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第一章:初めての社交で暗躍する。

第15話 『もしかしたら』という予測(2)

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 しかし一通り当たりを見回してみたが、当該人物は見あたらない。

 するとカロリーナが「彼はこのお茶会のホストだからそっちの仕事に追われててここには居ないよ」と教えてくれた。

 その声にこれまた密かに安堵していると、さらにカロリーナが耳打ちしてくる。

「エドガー様は公爵家でしょ? 爵位的に下になる伯爵家の私達じゃぁ、どうしたってやっぱり押さえるにのもちょっと骨が折れるのよ」

 実は2人して、ちょっと辟易としているの。
 そう言って、苦笑を浮かべる。
 ケントへと目をやれば彼も似た様な顔になっていたので、2人の苦労は事実なのだろう。

(……この感じじゃぁ、もしかしたらエドガーは『セシリアドレス事件』の発端になる事以外にも、面倒なことをやらかした前科があるのかもしれないなぁ)

 そんな風に、セシリアは彼ら日常を慮る。

 しかし、どちらにしてもだ。
 カロリーナの口から『爵位の上下』という言葉が出てきた時点で、普段からの彼の言動が偉そうなのだろう事は容易に想像が付く。

(まぁ、家柄だけでいうのなら実際に偉くはあるんだろうけど)

 しかし、だからといって権力を振るうのにも時と場合を考えねばならない。
 権力とは本来『自分の思い通りに事を進めるため』ではなく、『他の誰かのために』使うべきなのだから。


 そんな風に思ったセシリアだが、流石にこんな所でそんな批判を開けっ広げにするわけにもいかない。
 しかしその表情から、彼らの日々の苦心も十分に察せられるのだ。

 だから。


 セシリアは、微笑を浮かべながら2人に向かって手招きをした。
 そして彼らが顔を寄せてくるのを待ってから、こう囁く。

「もしかしたら今年一年くらいの間は、少し大人しくなるかもしれませんよ?」

 誰が、とは言わなかった。
 しかし言わなくても、どうやら彼らには正確に伝わったようだ。

「え……それってつまり『あの方が静かになるような事が、近日中に起こるかも』という事?」

 カロリーナが、キョトンとしながらもそう尋ねてきた。
 そんな彼女に、セシリアは。

「断言は出来ません。が、そうなる可能性は大いにあると思います」

 そう答えると、悪戯っぽく彼女に微笑む。

 すると、その答えにケントが上機嫌で喉を鳴らして笑いながら「流石はキリルの妹だ」と言い、更にこんな言葉が続けられた。

「キリルの『予知』は百発百中だからな、妹なら似た能力持ちでも何ら不思議じゃない」

 そんな言葉と共に寄せられた大きな期待に、セシリアは思わず苦笑する。
 そしてケントに「あくまでも『もしかしたら』ですからね?」ともう一度、一応釘を刺しておいた。

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