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第3部 聖女降臨
第45話 侍女リンリン
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私の名はリンリン。
妹のランランとビッチェ王女様のメイドをしている。
私達は極秘裏に国が運営する『Hole of a tiger』という秘密組織に属している。
戦闘メイドとして訓練を受けた私達は、王族のメイドとなり側で警護の仕事も兼ねている。
前任者イルゼとレーナの後を私達が引き継いだのだ。
でも落ち目の王女のメイドは嫌だった。
最初、この話が来た時はなぜ私達に、と不運を恨んだ。
メイドはどの主人に仕えるかで、栄華が決まるからだ。
そしてメイドとして働き始めてから3年が経った。
王女様はいつも辛そうな、寂しそうなお顔をされていた。
特にオバダリア侯爵様やロターリ司祭様が、お見えの際は顔が曇っていた。
そしてオバダリア侯爵様と親密そうにしていたが、侯爵様が居ない時にロターリ司祭様がお見えになり、書斎の奥の部屋で2人でなにやらされていた。
内密の話があるから、と立ち入りを禁止されていたが。
政治が絡むと意外と貴族も大変なのだと思った。
そして昨日、聖女召喚があったらしい。
ビッチェ王女様は、とても晴れやかなお顔をして戻ってこられた。
良いことがあったのかしら?
今日の午前は王様と謁見もあったとか。
城内の女性は噂好きだ。
すぐに情報は入ってくる。
その情報を1つに集めて、組織に報告するのも私達の務めだ。
何かビッチェ王女様は吹っ切れた顔をしている。
シルクの高そうなスカーフを私とランランにくださった。
使える主人から何かを頂けるなんて、他のメイドから聞いたことが無い。
そして私達にも優しく接してくださる。
孤児の戦闘メイドの私達なんて、眼中にない主人が多いのに。
そして昨日は城下町に視察に行くと言う。
この食べ物も無く人々が貧困に喘ぐ町を、その目で見たいと言う。
お忍びで町に行くのに服が無いからと、私の朱色のドレスをお貸しした。
そのドレスを大層喜ばれ、着やすそうね、と褒めてくださった。
ビッチェ王女様の服もそうされるとおっしゃったけど、私達侍女の仕事が無くなります、と笑った。
そして城下町に出ると王女様は驚いた顔をされた。
余りにも町が荒れ寂れていたからだろう。
町を歩いていると貴族の馬車が、路地を物凄い勢いで走ってきた。
私達は慌てて避けたけど、道を渡ろうとした5歳くらいの男の子がはねられた。
貴族の馬車は止り慰謝料代わりに、窓から500円硬貨を2枚投げ捨て走り去った。
男の子の母親は必死に周りに助けを呼ぶ。
でも誰も助けることは出来ない。
怪我は教会の神官しか治せないからだ。
でも彼らが使う治癒魔法でも、助かるとは思えないくらい酷かった。
その時、王女様が道に落ちた500円硬貨を2枚拾い私に聞いた。
1,000円で何が買えるかと。
私は答えた、大根1本も買えないと。
そして呟かれた。
これは駄目ね、✖だと。
それから王女様は泣きじゃくる母親の側に行かれた。
そして母親に、子供を見せてほしいと言った。
確か王女様はHealingが使えると聞いたことがある。
でも教会の神官なら、一生掛かっても払えない金額を要求される。
それを庶民相手に、使うと言うの?
考えられないわ。
王女様はHealingを唱えた。
でも治しきれなかったみたい。
それはそうよ。
あれだけの怪我だもの。
普通は治癒魔法でも治せない。
でも王女様は諦めなかった。
お1人で一生懸命、男の子を助ける手立てを考えているんだわ。
だから独り言をあんなにたくさん言われて…。
左手を翳して何かをしているようだったわ。
まるで打撲の具合を調べているかのように。
そして私達は奇跡の瞬間を見たの。
王女様は聞いたことがない魔法を唱えた。
すると見る見るうちに、男の子の顔色が良くなっていくのを。
凄いわ!Healingを上回る、回復魔法をお使いになるなんて!!
男の子の怪我は無事に治っていた!
信じられない事よ?!
そして母親がお礼を言いながら、治療費を出せるお金が無いと言う。
すると王女様は『これを頂くから』そう言って、貴族が投げ捨てた500円硬貨2枚を見せたの。
私はキュンとしたわ!
いいえ、それを見ていたランランもそう感じたみたい。
やっぱり双子は以心伝心ね。
そして誰かが『聖女様』と言い始めた。
私達2人は危険を感じ、太腿に隠しているナイフをフォルダーから外し構えたわ。
彼らは聖女を求めた。
いいえ、この苦しみから誰でも良いから救ってほしかったんだ。
そして彼らは食料を求めた。
そんなの無理に決まっているのに。
いくら王女様でも国の食糧庫を開けられるほどの権力はない。
するとまた独り言を言い始めた。
一生懸命にどうしたらいいのか、考えていらっしゃるのね。
だからあんなにたくさん呟かれて…。
すると突然、出店に向かわれて行く。
私達も後を追う。
そして私達が見たのは突然どこからか現れた肉の塊だった!!
出店の台がきしむくらい重そうな、縦横1mくらいの肉だった。
場所を借りるためだろう、王女様は私のナイフを使い四角く肉を切り出店のおばさんに渡した。
そして私にナイフを返す際に言われた。
「あなた達は、これを切り分けてね」
私はランランと、声を揃えて返事をした。
「「 わかりました!! 」」と。
でもこれは護衛用のナイフだから、肉切り包丁を持ってくれば良かったな、なんて馬鹿な事を考えた。
私とランランの前に、人々が2列に並び肉を受けとる。
突然の事だから用意なんてないから、みんな素手で肉を載せ持って帰る。
それから思った通りの事が起こった。
ここに居ない家族分が欲しいと。
王女様はまた独り言を言い始めた。
民の事を思い、一生懸命考えて下さっているのね。
そしてそれは起こった。
私達2人を後ろに下がらせると人々に何かを放ったの。
私達、戦闘メイドから見たら『覇気』を放ったとしか思えなかった。
このか弱そうな王女様に、そんなことができるのだろうか?
私とランランは、顔を見合わせた。
それから人々は大人しくいう事を聞いた。
家族の人数は嘘を言わないと。
途中で肉が無くなり、また突然、肉の塊がどこからか出て来た。
あれは、どこから?
ふと見ると王女様は、小さいポーチを下げている。
あれはマジック・バッグだったのね。
さすがは貴族。
そんな高価な物を持っているなんて。
そして今回の事は事前に手配しておいた、肉が手に入ったからに違いないわ。
マジック・バッグに収納しても、時間と共に鮮度は落ちる。
だから突然、城下町の視察行くなんておっしゃったのね。
どれほど肉を手に入れるのに手を尽くされ、大金を使われたのかしら。
でも縦横1mくらいの肉の塊が取れる、魔獣や魔物なんていたのかしら?
ドラゴン?まさかね。
それから人々は口々に「聖女の肉」と言いながら、血が滴る肉を王女様に掲げ帰って行く。
まるで崇高な儀式の一端を垣間見たようだった。
私達は王女様の噂を信じ、見誤っていたのかもしれない。
私達だけでも、これからも付き従って行こう。
これだけ庶民のことを考えてくださる、聖女様のような王女様に。
妹のランランとビッチェ王女様のメイドをしている。
私達は極秘裏に国が運営する『Hole of a tiger』という秘密組織に属している。
戦闘メイドとして訓練を受けた私達は、王族のメイドとなり側で警護の仕事も兼ねている。
前任者イルゼとレーナの後を私達が引き継いだのだ。
でも落ち目の王女のメイドは嫌だった。
最初、この話が来た時はなぜ私達に、と不運を恨んだ。
メイドはどの主人に仕えるかで、栄華が決まるからだ。
そしてメイドとして働き始めてから3年が経った。
王女様はいつも辛そうな、寂しそうなお顔をされていた。
特にオバダリア侯爵様やロターリ司祭様が、お見えの際は顔が曇っていた。
そしてオバダリア侯爵様と親密そうにしていたが、侯爵様が居ない時にロターリ司祭様がお見えになり、書斎の奥の部屋で2人でなにやらされていた。
内密の話があるから、と立ち入りを禁止されていたが。
政治が絡むと意外と貴族も大変なのだと思った。
そして昨日、聖女召喚があったらしい。
ビッチェ王女様は、とても晴れやかなお顔をして戻ってこられた。
良いことがあったのかしら?
今日の午前は王様と謁見もあったとか。
城内の女性は噂好きだ。
すぐに情報は入ってくる。
その情報を1つに集めて、組織に報告するのも私達の務めだ。
何かビッチェ王女様は吹っ切れた顔をしている。
シルクの高そうなスカーフを私とランランにくださった。
使える主人から何かを頂けるなんて、他のメイドから聞いたことが無い。
そして私達にも優しく接してくださる。
孤児の戦闘メイドの私達なんて、眼中にない主人が多いのに。
そして昨日は城下町に視察に行くと言う。
この食べ物も無く人々が貧困に喘ぐ町を、その目で見たいと言う。
お忍びで町に行くのに服が無いからと、私の朱色のドレスをお貸しした。
そのドレスを大層喜ばれ、着やすそうね、と褒めてくださった。
ビッチェ王女様の服もそうされるとおっしゃったけど、私達侍女の仕事が無くなります、と笑った。
そして城下町に出ると王女様は驚いた顔をされた。
余りにも町が荒れ寂れていたからだろう。
町を歩いていると貴族の馬車が、路地を物凄い勢いで走ってきた。
私達は慌てて避けたけど、道を渡ろうとした5歳くらいの男の子がはねられた。
貴族の馬車は止り慰謝料代わりに、窓から500円硬貨を2枚投げ捨て走り去った。
男の子の母親は必死に周りに助けを呼ぶ。
でも誰も助けることは出来ない。
怪我は教会の神官しか治せないからだ。
でも彼らが使う治癒魔法でも、助かるとは思えないくらい酷かった。
その時、王女様が道に落ちた500円硬貨を2枚拾い私に聞いた。
1,000円で何が買えるかと。
私は答えた、大根1本も買えないと。
そして呟かれた。
これは駄目ね、✖だと。
それから王女様は泣きじゃくる母親の側に行かれた。
そして母親に、子供を見せてほしいと言った。
確か王女様はHealingが使えると聞いたことがある。
でも教会の神官なら、一生掛かっても払えない金額を要求される。
それを庶民相手に、使うと言うの?
考えられないわ。
王女様はHealingを唱えた。
でも治しきれなかったみたい。
それはそうよ。
あれだけの怪我だもの。
普通は治癒魔法でも治せない。
でも王女様は諦めなかった。
お1人で一生懸命、男の子を助ける手立てを考えているんだわ。
だから独り言をあんなにたくさん言われて…。
左手を翳して何かをしているようだったわ。
まるで打撲の具合を調べているかのように。
そして私達は奇跡の瞬間を見たの。
王女様は聞いたことがない魔法を唱えた。
すると見る見るうちに、男の子の顔色が良くなっていくのを。
凄いわ!Healingを上回る、回復魔法をお使いになるなんて!!
男の子の怪我は無事に治っていた!
信じられない事よ?!
そして母親がお礼を言いながら、治療費を出せるお金が無いと言う。
すると王女様は『これを頂くから』そう言って、貴族が投げ捨てた500円硬貨2枚を見せたの。
私はキュンとしたわ!
いいえ、それを見ていたランランもそう感じたみたい。
やっぱり双子は以心伝心ね。
そして誰かが『聖女様』と言い始めた。
私達2人は危険を感じ、太腿に隠しているナイフをフォルダーから外し構えたわ。
彼らは聖女を求めた。
いいえ、この苦しみから誰でも良いから救ってほしかったんだ。
そして彼らは食料を求めた。
そんなの無理に決まっているのに。
いくら王女様でも国の食糧庫を開けられるほどの権力はない。
するとまた独り言を言い始めた。
一生懸命にどうしたらいいのか、考えていらっしゃるのね。
だからあんなにたくさん呟かれて…。
すると突然、出店に向かわれて行く。
私達も後を追う。
そして私達が見たのは突然どこからか現れた肉の塊だった!!
出店の台がきしむくらい重そうな、縦横1mくらいの肉だった。
場所を借りるためだろう、王女様は私のナイフを使い四角く肉を切り出店のおばさんに渡した。
そして私にナイフを返す際に言われた。
「あなた達は、これを切り分けてね」
私はランランと、声を揃えて返事をした。
「「 わかりました!! 」」と。
でもこれは護衛用のナイフだから、肉切り包丁を持ってくれば良かったな、なんて馬鹿な事を考えた。
私とランランの前に、人々が2列に並び肉を受けとる。
突然の事だから用意なんてないから、みんな素手で肉を載せ持って帰る。
それから思った通りの事が起こった。
ここに居ない家族分が欲しいと。
王女様はまた独り言を言い始めた。
民の事を思い、一生懸命考えて下さっているのね。
そしてそれは起こった。
私達2人を後ろに下がらせると人々に何かを放ったの。
私達、戦闘メイドから見たら『覇気』を放ったとしか思えなかった。
このか弱そうな王女様に、そんなことができるのだろうか?
私とランランは、顔を見合わせた。
それから人々は大人しくいう事を聞いた。
家族の人数は嘘を言わないと。
途中で肉が無くなり、また突然、肉の塊がどこからか出て来た。
あれは、どこから?
ふと見ると王女様は、小さいポーチを下げている。
あれはマジック・バッグだったのね。
さすがは貴族。
そんな高価な物を持っているなんて。
そして今回の事は事前に手配しておいた、肉が手に入ったからに違いないわ。
マジック・バッグに収納しても、時間と共に鮮度は落ちる。
だから突然、城下町の視察行くなんておっしゃったのね。
どれほど肉を手に入れるのに手を尽くされ、大金を使われたのかしら。
でも縦横1mくらいの肉の塊が取れる、魔獣や魔物なんていたのかしら?
ドラゴン?まさかね。
それから人々は口々に「聖女の肉」と言いながら、血が滴る肉を王女様に掲げ帰って行く。
まるで崇高な儀式の一端を垣間見たようだった。
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