文字の大きさ
大
中
小
131 / 197
9巻
9-3
そしてやって来たその場所で、俺は大きな衝撃を受けた。
「しまっ……た。油断した!」
「どうした血相を変えて?」
手が震えているのを自覚する。
気がつくのが遅すぎた。
俺は蒼白になって、足元に散らばる砕けた岩を見下ろしていた。
「カワズさん、緊急事態だ……」
俺の視線の先には、「マジカル☆トンボちゃんのばか」と彫られた岩が、見事に真っ二つになって転がっていた。
その下には掘り返された穴があり、中では宝箱がぽっかり口を開けている。
後ろで見ていたカワズさんも、砕かれた石を見て、事情を察してくれたらしい。
「こいつは……まさか」
カワズさんの額にもまた、じっとりと脂汗が浮かんでいた。カワズさんは目をそらして現実を直視しないようにしていたが、その気持ちは痛いほどよくわかった。
俺は、カワズさんの肩に手を添えて首を振る。
「問題を先延ばしにしたところで、状況が好転するわけじゃない。現実を見よう」
「そうじゃな。……死ぬほど疲れそうじゃが」
俺達二人は同時に深々とため息を吐く。そしてカワズさんは、ついに問題の核心を口にした。
「念のため確認しておきたいんじゃが。こ、これは……、なんじゃ?」
「マジカル☆トンボセット封印の地」
「やっぱり……、アレなんじゃよな」
「まぁ、アレなんだよ」
カワズさんは思わず頭を押さえ天を仰いだ。彼をしてそうさせた一品、それがマジカル☆トンボセットである。
かつて、そのあまりに強力な効果により、現場を目撃した一部の者達を震撼させ、現在進行形でファンを増やし続けている魔性のアイテム。
思いつきと、ありったけの技術、そして大いなる悪ふざけを詰め込んだ魔法の大作。
職人気質な、やんごとなき方々による集大成。
それを身に着けた者は魔王の力すら凌駕すると、他ならぬ魔王自身からのお墨付きをもらったという、トンボ専用の最強装備。
そんなものが、この世に解き放たれてしまったのだ。
これはまずい。
俺はいなくなったトンボが何をしでかすかを考え恐怖した。
「なんてこった……。アレが、アレが解き放たれてしまったなんて!」
「何でもう少し厳重に管理しておかん! 何じゃこの雑な封印の仕方!」
カワズさんの指差す先には、小学生のタイムカプセルを掘り出した跡みたいになっている地面があった。
だがこれには、俺にだって事情があるのである。
「だって! せっかく作ったんだから、もう少し思い出に浸りたいじゃないか! あの完成度を見てなかったのかい!?」
「おい。そんな理由かい」
「それだけじゃないさ! こいつは俺一人で作ったわけじゃない! 合作だっていうのが問題だったんだ!」
一人で作ったのならともかく、こいつはいろんな人の多大な労力の結果なのだ。悪い意味で有名になってしまったが、だからといって即処分できるような代物ではない。その辺りの事情はカワズさんも知っているはずだ。
「製作に関わった面子が面子じゃから、勝手に処分するにもいかんわけか」
「まぁ……、どう封印すべきか迷うあまり、少々処理の仕方がおざなりになってしまった感はあるけれども」
「おざなりというよりも、笑いを誘いにいっておるようだがのぅ」
そう言って、割れた石に彫られた「マジカル☆トンボちゃんのばか」という文字に白い目を向けるカワズさん。
「まぁ、ネタで作ったわけだし、そういう側面がなくはない」
カワズさんの指摘は、俺から見てもおおむね正解だった。
「細かいことはいいじゃないかカワズさん。そんなことよりも、今はトンボを探し出さないと」
「ふむ。そうじゃな。これが女王にでも知れたら……」
今考えられる最悪の事態を想像して、ヒソヒソと話し合う俺達。
そのとき、お互いの肩が同時に叩かれた。
「知れたらどうまずい?」
「そりゃあ……」
俺は言いかけて押し黙る。
優しく話し掛けられた声は、そのまま「最悪の事態」に直結していたからである。
「おいおい内緒話か? それはつれないな? 妾も交ぜてはくれないのか?」
俺とカワズさんは幻聴ならいいなと思いながら振り返って――血の気が引いた。
そこには、ラフレシアの花をバックに女王様が腕組みして立っていた。
「あ、こういう展開か。もうだめじゃな」
「そうだね」
ラフレシアの強烈な臭気に涙目になりながら、カワズさんと俺はとりあえず覚悟を決めた。
◇◆◇◆◇
というわけで、事情説明のため、女王様の城に連行された俺達。
ところが、自室に到着した肝心の女王様は、こっちの話なんて聞いているんだか聞いていないんだか、まるでわからない状況だった。
女王様は、ヘアバンドで髪を留めると、唐突に何かの作業に入り、ペンタブで何やら絵を描きつつ、こまめに携帯をチェックし始めた。そんな風に黙々と作業に没頭していて、手を止める気配はない。
はっきり言って、連れて来られた俺達の方が説明を求めたいくらいだ。
そんな状況でも説明を続けていたのだが、どうやら女王様はきちんと聞いてくれていたようである。これほどのマルチタスクをこなせるとは、ある意味、聖徳太子より器用そうだ。
「ふむ、なるほど。それはまた……実に面白そうな話ではないか」
そう言うと、女王様は完成させたらしい画像をメールと共に送信。ツッターンと鮮やかに打ったキーボードの音が無駄にスタイリッシュである。
「めちゃくちゃキーボード打つの速いですね」
「そうか? 普通だろう? おっと、ちょっと待ってくれ。……よしOKだ」
続いて、携帯に送られて来た写真をチェックする女王様。タッチパネルの上をスライドする指が滑らか過ぎる。
「返信早いですね」
「だから、普通だ」
パソコン周辺機器を華麗に使いこなす妖精の女王様の姿を見て、本来の妖精らしさはパソコンのゴミ箱にでも捨てたのだろうと俺は確信した。
作業が一段落したところで、女王様は思い出したように俺に顔を向けた。
「少し立て込んでいたところ、気晴らしに散歩に出てみれば……。しかし、思いもしなかった展開になったものだな」
さぞ怒られると思ったが、女王様の怒りに触れてしまったということでもないらしい。むしろ穏やかな様子なので、俺は意外に感じていた。
「えーっと……、怒らないので?」
実は話を聞いていなかったんじゃないかと思い、軽く尋ねてみたが、それでも女王様の反応は変わらないようだ。
「怒る? 妾が? そんなわけがないだろう? お前達の説明を聞いてその程度のことかと思ったくらいだ。むしろ登場したときの演出ミスの方を悔いているんだ。臭かったしな、ラフレシア」
思い出したようにくんくんと自分の体の匂いを嗅ぐ女王様。だが、こっちは本気で肝を冷やしたのだから人が悪い話だ。
「わかっててプレッシャーかけてきたわけじゃなかったんですね」
「何やらこそこそしているから、少しいたずらしてやろうかなと。それだけだよ。しかし、アレが解き放たれたということは、相応の騒ぎになるだろうなぁ。服の形をした、理不尽の投げ売りだからな」
「そうですね。実力とかまるで関係ないですからね」
もちろん女王様もマジカル☆トンボセットのことは知っている。
いや、知っているどころか、マジカル☆トンボセットの衣装デザインを手がけたのは、何を隠そうこの人なのだ。
「いや、いいんですか? そんな悠長に構えてて?」
「騒ぎで済めばいいですがのぅ」
俺とカワズさんはあまりにも軽すぎる女王様の反応に驚き、思わず彼女を説得してしまった。
もう少し慌てるなりなんなりしてくれてもよさそうなものだが、女王様はやはり平然としている。
「大丈夫だろう? 今やアレの知名度はそれなりに高い。誰かが注意を促すさ」
「はぁ、まぁ、でも一部の間ではでしょ?」
俺がそう言うと、女王様は呆れたような表情を浮かべた。
「何で発信源のお前がその程度の認識なんだ? そんなわけないだろう? 噂は広まるものだし、クチコミというのは案外伝染力があるものだぞ。パソコンだけが世界ではないのだ」
「言いたいことはわかるんですが。なんだろうな、女王様にだけは言われたくないなって」
「そうか?」
新しいメールが来たのか、女王様はまた携帯を確認している。少しは落ち着いて欲しい。
確かにマジカル☆トンボセットに関しては、作ったのも、動画に撮ったのも、ネットに上げたのも、すべて俺だ。間違いない。
だからこそ、マジカル☆トンボセットの性能は誰よりも理解しているつもりである。
女王様はいよいよわずらわしくなってきたのか、唐突に本音をさらし始めた。
「ならばあえて言わせてもらうが、だいたい騒ぎになって何が悪いのか、という話でもある」
「そ、そうですかね?」
「ああ、いい機会だ。お前にも見せてやろう」
女王様は不敵に笑い、俺の目の前に携帯を突きつける。
それを見た俺は息をするのも忘れてしまった。
そこには、路線的にはマジカル☆トンボちゃんに近い、フリルがたくさん付いた服を着たエルフの女の子が写っていたのだ。
「こ、これは……!」
「フッ……、これでわかっただろう? この服は試しに作ったものだ。ちなみに、彼女は我が裁縫部期待の新人といったところだな」
「え、裁縫部? ええっとそれが何なんでしょうか?」
唐突な話の流れに俺が混乱していると、女王様は笑顔を輝かせて、語り始めた。
「わからないか? カタログの中から好きな服を選んで着てもらい、そして自撮りしてもらうという恒例行事なんだよ。まぁ、つまるところ、近いうちに大きなイベントを企画していて、そのためのメンバーを集めているわけだ」
「は、はぁ」
「なんだ? 情けない返事だな? 有事の際の最大戦力がそんなことでいいのか」
「あ、俺もイベントの頭数に入ってるのね」
ぜひともそのときは、前もって教えてもらいたいものだ。
ともかく、女王様は密かに進めていたプロジェクトを披露してくれたわけだが、俺にはなぜその話を今語るのかさっぱりわからなかった。
「それは、トンボちゃんを放置する理由とは何の関係もないなーと思わなくもないんですが?」
俺は勇気を出して尋ねてみる。
すると女王様は、悪い顔をして人差し指を俺の眼前に突きつけた。
「つまりだ。アレが何かを打ち倒せば、強いピクシーがいるという噂が広まるのだ。そして妖精郷のピクシーの名が世に轟くことになる。いや、それだけではない。あの素晴らしい衣装を作ったのはいったい誰なのかと評判になるはずだろう? となれば、自然と立ち上げたばかりの妾達のブランドの名も……。フフフフフ……」
「広告塔に利用すると?」
「その通りだ。タダでやってくれるというのならなおさら良い。コスパ最高だろうが」
なんというか、すごく欲望むき出しの計画だった。
そんなことを平然と言い切る女王様に俺は思った。この人はもう、俺の元世界に行っても完全にやっていけると。
カワズさんも俺と同じように圧倒され、流れ出る汗を拭っていた。
「のぅ? ……なんだか妙な方向に野望が膨らんでおる気がするんじゃが?」
「この人、やっぱり根本的にトンボの親玉なんだよな。もっと気をつけるべきなのかも」
女王様のスタンスを思い出して、俺は少しだけ納得することができた。
「うるさい。諸悪の根源がよく言うじゃないか、魔法使い共。とにかくアレだ。そんなに急がずともよかろう? アレを持っている以上、少なくともトンボは大丈夫だろうからな」
「……ですよね」
女王様にしてみれば、妖精郷に害さえなければ基本放置で良いと思っているのだろう。この態度はいつものことだ。
トンボの安否が気遣われてしかるべきなんだろうが、あの装備を纏ったトンボを心配する方が無理である。アレに害を与えられる存在なんて、そうそういるはずがない。
何せ、戦うヒロインは負けないのだから。
だからこそ、そのヒロインの性格がお調子者だったりすると、誰も止められないのだけれど。
「以上、今の理由で納得できたか?」
すべて語り終えた雰囲気を出していた女王様だったが、納得するには少し早そうである。
「でも、帰ってくるまで放置ってまずくないですか?」
俺がそう指摘すると、女王様は顔をしかめて特大のため息を漏らした。
薄々感づいていたが、この人忙しいからって、トンボの事件をなかったことにしようとしているに違いない。
「……言いたいことはすごくよくわかる。けれど、もうちょびっとだけ放置でもいいんじゃないか、な?」
「な? じゃないでしょうに」
「……ええい、わかっている! じゃあ妾の方からも、情報を提供しよう! それでよしとしておけ!」
結局女王様は、俺に丸投げすることにしたようだ。
「情報提供って、何か知ってるんですか?」
「無論。トンボの動向は逐一チェックしている。お前に最も近いピクシーだからな。最後に妾がトンボを見たのは、この妖精郷であの人間の娘といたときだ」
「人間の娘って……、セーラー戦士と?」
ここで意外な人物が出てきた。
俺が知る中で、妖精郷に出入りしている人間の女の子は一人しかいない。
女王様が頷いて続ける。
「ああそうだ。そのセーラー戦士と一緒にいたことは知っている。もっと慎重な娘だと思っていたが、あの娘がマジカル☆トンボセットの封印を破るのに協力した、ということなのだろう。認識を改めなければならないかもしれないな」
「知っていたなら、止めてくださいよ」
「いや、そのときは特に忙しかったからな。目にしたのもたまたまで」
「……いつ頃の話なんです?」
俺が問いただそうとすると、女王様は目をそらした。
「さ、さぁ? 何せ時間の感覚がな?」
「……じょおうさま」
「ええい! そんな目をするな! 妾が何をしようと妾の勝手であろうが!」
俺の言い方が癪に障ったのか、女王様は大声を出して自分の失態をうやむやにした。
しかしセーラー戦士とは……。思わぬ共犯者の名前が出てきたものだ。
カワズさんもさすがに予想していなかったようで、首をひねっていた。
「ふーむ……、あやつがそんなことをするとは思えんがのぅ」
「いや、でも。あの封印はトンボにだけは解けないようにしてあったんだ。壊したんだとすれば協力者がいる。それがセーラー戦士ってことなのかな?」
だが、何のために?
マジカル☆トンボちゃんの危険性は動画を見ればわかる。それはセーラー戦士も知っているはずだ。
「だとすれば厄介じゃな。あの娘の戦闘能力……、いや、それよりも行動力か。それにトンボの力が加われば、どうなるか……」
「さらに厄介なのが、今セーラー戦士には探知妨害の魔法を掛けてあるんだよ。しかも結構きつめのやつ」
「何で、そんなめんどくさいもの掛けたんじゃよ!」
「いや。セーラー戦士の居場所がバレてたみたいだから、念のため」
というのも先日、彼女を召喚した国である神聖ヴァナリアが、魔法でセーラー戦士の動向を探っていたということがあったのだ。その魔法は解除したものの、他に隠されているかもわからない。
こうした経緯があり、本人とも相談のうえ、強力な探知妨害の魔法を掛けることにした。
それを聞いたカワズさんは、釈然としないようだった。
「いざというときに、位置がわからないとまずいんじゃないのか?」
「それが『全然問題ない』ってばっさり。むしろ『乙女のプライバシーを侵害する気なのか?』と」
そんな風に言われたら、ぐうの音も出まい。
とはいえ、携帯は持っているから、本当にやばくなったら連絡はくれるだろうという一縷の望みにすがるしかない。
「あ、そうだ。セーラー戦士に電話かけてみようか?」
「……そうじゃな。それが手っ取り早かろう」
「ではさっそく。……電源入ってなかった」
こちらの携帯電話である俺製作『Mフォン』は、基本的に現代地球で使われている普通の携帯電話と機能は変わらない。
相手の電源が入っていなければ、通話はできないのである。
「いきなり頼みの綱が役立たずじゃな」
「くっ! 現代に忠実に作りすぎたか……」
ここに来て、脆弱性が露呈してしまった。
「お前さんは、一事が万事詰めが甘いんじゃよな」
「ううう……否定できない」
カワズさんに言われてうなだれる俺である。今回もまた自分の掛けた魔法で自分の首を絞めた形だった。
携帯だけでは心許ないが、だからといって発信機や監視カメラにまで手を出す気にはなれない。そこまですると犯罪の臭いがし始めるので。
「はぁ、今さらだけど、セーラー戦士はかなり無鉄砲というか、目的達成のためならどこまでも突っ走る娘なんだよな」
俺の意見に乗っかって、女王様はセーラー戦士をこう評した。
「それはあるな。底知れぬ意志の強さと勇猛さを兼ね備えた娘だ。あの娘の瞳の光は様々な者を惹きつけよう。せいぜい行き着く先が死地でないように見ておいてやれよ?」
「……驚いた。あの女王様が、すごく妖精の女王様っぽいことを言ってる」
「お前な」
俺は女王様の発言に感動さえ覚えていた。
さっきまでの振る舞いからは想像もできない、これまでのマイナス分を一気に持ち直せそうな台詞だった。
もっとも、顔の様々なパーツを歪ませているので、俺の褒め言葉は彼女にとって不愉快極まりないようだったが。
「当然だ。お前も魔法使いなら、人を見る目の一つや二つ、養っておいて損はないぞ?」
「そ、そういうものですかね?」
「ああ、そうだとも。力にかまけて自分を甘やかすなよ? 力を持とうと持つまいと、培わねばならん素養はあるのだから。それに、お前もまたあの娘と同じように良くも悪くも多くの者を惹きつける力を持っていることを自覚せよ」
「……ぜ、ぜんしょします」
急に本気を出した女王様から、不意打ちでためになることを言われ、反応に困った俺だった。
「ほほう。たまにはいいことを言うのぅ」
カワズさんは、女王様の変貌に驚きながらもそれでこそと頷いていた。
「うるさいわ。お前達との付き合いも長いからな。たまには助言の一つもくれてやろうと思っただけだ。何せ妾はこの妖精郷の女王だからな」
キリッっとした顔で、女王様はそう言い放った。
本人も現状のあまりの威厳のなさを気にしていたのかもしれない。
女王様は、今度はカワズさんに向き直り鼻を鳴らした。
「ふん。腹立たしいな、その頷き。いいだろう、じゃあお前にも一つ助言をくれてやろう、愚かな蛙よ。お前、いつまでも師匠面はしていられないんじゃないか? 太郎はもう一人前の魔法使いだぞ。まだ師として導く余地があるうちに、せいぜい手を貸してやるのだな。それと何かと過去の人面もやめておけ。師匠が終わっても、生ある限り次があると心得よ。これは貴様よりさらに年長者からの助言だ」
カワズさんは冷や水でも浴びせられたような顔になって黙り込んだ。しかし助言自体は神妙に受けとめることにしたらしい。
「耳が痛い助言ですのぅ……。しかし心得ました。ありがたく頂戴させていただきますかのぅ」
「うむ。では、探しに行くというのならせいぜい面白い土産話を持ってくるがいい! そのついでにモデル候補になりそうな奴がいたら、妾に報告! 連絡! 相談を忘れるな!」
女王様はパンッと手を叩く。
「あ、いつもの女王様に戻った」
「短かったのぅ」
「やかましいわ」
それなりの威厳を示して女王様らしさを見せていたが、最後の言葉でそれも台無しにしてしまった女王様だった。
◇◆◇◆◇
女王様への弁解も済み、いったん家に戻ってきた俺達は、作戦を立て直すことにした。
女王様に会ったことで、新たな情報が得られたのは収穫だった。
結果的にトンボだけでなく、セーラー戦士も捜索する対象に加わってしまったわけだが、女王様の意見が聞けたことで、俺も冷静さを取り戻せた。
「とにかく二人とも探しに行かなきゃいけないだろうな」
「じゃな。そこは決定じゃろ」
「でも、女王様の感じだと、そう急がなくてもよさそうだけど……」
「まぁ、言われてみればそうなのかものう。少なくとも二人の戦力を考えれば心配する方がおかしいしな」
「だなぁ」
戦力という点で言えば、むしろ普段のセーラー戦士の方が心配なくらいだ。
よって心配すべきは、別の点だろう。
カワズさんは深刻な顔をして俺に言った。
「ふむ、だが、二人を探しに行くにあたって、お前さんの魔法はなるべく使わない方がよさそうじゃな」
「……何で、と聞いておこうか?」
「わからんか? あの装備が解き放たれたんじゃぞ? しかもあの娘まで引き込んでな。お前、フォローにどれだけ魔力が必要か、想像つくか?」
「……つかないな」
マジカル☆トンボちゃんが変身して、その力を十二分に発揮すればどうなるか? というのが今回の問題のすべてである。
感想 3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~
由香皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。
だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。
しかし彼女は知らなかった。
帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。
これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
「お姉様の刺繍は素人ね」と笑った義妹の婚礼衣装——裏地を見た女官十二人が、一斉に針を置いた
歩人(あゆと)「お姉様の刺繍は、素人の手習いに見えますわね」――王太子妃となる異母妹アデリーナは、王宮女官たちの前で姉ローゼを笑った。翌週の婚礼の朝。式典装の最終確認のため、十二人の女官が衣装の裏地を検めた瞬間――一人、また一人と、針を置いた。裏地に縫い込まれていたのは、女官たちが十二年間ずっと探していた一筆の銀糸。即位式の絹外套、二人の王女の婚礼ドレス、亡き王太后の弔意の喪服。王家儀礼衣装のすべての裏地に、同じ手で、同じ糸で、同じ銀の花が縫い込まれていた。「アデリーナ様、これは――あなた様の手では、ございません」縫い手は、ずっと一人だった。それを十二年間、誰の名でも呼べなかっただけのこと。
【老化返却】聖女の若さは俺の寿命だった〜回復魔法の代償を肩代わりしていた俺を追放した報いだ。回復のたびに毛が抜け、骨がスカスカになるが良い〜
寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった「寿命を削って回復してやってたのに……感謝すらしないんだな」
聖女パーティの荷物持ち兼回復術師だった俺は、ある日突然パーティを追放された。
理由は「回復魔法のコストが寿命で、もうすぐ死ぬ無能はいらない」という勝手な思い込み。
だが、彼らは知らなかった。
俺の正体が、この世界の生命を司る世界樹の根源そのものだったことを。
俺の寿命は無限であり、俺がパーティにいたからこそ、彼らは「若さ」と「健康」を維持できていたのだ。
「俺がいなくなったら、誰が君たちの老化を止めるの?」
俺がいなくなった途端、聖女たちの身体に異変が起きる。
回復魔法を唱えるたびに、自慢の金髪はバサバサと抜け落ち、肌は土色に。
若さに溺れていた彼女たちは、骨がスカスカになり、杖なしでは歩けない老婆のような姿へと変わり果てていく。
一方、解放された俺は隣国の美少女皇女に拾われ、世界樹の力で枯れた大地を森に変える「現人神」として崇められていた。
「今さら戻ってきて? ……悪いけど、そのハゲ散らかした老婆、誰だっけ?」
すべてを失ってから「俺」の価値に気づいても、もう遅い。
これは、恩を仇で返した連中が、自らの美容と健康を代償に破滅していく物語。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
妹ばかり愛した家族へ。私が王太子妃になった日、皆さんは謝りました。けれど、もう遅いのです
由香【全一話完結】
幼い頃から妹の引き立て役として生き、婚約者まで奪われて家を追放された侯爵令嬢エレナ。
傷ついた彼女が助けた青年は、身分を隠した王太子だった。
一年後、王太子妃となったエレナの前に現れたのは、今さら「家族だから」と擦り寄ってくる両親と妹。
けれど彼女は、もう二度と振り返らない。
凱旋した英雄は聖女を選びました。~冬の補給路を守っていた私は静かに軍を去ります~
握夢(グーム)「君は後方にいただけだ」――
凱旋した英雄の婚約者からそう切り捨てられた私は、
静かに軍を辞職しました。
――冬の補給路管理。
――兵糧配分。
――医薬品輸送。
――損耗率管理。
全部、私の仕事だったのですが。
三週間後、
王国軍は補給崩壊。
「なぜ食糧が届かない!」
「なぜ兵が飢える!」
……逆にお聞きしますが、
今まで“なぜか全部上手く回っていた”理由を、
一度でも考えたことはありましたか?
これは、
誰にも評価されなかった兵站官(へいたんかん)が、
隣国の辺境伯にだけ価値を見抜かれ、
人生を取り戻す物語。
今更「戻ってきてくれ」と泣きつかれても、
私は隣国の最高機密ですので――!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中