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8話
しおりを挟む「え……?」
「義務を果たしたくないのだろう? ならば王族ではなく平民として暮せばいいだろう? 義務からは解放され、お前の大好きな権利を使えばいいじゃないか」
「そんなことを急に言われても……!」
「アメリアも突然人生を覆され、その上に不名誉まで背負わせたくせによくそんなことが言えるな」
国王はますます呆れる。
しかしその時、ローラが会話に入り込んできた。
「そんなのあんまりです……!」
「ローラ……!」
ローラはサイモンを庇うように立ち、国王へと意見する。
「たった一度の過ちで、そんな重い罰を課すなんて酷いです!」
国王はじろりとローラを睨む。
「アメリアという婚約者がいると知りながら近づき、人生を狂わせようとしているお前にそんなことを言う資格は無い」
「ですが……」
「それとも、王子という立場で無くなれば愛することが出来ないのか?」
国王はローラを嘲笑しながら質問する。
ローラはカッとなり、勢い良く答えた。
「そんなことはありません! 私はサイモン王子を心の底から愛しています!」
「それならば問題ないだろう。王子でなくなれば面倒なことは無くなる。二人で存分に幸せに暮らしたらいい」
「そんな……!」
サイモンは自分が王子でなくなることに慌て、必死にどうにかならないかと考える。
しかしローラはサイモンの袖を引いた。
「私は二人で過ごすことが出来るなら、どんな形でも構いません」
「ローラ……」
それは自分も同じだった。
ローラと暮らせるなら、たとえ王子でなくなったとしても構わない。
逆に、王子でなくなったほうが良いかもしれない、とサイモンは考え始めた。
王子でなくなれば義務も無くなるし、それで心ゆくまで愛するローラと一緒に暮らせるなら悪くない。
なら、王子をやめるのも仕方のないことだ。
「……分かりました。私は平民として暮らします」
そうしてサイモンは王子をやめることを宣言する。
「それではこれで。私達は出て行きます」
サイモンがローラの手を引き、出ていこうとした時。
「何をしている。話は終わっていないぞ。勝手に出ていくな」
国王が引き止めた。
サイモンは少し苛立ちながら振り返る。
「何ですか?」
「お前にまだ罰を与えていないだろう?」
「は?」
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