虚言癖のある妹に婚約者を取られたけど一向に構いません。

9話

「エミリーは何処だ！」

　俺は学園中を探し回っていた。
　手下や他の生徒にも探させているが、いつまで経っても見つからない。
　報告によると、エミリーは学園にすら来ていないようだった。

「アイツ！　逃げやがったのか！」

　やっぱり家に証拠があるというのは嘘だったのだ。
　信じた自分に腹が立つ。

「このままでは、俺は……！」

　俺は頭を抱える。

「こうなったら……！」

　まだ授業が残っていたが、俺は学園を抜け出した。
　向かうのはエミリーの家だ。

「おい、開けろ！　エミリーはいるか！」

　エミリーの家の扉を強く叩く。
　出てきたのは使用人だった。

「おい、この家にエミリー・プライスはいるか！」

　使用人は俺のことがわかっていないのか、訝しげな表情で俺を見る。

「俺はレオ・ロバートだ。見て分からないのか？　……まぁいい、エミリーはどこだ！」

「エミリーお嬢様ですか？　エミリーお嬢様は今外出なされております」

「チッ！　ではプライス家の当主を呼べ！」

「え、しかし旦那様は今……」

「おい、皇太子である俺の命令が聞けないのか？　早く呼べと言っているだろう！」

「もっ、申し訳ありません！　今すぐお呼びします！」

　使用人は頭を下げ、プライス家の当主を呼びに行った。
　俺は応接室に通されたので、ソファに座る。

（遅い遅い！）

　あまりの遅さに、俺は貧乏ゆすりしながら苛立つ。
　しばらくして、一人の男が部屋に入ってきた。

「私がプライス家の当主のチャールズです、本日のご用件は……」

「遅い！　エミリーはどこにいる！」

「はっ？」

（チッ、聞かれたことも分からないのか。こいつは）

　チャールズが素っ頓狂な声をあげた。
　それに俺はイライラしながらもう一度質問する。

「エミリーはどこにいると言っているんだ！」

「エミリーですか、今は外出していて、どこに行くかは聞いていませんが……」

「くそっ！　アイツやっぱり逃げたのか！」

　俺はテーブルを叩きつける。
　チャールズはそれでエミリーが何かをしでかしたことに気づいたようだ。

「レ、レオ様。うちのエミリーが何か致しましたか？」

「何もどうも、アイツは嘘をついて俺から逃げたんだ！」

「はっ？　嘘、ですか？」

　チャールズは俺の言葉が信じられない様子だった。
　俺は時間が惜しかったが、何があったのかを説明する。
　俺の説明を聞いて、チャールズの表情がみるみる青くなっていった。

「だから、お前のところのエミリーのせいで、このままでは俺もお前も破滅するんだよ！　今すぐ探し出せ！」

「わっ、分かりました！　今すぐ探し出します！」

　チャールズが慌てて部屋から飛び出す。

「エミリー、絶対に逃さないからな……！」

　それからエミリーはすぐに見つかった。
　とある男爵家の男と逢瀬しているところをプライス家の人間が発見したからだ。