最強設定の弟がヤンデレすぎて、世界が終わりそうなので、お兄ちゃん(笑)が軌道修正してみた。~せめて、異世界転生してくれ~

今日の天気は晴れたらいいな

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1章 物語のあらすじは分かりやすい方がいい

第1話 説明パートは巻でいけ

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「兄さんは私の味方だと思っていたのに」

何度聞いたか分からない台詞にクラクラと目眩を覚える。俺の目の前にいる俺と瓜二つの顔をした男――俺の弟、日向明は酷く悲しそうに眉をひそめた。

双子の弟である日向明は所謂ところの完璧野郎だ。最強設定だとか俺TUEEEE系だとかと形容したっていい。頭が良くて、社交性もあって、おまけにスポーツ万能、誰にでも変わらぬ笑みを振りまき、誰からでも愛されてるに決まってる。きっと異世界転生でもすればこいつは結構良い線いってたと思うし、今頃、ハーレムでも作って、複数ヒロインと――ああ、無理か。

――だって、こいつは“あの子”以外に興味がない。

世界がめちゃくちゃになろうが、家族が死のうが、なにをしようが、弟は愛する“あの子”と2人仲良く暮らせればそれでいいんだ。それで、よかったんだ。

――おっと、俺が妙に憂いたところで、この物語のあらすじも分からなければ、今俺が陥っている状況も理解できないか。え?誰に話しかけてるのかって?お前だよ、お前。今まさにブラウザバックでもしようとしていたそこのお前だよ。

「兄さん……」

ああ、うるさい、うるさい。何度も繰り返してるんだから、この後の展開もセリフもわかりきってるんだって。このルートのオチはどうせ、“あの時”と同じなんだから、まずは俺の自己紹介でもさせてくれ。

――俺の名前は日向光!どこにでもいる平凡なごく普通の男子高校3年生!……違うな、今はこう言うボケをかましている場合じゃない。

改めて、俺の名前は日向光。光なんて縁遠い日陰者で、ご覧の通り、一卵性双生児の弟がいる。そう、目の前で長ゼリフを話し始めてるこいつだこいつ。弟はあと五分ぐらい大層な家族愛を語ってくれるから、その間に話を進めておこう。

弟と俺は瓜二つ。と言っても、それは顔だけで、俺は勉強もできなければ、スポーツだって、人並み程度にしかできない。なんなら友達と言える相手もほとんど居ない。一方の弟は……さっきも言っただろう?察してくれ。

同じ顔の弟はイケメン扱いされるってのに俺は陰キャ根暗オタク扱い。よく見れば明くんに似てる!なんて言われたこともあるが、逆だ逆。弟が俺に似てるんだよ。

家族や弟はそんな俺を卑下することもなく、むしろ、友好的に接してくるのだから、俺の劣等感は加速する。

俺のことなど、頼らなくても生きていけるはずなのに“兄さん、兄さん”なんて、小さい頃から懐いてくる弟ことが俺は心底――ああ、話が逸れた。

兎にも角にも、そんな劣等感の塊である俺と対象的な弟。2人仲良くとは行かないまでもそれなりに過ごしてきたのだが、ある日、弟は見た事のないような柔らかい笑みで、俺に言ったのだ。

“兄さん、私、好きな人が出来たんです”

ここまでなら、少女漫画にありがちな恋を知らなかった学園の王子様が転校してきたヒロインに……なんて言う物語で済んだだろう。済まなかったのだから、今目の前にいる弟は絶賛闇堕ち中だ。何なら、誰も転校してきてないし、元から、こいつは病んでたのかもしれない。

回想に入る前に少しだけ、俺達のいるこの世界についても話しておこう。所謂ところのファンタジー要素バリバリのこの世界には亜人だったり、獣人だったり、妖怪だの、異能力者だの、何でもござれなワクワク異世界パラダイスだ。

無論、俺も弟もその他の諸々、トラックに跳ねられたわけではない。元からこう言う世界だ。――ああ、この国の名前?いいよ、いいよ、どうせ、この物語に国名なんて関係はないし、覚えるのも面倒くさいだろう?

あいにく、車は空を飛びやしないが、獣耳もふもふ可愛い女の子が街を歩いていたり、セクシーな魔女のお姉さんが箒で空を飛んだり、まあ、悪くは無い世界だ。……俺が物語の主人公だとか、異世界転生した勇者だったらな。

そんな面白イベントなんてないってのに俺は今、闇落ちまっしぐら、ラスボスと化してる弟と対峙している。

「兄さん……?」

おっと、俺が無視していたことがそろそろバレたようだ。ここらで話を切り上げよう。なんなら、このプロローグもどきも切り上げたっていい。

「今回もダメだったから、俺は次のお前を説得するよ」

手にした簡易的なボタンをかかげる俺。よくある赤いスイッチに触れると弟は俺が何をしようとしているのかわからない様子で、不思議そうな視線を投げかけてくる。

「説得?……“家族”だけには、使いたくなかったのですが」

「あーはいはい、ワロスワロス」

――ほら、言っただろう?弟は最強設定で俺TUEEEE系だって。まあ、なんでそんな設定が付与されてるかについては後日、伏線回収でもさせて貰うとして、今は先にこの伏線回収を済まそう。

弟の能力については俺しか知らない。小さい頃に弟は俺にだけ教えてくれたんだ。いっそのこと、自慢でもしてくれればいいのに弟は“ぼくでも兄さんの役に立てる”と、今と変わらないにこやかな笑みで、俺へと言った。

――洗脳。それが弟に与えられた能力。

これは弟の話とは別に何度も体験した経験から俺が解釈した結果だが、弟は触れたものに好きに命令することができる。例えば“今晩のメニューを考えて”なんて漠然としたものや、“そこにある消しゴムを取って”とか言う簡単なものから、“今から撃たれる女を庇って死ね”とか言う無茶苦茶なものまで何でも可能だ。

これだけで最強?いやいや、能力説明パートはまだちょっとだけ続くから、そう焦るなよ。

……これが対象となるのが知的生命体だけであれば、良かったんだ。いっそ、生命だけなら、尚のこと良かった。ヒグマだろうが、サメだろうが、コモドドラゴンだろうが、今の俺なら怖くないね。

弟を最強たらしめる原因がなんだって。……弟の洗脳の対象は万物なんだよ。無機物だろうが、有機物だろうが、生命だろうが、この世のありとあらゆる物が対象だ。

まだ芽吹いていない種に弟が触れ、成長を促せばその通りになるし、魚に空を飛べと命じれば、遺伝子レベルでの変化が起きて、ご大層な羽と共に空を飛ぶ。地面を畳返しみたいな盾にすることだって、なんだってできる。

――な?そんな能力を持ってるバカが絶賛闇落ち中なんだ。そりゃ、世界だって滅びかけるだろ?

よりにもよってそんな能力なんだから、収集がつかない。俺にもその能力の片鱗を分けてくれと言いたいが、言ったところで叶うなら、苦労はしない。

さて、大まかな説明パートが終わったことだ。待たせちまって悪いな、次は回想パートにでも入らせて貰う。

――なに?話が長い?本編はまだかって?安心しろ。回想に見せかけた本編を今から始めるところだ。

「次は上手く行きますように」

なんて恒例行事を呟くのはきっと俺なりの願掛けだ。手にしたボタンをカチリと押すと、弟の声も顔も何もかもが遠くなり、次第に真っ白い光へと包まれていく。

――ああ、安心してくれ、別に爆死したとかそう言うことじゃない。最後にこの説明だけしておこうか。

昔、異世界ループものにはまった俺は弟に強請ったんだ。“お前の能力なら、このボタンに自分はループ装置だって思わせることができるんじゃね?”って。

ありがとう、弟。お前の能力がチートでなによりだ。いや、お前の能力さえなきゃ、俺はこんな面倒なことをしなくて済んだんだけどな。

まあ、ほら、バカとハサミは使いようって言うだろ?今がまさにその時だ。さて、回想パート……もといい、物語のやり直しを始めようか。

ちなみにやり直しはこれで24回目な。意外と上手くいかないもんなんだよな。これ。

次回!獣耳おどおど系巨乳天然趣味は暗殺ヒロインが……でるわけないし、俺の趣味だよ。悪いか?

次はそうだな、いつもと変わらなければ、きっとあのシーンから始まる。ほら、そろそろ視界がクリアになってきた。今回こそは、なんて、俺らしくもないか。
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