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第二章 逆さ鳥居の神社編

86話

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「何か問題でもあるのか?」

 俺は歩き出しながら女に話しかける。
 そして――、逆さ鳥居を跨ぎながら超えたところで――、

「普通は人には見る事が出来ないものなのよ! 私だって、始めて見たわ! それなのに現実に干渉できるほどの力も、さっきのは持っていたわよね? だって、小石を弾くのが見えたもの! 普通じゃないわ! ここは――」
「だから言っただろう? 危険だと」
「――ッ!」
「女。お前に何の目的があるのかは知らないが、あの程度のことで歩みを止める程度の覚悟しかないのなら、ここで待っていろ。中途半端な覚悟で戦場に出て来られても邪魔なだけだ」
「……そんな言い方……」
「貴様程度の覚悟しかしてこない奴が、戦場で死ぬのを俺は無数に見てきた。だから、俺から忠告しておく。お前では足手纏いだ」
「……私だって! 戦えるわ!」
「ほう?」

 女は慌てて俺の後を追ってくる。

「――で、どうやって戦うっていうんだ?」

 俺の言葉に、女はスカートをタイトなスカートをたくし上げ、拳銃を取り出す。

「これで戦うわ!」
「なるほど……。さすがは警視庁関係者、拳銃まで渡されているとはな」
「だから関係ないから! それに、女なんて言わないで! 私には紅幸子って名前があるんだから!」
「ふん。俺に迷惑をかけて何とも思わない奴なぞ、女で十分だ」
「だから!」
「幸子でいいか?」
「――え?」
「だから、幸子でいいか? と、聞いたんだ」
「べ、別に構わないけど……。それなら、同行を認めてくれたってことよね?」
「まぁ、お前が居ても居なくても戦力は変らないからな」
「あ、そう……。貴方って、理事長室に居た時とは、まったく違うわよね?」
「そうか? いつも通りだが?」
 
 俺はレールガンをぶっ放し近寄ってくる黒い塊を消し飛ばしながら答えつつ歩く。

「はぁー。何だか、貴方と居ると危険な場所に居るって考えが薄らぐのだけど……」
「それは困りものだな。先頭を代わるか?」
「それは遠慮させてもらうわ」
「まったく、ああいえばこう言う女だな」
「また女って言った!」
「悪いな」

 俺は肩を竦めながら答える。

「ねえ。貴方は、私のことを知っているみたいだけど、どこまで知っているの?」
「答える義務はないな」
「そう。――でも、詳しくは聞いてこないのね?」
「聞く必要がないからな。それよりも逆社について知っていることを話せ」
「すごい上から目線よね……。私、貴方より10歳は年上なんだけど……」

 つまり、20代後半ということか。
 まぁ、肌にもハリがあるからな。
 そのくらいだとは思っていたが――、俺は異世界で30年以上戦ってきたからな。
 そんな俺から見たら――。

「小娘だろ。俺から見たら」
「何で、そんなに上から目線なのよ! 貴方は!」
「貴方じゃない。優斗って名前がある」
「はぁー。分かったわ。優斗。――で、逆社に関してよね?」
「ああ」
「私も伝承と古文書、あとはネットの情報などからしか調べ切れていないの。それでもいいかしら?」
「十分だ」

 俺は黒い塊を消し飛ばしながら答える。

「あくまでも伝承だけど、この地の逆社の起源は、ここの地上に表社が作られるずっと前、紀元前に遡るらしいわ」
「紀元前というと2000年以上前か?」
「ええ」
「そんな昔から神社は存在していたのか?」
「あくまでも伝承だから」
「ふむ……」


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