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10話
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「ふざけるなぁっ!」
プライス家の屋敷に怒声が響きわたった。
「お前! 何をやっているんだ! この俺から逃げて、挙げ句の果てには他の男と浮気していただと?! どこまで俺を侮辱すれば気が済むんだ!」
床に正座させられているエミリーを、俺は罵声を叩きつけた。
チャールズとその妻は青い表情でそれを見ている。
「証拠は、本当に証拠は無いのか!」
エミリーの胸ぐらを掴み怒鳴ると、エミリーは堪らないといった様子で全てを吐き出し始めた。
「あるわけないでしょ! 嘘よ! 全部嘘よ! 私が今まで言ったお姉さまの悪事は全部私の嘘なのよ!」
エミリーの暴露に、チャールズとその妻の表情は更に青くなった。
「お、お前なんてことを……!」
「あなた、なんて事をしでかしたの……!」
「何よ! こんなふうに育てたのはお父様とお母様でしょ!」
「黙れ! こうなったのは全部お前らプライス家のせいだ!」
(どうする。どうする……!)
俺が宣言したルナを裁く集会は明日だ。
証拠も何もなく、冤罪だったと分かった今、このままいったら、俺は確実に破滅する。
「そうだ! こうなったら……」
俺はこの状況を覆すための、あることを思いついた。
★★★
レオ皇太子が集会を開くと宣言した当日。
私、ルナ・プライスあらかじめ知らされていた場所へと向かっていた。
周りの生徒も集会場へと歩いて行っている。
その表情はどこか祭りを楽しんでいるようだった。
まぁ、第三者から見れば面白いイベントであることは間違いでは無いので、私はなんとも思わない。
廊下の角を曲がり、階段を降りようとした時。
「え?」
トン、と誰かに背中を押された。
突然で、予想外のことに、私は体勢を崩してしまう。
足がもつれ、階段から転げ落ちようとした時、誰かが私を抱きしめたのを感じた。
誰かの腕越しに、床にぶつかった衝撃が伝わった。
「っ、いた……」
目を開ける。大きなケガはしていない。
どうやら私は誰かに守られたようだ。
体を起こして守ってくれた人物を見た。
「ルーカス様……」
守ってくれたのはルーカスだった。
ルーカスは痛みに耐えているのか顔を顰めながらも、体を起こす。
「は、かなり痛いなこれは……」
「大丈夫ですか?」
「問題ない、鍛えているからな」
「ちゃんと治療出来るところへ行きましょう」
「俺一人で大丈夫だ。お前に怪我は?」
「私は問題ありません。……ありがとうございます」
「兄上の教え通りに動いただけだ。それより、これで貸し二つだな」
ルーカスが不敵に笑う。
私はこんな時までそんなことを言うルーカスに少し笑みが溢れた。
「……分かりました。後でお願いを聞いてあげますから」
「ふん、期待しておく。それはそうとさっきの奴ら、顔は見たか?」
「はい、見ました。レオ様の手下をしている男子生徒ですね」
レオの名前を聞いて、ルーカスは舌打ちする。
「アイツ、女に手を上げるとはな。見下げ果てた奴だ」
「大方私を怪我させることで集会場に来させないつもりだったのでしょうが、目論見は外れたようですね」
ルーカスは制服についた埃を払って立ち上がる。
そして私にてを差し出した。
「俺の分も懲らしめてきてくれ」
「ええ、おまかせ下さい」
私はルーカスの手を取って立ち上がった。
プライス家の屋敷に怒声が響きわたった。
「お前! 何をやっているんだ! この俺から逃げて、挙げ句の果てには他の男と浮気していただと?! どこまで俺を侮辱すれば気が済むんだ!」
床に正座させられているエミリーを、俺は罵声を叩きつけた。
チャールズとその妻は青い表情でそれを見ている。
「証拠は、本当に証拠は無いのか!」
エミリーの胸ぐらを掴み怒鳴ると、エミリーは堪らないといった様子で全てを吐き出し始めた。
「あるわけないでしょ! 嘘よ! 全部嘘よ! 私が今まで言ったお姉さまの悪事は全部私の嘘なのよ!」
エミリーの暴露に、チャールズとその妻の表情は更に青くなった。
「お、お前なんてことを……!」
「あなた、なんて事をしでかしたの……!」
「何よ! こんなふうに育てたのはお父様とお母様でしょ!」
「黙れ! こうなったのは全部お前らプライス家のせいだ!」
(どうする。どうする……!)
俺が宣言したルナを裁く集会は明日だ。
証拠も何もなく、冤罪だったと分かった今、このままいったら、俺は確実に破滅する。
「そうだ! こうなったら……」
俺はこの状況を覆すための、あることを思いついた。
★★★
レオ皇太子が集会を開くと宣言した当日。
私、ルナ・プライスあらかじめ知らされていた場所へと向かっていた。
周りの生徒も集会場へと歩いて行っている。
その表情はどこか祭りを楽しんでいるようだった。
まぁ、第三者から見れば面白いイベントであることは間違いでは無いので、私はなんとも思わない。
廊下の角を曲がり、階段を降りようとした時。
「え?」
トン、と誰かに背中を押された。
突然で、予想外のことに、私は体勢を崩してしまう。
足がもつれ、階段から転げ落ちようとした時、誰かが私を抱きしめたのを感じた。
誰かの腕越しに、床にぶつかった衝撃が伝わった。
「っ、いた……」
目を開ける。大きなケガはしていない。
どうやら私は誰かに守られたようだ。
体を起こして守ってくれた人物を見た。
「ルーカス様……」
守ってくれたのはルーカスだった。
ルーカスは痛みに耐えているのか顔を顰めながらも、体を起こす。
「は、かなり痛いなこれは……」
「大丈夫ですか?」
「問題ない、鍛えているからな」
「ちゃんと治療出来るところへ行きましょう」
「俺一人で大丈夫だ。お前に怪我は?」
「私は問題ありません。……ありがとうございます」
「兄上の教え通りに動いただけだ。それより、これで貸し二つだな」
ルーカスが不敵に笑う。
私はこんな時までそんなことを言うルーカスに少し笑みが溢れた。
「……分かりました。後でお願いを聞いてあげますから」
「ふん、期待しておく。それはそうとさっきの奴ら、顔は見たか?」
「はい、見ました。レオ様の手下をしている男子生徒ですね」
レオの名前を聞いて、ルーカスは舌打ちする。
「アイツ、女に手を上げるとはな。見下げ果てた奴だ」
「大方私を怪我させることで集会場に来させないつもりだったのでしょうが、目論見は外れたようですね」
ルーカスは制服についた埃を払って立ち上がる。
そして私にてを差し出した。
「俺の分も懲らしめてきてくれ」
「ええ、おまかせ下さい」
私はルーカスの手を取って立ち上がった。
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