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八 拝啓… ~僕は地獄でセカンドライフを謳歌しています~
ニ 僕のお仕事
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『働かざる者食うべからず』
地獄へ来て衣食住には困らないし、鬼様だけど兄様たちには優しくしてもらってるし、なんにもしないで過ごしてるのもなんだか気が引けて。
毎日、忙しく仕事、仕事って兄さんたちは言ってる。
ルカラ兄さんみたいに朝早くから出かけて行かないと追いつかないらしい。僕はその現場を見たことがないから何とも言えないんだけどね。
地獄界に堕ちてきた罪人を裁いて選別してそれ相応の場所に送る。裁いてから罪人の状況によっては下僕(小鬼くんたちみたいな)に任せて、次の仕事に掛かる流れらしいんだけど、中には酷い罪人もいるらしくて兄さんたちが直に出向いて罪人を捌く=喰うってこと。話に聞いたら恐ろしすぎて身体の震えが止まらない。このイケメンな兄様たちがどのようにして“人を喰らう”のか。そこは敢えて沈黙で。
ただ、ハバラ兄さんが言ってた。その姿は見てほしくないと。
『かわいいミツキにオレたちのあんな姿見せたら、ミツキに嫌われちゃうかもしれない』
なんて、どの鬼様がそんなこと言う?
豪気で精鋭な鬼様が、かわいらしくもそんなことを言うなんて。よっぽどな姿なのかもしれないのは感じたけれど、そんな兄様たちの姿を“怖いもの見たさ”なのか、好奇心なのか、見てみたいとほんの少し思ってた。
僕とハバラ兄さんの毎朝のルーティン現場?を横目に見ながら、サドゥラ兄さんはすっと立ち上がって朝食の場を後にした。
「いってらっしゃ~い」
兄様たちを笑顔で送り出す。
「さてと‥‥」
僕専用の椅子からピョンと飛び降りて‥‥これももう慣れてきた。
いつまでも手取り足取りでお世話になってばかりじゃいけないからね。
僕はいつものように食べた後の食器を片付け始めた。
これも、僕のお仕事の一つ。
毎日、仕事をがんばってる兄さんたちに申し訳ない。
ってことで、僕は僕にできる仕事を探して、少しでも役に立てればいいかな。
初めはハバラ兄さんも「そんなことしなくていい」って、慌てた様子だった。他の兄さんたちも「なにやってるんだ?」みたいに冷ややかな目で僕のこと見てたけど、今ではこれが定着して、僕も気兼ねなく地獄に居られる。
「ミツキ様、そんなことされなくても。私どもが致しますので」
「ごめんなさい。余計なことかもしれないけど、僕にできることなら手伝わせてください。僕も何か仕事があった方が気が休まるし‥‥」
初めの頃は華歯さんもオロオロして「滅相もない」って風で僕を突き返してたけれど、今は一緒にお仕事するようになって少しは親しく感じてくれてるみたい。
「それと‥‥僕のことミツキ様じゃなくて、ミツキって呼んでください」
って言ったら、
「とんでもない!とんでもない!」
顔色真っ青にして首を振ってた。
「じゃぁ、呼びにくかったらミツキくんでも!ねっ」
それでも華歯さんは首をブルブルって振った。
「ん~それじゃ…ミツキさん?」
そんな呼び方、僕の方が肩っ苦しくてイヤだけど‥‥
「…ミツキくん?ミツキさん?…くん…さん‥‥」
独り言みたいにして華歯さんは何度も僕の呼び方を練習してたよ。
「ミツキさん」
「はい?」
「皆様、朝食もお済のようですから、片付けてしまいましょ」
華歯さん―――ここのところ雰囲気が軽やかだ。
よく笑顔も見られるようになった気がする。
地獄へ来て衣食住には困らないし、鬼様だけど兄様たちには優しくしてもらってるし、なんにもしないで過ごしてるのもなんだか気が引けて。
毎日、忙しく仕事、仕事って兄さんたちは言ってる。
ルカラ兄さんみたいに朝早くから出かけて行かないと追いつかないらしい。僕はその現場を見たことがないから何とも言えないんだけどね。
地獄界に堕ちてきた罪人を裁いて選別してそれ相応の場所に送る。裁いてから罪人の状況によっては下僕(小鬼くんたちみたいな)に任せて、次の仕事に掛かる流れらしいんだけど、中には酷い罪人もいるらしくて兄さんたちが直に出向いて罪人を捌く=喰うってこと。話に聞いたら恐ろしすぎて身体の震えが止まらない。このイケメンな兄様たちがどのようにして“人を喰らう”のか。そこは敢えて沈黙で。
ただ、ハバラ兄さんが言ってた。その姿は見てほしくないと。
『かわいいミツキにオレたちのあんな姿見せたら、ミツキに嫌われちゃうかもしれない』
なんて、どの鬼様がそんなこと言う?
豪気で精鋭な鬼様が、かわいらしくもそんなことを言うなんて。よっぽどな姿なのかもしれないのは感じたけれど、そんな兄様たちの姿を“怖いもの見たさ”なのか、好奇心なのか、見てみたいとほんの少し思ってた。
僕とハバラ兄さんの毎朝のルーティン現場?を横目に見ながら、サドゥラ兄さんはすっと立ち上がって朝食の場を後にした。
「いってらっしゃ~い」
兄様たちを笑顔で送り出す。
「さてと‥‥」
僕専用の椅子からピョンと飛び降りて‥‥これももう慣れてきた。
いつまでも手取り足取りでお世話になってばかりじゃいけないからね。
僕はいつものように食べた後の食器を片付け始めた。
これも、僕のお仕事の一つ。
毎日、仕事をがんばってる兄さんたちに申し訳ない。
ってことで、僕は僕にできる仕事を探して、少しでも役に立てればいいかな。
初めはハバラ兄さんも「そんなことしなくていい」って、慌てた様子だった。他の兄さんたちも「なにやってるんだ?」みたいに冷ややかな目で僕のこと見てたけど、今ではこれが定着して、僕も気兼ねなく地獄に居られる。
「ミツキ様、そんなことされなくても。私どもが致しますので」
「ごめんなさい。余計なことかもしれないけど、僕にできることなら手伝わせてください。僕も何か仕事があった方が気が休まるし‥‥」
初めの頃は華歯さんもオロオロして「滅相もない」って風で僕を突き返してたけれど、今は一緒にお仕事するようになって少しは親しく感じてくれてるみたい。
「それと‥‥僕のことミツキ様じゃなくて、ミツキって呼んでください」
って言ったら、
「とんでもない!とんでもない!」
顔色真っ青にして首を振ってた。
「じゃぁ、呼びにくかったらミツキくんでも!ねっ」
それでも華歯さんは首をブルブルって振った。
「ん~それじゃ…ミツキさん?」
そんな呼び方、僕の方が肩っ苦しくてイヤだけど‥‥
「…ミツキくん?ミツキさん?…くん…さん‥‥」
独り言みたいにして華歯さんは何度も僕の呼び方を練習してたよ。
「ミツキさん」
「はい?」
「皆様、朝食もお済のようですから、片付けてしまいましょ」
華歯さん―――ここのところ雰囲気が軽やかだ。
よく笑顔も見られるようになった気がする。
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