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これが悪役令嬢・・?

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「な、なにをするのだ! 父上にも殴られたことないのに・・」
「そうですか・・では、また歯を食いしばってください!」

 尻もちをつき腰を抜かしたままの状態で、フェルナルドは上擦った声で怒鳴り返すが、全く迫力や威厳といったものは感じられなかった。
 対するアメリアは、絶対零度の微笑みを浮かべたまま、右手をぐうの形に固く握ると、

 ――ぐごぅぶ!

 また強烈な音が、王宮のホールに響いたのだ。
 フェルナンドは再び床にみっともなく倒れたのだ。左の頬も腫れあがり今度は、鼻血まで出ている。

「二度も殴るなんて・・このままで済むと思うなよ。お前など不敬に値する!!」

「言いたいことはそれだけですか・・・散々身勝手な振る舞いをしておきながら何もわかっていないなんて、貴方にとって私は一体何だったのですか・・・。
 私は王宮からの命令で好きでもない貴方と・・それでも伴侶となるのだがら懸命に好きになろうと努力して一緒にいたのに・・馬鹿にするのもいい加減にしてください。婚約破棄するならもっと早くできなかったんですか!!」

 そういうと、アメリアはさらに殴りつけたのだ。

 近くでは、メリーナが顔を真っ青にしながら震えていた。
 こんなの・・私が思い描いていたシナリオじゃないわ。もう、めちゃくちゃよ。なんなの、あの女・・

 さっきまでは、幸福の絶頂にいたはずなのにどうしたことか・・幸せな気分は綺麗さっぱり消し飛んでしまったのだ。
 このままでは計画が狂ってしまう。当初の予定ではこの女を蹴り落して、私が第二王子フェルナンドの婚約者になる予定だったのに・・このままでは、騒ぎを起こしたとして馬鹿王子ごと私も処罰の対象になる可能性もでてくる。

 すぐ近くではフェルナンドがボコボコにされ、虫のように這いずりながらメリーナに助けを求めてきたが、
 ししっと野良犬を追い払うように断固として助けを拒否する。

 結局アメリアは衛兵達に取り押さえられるまで、フェルナンドをタコ殴りにしたのだった。

 後に世に貴族の間ではアメリアは悪役令嬢と呼ばれたが、民の間では、王族にたてついた痛快な貴族令嬢の話として有名な語り草となるのだった。
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