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食わせちまえばこっちのもん
しおりを挟むアルフレットはチョコレートを食べながらもリディアをじっと見つめていた。
――僕が本当に食べたいものがまだあります……リディアさん、その唇を奪いたい。今すぐこのチョコレートのようにぐちゃぐちゃにあなたを食べてしまいたい。スリットから覗く肌に舌を這わせたい。あなたの全身を覆うワンピースをすべて脱がして俺だけのあなたを見たい。
ちょうど彼らがいるのは寝室。
アルフレットの妄想が進むたびに彼の息も荒くなっていった。
「アルフレットさん、美味しい? もっと食べたい?」
「とても美味しいです……いくらでも食べたいです…………ああ、もう最後の一粒……すみません、ゆっくりと味わえていなくて……」
「それだけ美味しいってことでしょ? そうだ、その一粒、私にちょうだい」
リディアに頼まれ、アルフレットの眉は情けなく下がった。
本当は彼女のチョコレートを作った本人にも渡したくない。
けれど、愛するリディアの頼みだ。
苦渋の思いで一粒を渡した。
すると、受け取った彼女がなんとそれを唇に加え、アルフレットに向けて差し出したのだ。
「ん」
「り、リディアさんっ! それは……!」
いけません、なんてアルフレットはもう言えなかった。
彼女に恥をかかせないため、このままだとチョコレートが溶ける、だなんて言い訳を瞬時に思いついたアルフレットは勢いのまま食らいついた。
奪い取ったチョコレートは簡単に溶けたが彼の口は離れない。
――これがキス。なんて甘美なんだ……リディアさんの口の中が熱い。溶けそうだ。ああ、可愛い。リディアさんがいつも以上に可愛い。
童貞男のあまりのがっつき具合にリディアの方が面食らった。
――アルフレットさんってば、こんな貪るようなキスを……チョコに仕込んだ媚薬、かなり効果あるなぁ……どうしよう、こんな激しいキス、私も初めてだよ。
ぼと、とベッドの端に置いていた花束が落ちた音でキスも止んだ。
「あ……り、リディアさん! 申し訳ありません! チョコレートだけでなくあなたの口まで食べてしまい……」
「初めてのキスはチョコレートの味だね。もう一回しよ」
「ですが、僕はなんてことを……これこそ欲のままにあなたを貪っている……」
「違うよ、アルフレットさん。愛し合う恋人はこのぐらい当たり前にするもんだよ。女神さまも許してくれる」
「そうなのですか……? このぐらいはまだ普通ですか?」
「うん」
初めて知った己の獣のような欲に戸惑うアルフレットにとって、リディアの言葉は蜜よりも甘く耐えがたいものだった。
格好の言い訳を手に入れた彼はもう一度彼女にキスをし、リディアも受け入れた。
そのうちにアルフレットは彼女をベッドに押し倒し、乗り上げていた。
「……リディアさん、お願いします。僕を殴ってください……あなたへの思いが……肉欲を止められそうにないんです。このままだとあなたにひどいことをしてしまう」
苦し気に言うアルフレットの手が震えていた。
今すぐ襲い掛かりたいのをどうにか抑えていることがリディアにも見て取れた。
だからこそ彼女は自分の着ていたワンピースのスリットをめくれさせ、蠱惑的な笑みを浮かべて誘った。
「肉欲を止められないのはアルフレットさんだけじゃないよ。私もずっとあなたが欲しかったって言ったら、軽蔑する?」
「それ以上、僕を誘惑しないでください……本当にこれ以上は……」
「ひどいことしてほしいの。ね、アルフレットさん。お願い。私を愛しているなら我慢しないで」
震えるアルフレットの手に指をつたわせ懇願したリディアに獣はもう我慢できなかった。
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