと近づく昇司。
穴の中に小石を投げ込んでいた戦極は、背後からの気配に気が付き、そちらを向こうとした瞬間、昇司は剛流へとケリを放つ。
「オラアア! 邪魔だデカブツ! ボヤッと立ってんじゃね~!!」
「え、ちょ、昇司くん何を!?」
突然蹴られた剛流は、戦極へ倒れるのを防ぐために墓石へとつかまる。
が、その墓石が突然〝ボロリ〟と崩れ落ち、つかんでいた部分が落ちてしまう。
あせった剛流は、思わずエカテリーナの肩へと手を伸ばし、そのまま転倒。
「タケル!? ッゥ、マズイですわッ!!」
エカテリーナはバランスを崩し、漆黒の闇の中へと転がり落ちる。
だが落ちきる刹那、消える寸前の右手から赤い糸がでると、近くの墓石へとソレが飛ぶ。
そこまでは良かった。
が、次の瞬間、赤い糸を絡めた墓石が真っ二つに折れたと同時に、その残骸が戦極へと向かってきた。
「うっそだろッ!?」
突然の事に戦極も回避できず、そのまま漆黒の闇の中へと転がり落ちていく。
「「戦極さんッ!!」」
剛流も桜も手を伸ばして、いまだ見える戦国の手を掴もうとするが。
「「ああああああッ!?」」
右中指の第一関節を何とか掴んだ桜だったが、そのままスッポ抜けてしまい戦極は漆黒の闇へと呑み込まれてしまったのだった。
エカテリーナは「ふぅ」と疲れたように軽く息を吐き、戦極へと投げやりに話す。
どうやら待ち時間があることで、暇つぶしに話す様子がありありと伝わる。
「いいですこと下等種。このダンジョン名のもう一つの由来は、階段の先が〝暗黒空間〟につながるからですわ」
「暗黒空間? なんだよそれ」
「名前の通り、暗黒としか言いようのない〝光のささない暗闇〟だからですわ」
まてよ……一階にも日時計に似たオブジェがあった。
確かにこのドS女は、一階でも入る時にそれを確認していたし、ここでも似たように見ていたな。
つまりは当たりの時間に入らないと、そこへ飛ばされちまうって事かよ。
「だからタイミングを見てから入るってことか。その暗黒空間はどうなっているんだ?」
「普通のダンジョンですわ。ただ暗闇ですから視界は皆無、手持ちの明かりだけが頼りですわね」
手持ちの明かりか。
桜や真乃依なら明かりも出せるのか? 他の二人は戦士系だからムリかもしれない。
とうぜん俺はムリだ、が。まぁそんな所へ行かなければいいだけだ。
「その暗黒空間の情報があるってことは、生還者もいるんだろう?」
「えぇいましたわ。偶然に生き残り、なんとかキャンプ地へ帰還したらしいですわ」
という事は、上層へ戻れはするのか。
だがそもそも階段を登れば戻れると思うが、この感じだと使えないっぽいな。
ただ暗闇での行動は、通常は死を意味する。
帰還者はよほど運がよかったのか、それを覆す強さがあったかだな。
「チッ、話にならねぇ馬鹿女だな桜! それより今の話は本当なのかよ先生?」
「そのままですわ。だから使えない勇者は大人しくしていなさい」
そう言うとエカテリーナは周囲を見渡し、「来ていますわね」と呟く。
だがその言葉の意味が分からない昇司は、桜への苛立ちと、それの元となった戦極へと増悪をつのらせる。
(チッ、コイツも俺を馬鹿にしやがって! 剛流のボケも妙な自信でうぜぇ……。それもこれも戦極の野郎が全部悪い)
昇司は戦極を睨みながら、何か戦極へ嫌がらせが出来ないかと考える、と……。
(いるじゃあねぇか~丁度そこによぉぉぉぉ?)
嫌らしい笑みを浮かべ、戦極へと近づく昇司。
穴の中に小石を投げ込んでいた戦極は、背後からの気配に気が付き、そちらを向こうとした瞬間、昇司は剛流へとケリを放つ。
「オラアア! 邪魔だデカブツ! ボヤッと立ってんじゃね~!!」
「え、ちょ、昇司くん何を!?」
突然蹴られた剛流は、戦極へ倒れるのを防ぐために墓石へとつかまる。
が、その墓石が突然〝ボロリ〟と崩れ落ち、つかんでいた部分が落ちてしまう。
あせった剛流は、思わずエカテリーナの肩へと手を伸ばし、そのまま転倒。
「タケル!? ッゥ、マズイですわッ!!」
エカテリーナはバランスを崩し、漆黒の闇の中へと転がり落ちる。
だが落ちきる刹那、消える寸前の右手から赤い糸がでると、近くの墓石へとソレが飛ぶ。
そこまでは良かった。
が、次の瞬間、赤い糸を絡めた墓石が真っ二つに折れたと同時に、その残骸が戦極へと向かってきた。
「うっそだろッ!?」
突然の事に戦極も回避できず、そのまま漆黒の闇の中へと転がり落ちていく。
「「戦極さんッ!!」」
剛流も桜も手を伸ばして、いまだ見える戦国の手を掴もうとするが。
「「ああああああッ!?」」
右中指の第一関節を何とか掴んだ桜だったが、そのままスッポ抜けてしまい戦極は漆黒の闇へと呑み込まれてしまったのだった。
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