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第四章 囚われし呪詛村の祟り編

189話 第三者Side

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 桂木優斗が、遠野市に向かってから20分が経過したころ。

 ――盛岡市内のホテルの一室。

「どうだったの? 純也」
「駄目だ。何も教えてくれない」
 
 都の問いかけに答える純也は、岩手県警が用意したホテルの一室であるリビングのソファーに溜息をつきながら座る。
 その様子を見ながら神楽坂都は、まだ意識が戻らない桂木胡桃が寝ている寝室へと視線を向けた。

「ねえ、一体――、何が、どうなっているのかな?」
「わからねえ。俺達を警備していると思うが、警察の人に聞いても何も教えてくれない」
「優斗のことは?」

 都の言葉に頭を振る純也。
 それだけで、物事を察した神楽坂都は、ソファーに座り震える手を握りしめる。

「どうして、こんな事になっちゃたのかな……」
「都は、何も覚えてないのか?」
「覚えてないというか……、安倍先生が、早朝に部屋に尋ねてきたけど、そこからは何も覚えてないの」
「そっか」
「純也も何も覚えてないの?」
「俺は――」

 尋ねられた純也は、どう答えていいのか迷う。
 幼馴染である神楽坂都に、高清水旅館で経験した非日常的な事を話していいのかということを。
 それにより、必要のない心配をかけさせるのでは? と、彼は危惧する。

「言えないこともあるよね……」

 戸惑い、迷い、何と説明していいのか分からない純也の表情を読み取った神楽坂都は、それ以上は、話さなくてもいいと語る。
 だけど、彼女にも気がかりがあった。
 それは――、この場には桂木優斗の姿だけが無かったから。

「優斗、大丈夫なのかな……」

 ポツリと呟く都の言葉に、純也は思い出してしまう。
 高清水旅館で、神楽坂都を抱きかかえたまま走り、数メートルの高さから飛び降りたというのに、何の怪我もせず、普通に動いていた幼馴染である桂木優斗のことを。

「なあ……」
「どうしたの?」
「アイツ……。本当に、俺達の幼馴染だよな……?」
「純也? 何を、言っているの?」
「――いや、俺も何を言っているのか分からない。だけど……」

 峯山純也の脳裏には、見た事がない化け物を目の前にしても平然としていた桂木優斗の姿が焼き付いて消えずにいた。
 何より、運動部に入っている彼には理解できていた。
 いくら軽いとは言え、人ひとりを抱きかかえて移動することの困難さを。
 それを苦も無く、それどころか一人で行動しているよりも軽快な動きをしていた親友のことを純也は疑ってしまっていた。

「優斗は、優斗だよ?」
「見た目は、そうなんだが……」
「見た目って何? 優斗は、私達が守っていた頃のままよ! それとも純也からしたら、それは違うの?」

 神楽坂都の問いかけに、幼馴染である桂木優斗の本当の姿を口にしようと、彼は思ったが、そこで電話が鳴った。

「この番号って、優斗の?」
 



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