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第5部 終息

第36話 教会と女神ゼクシー

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 朝が来た。
 俺のことを気遣ったのかオルガさん達から、『今日は休みましょう』と言われた。
 休みは良いがする事がない。

 そう言えば教会はどこだろう。
 女神ゼクシーにお礼を言わないと。
 お祈りすれば会えることもあるって言ってたし。

 オルガさん達の部屋を訪ね教会の場所を聞いてみた。

「教会はどこですか?」

「教会?あぁ、大聖堂のことね。大聖堂は…」

 教会に参拝に行くことを話すと、オルガさん達3人も来ると言う。
 やはり、宿に居てもすることがないのか。
 歩いて10分くらいのところに大聖堂があった。
 大きなお城のような建物の横に教会の様な建物があり、そこで参拝ができそうだ。

 中に入ると女神ゼクシーだと思われる像があった。
 どう見ても盛っている。
 実際にあった俺にはわかる。

 そんなことを考えていると40代くらいのシスターが来て、声をかけられた。

「どの様なご用件でしょうか?」

「初めて参拝に来たのですが、どの様にすれば?」

「特に決まりはありませんが女神像にひざまずいて、目を閉じ祈ればいいのです」

 言われた通り跪いて目を閉じ祈った。
 すると転移した時のように白い靄のようなものに包まれた場所にいた。

『私を呼ぶのは誰ですか?』

『女神様、こんにちわ。俺です』

 女神ゼクシーが現れた。
『あら、あなたは……』

『あなたに名前をもらったエリアスです』

『あぁ、あの時の…』
 女神ゼクシーは多忙な日々に追われ、すっかりエリアスの事など忘れていた。

『質問です、女神様』

『あぁ。はい、なに?』

『どうして盛っているのですか?女神様はボン、キュッキュではありません!』

『はい?』

『もう一度言います。どうして盛っているのですか?実際の女神様はボン、キュッキュではありません!』

『そ、そ、それは…少しくらい盛らないと信仰という人気が出ないからよ』

『でも、さすがにメガ盛りはどうかと…』

『そんなことを言いに来たの…(泣)』

『いいえ、生活の目途が立ったことを報告に来ました』

『そ、それは良かったわね。私も安心したわ』

『はい、良い仲間に恵まれ今は転移してよかったと思っています。これも女神様のおかげです。とても感謝しています』

(え、転移して良かったの?)
『そ、そう言ってもらえると、転移させた私も張り合いがあるわ』

『最初はこんなスキルでどうなるのかと思いましたが、あえてそうした深い意味があったのですね。こんな最強のスキルだったなんて』

『そ、そうでしょ。アハハハ』
(最強?そんな、はずはないわ。クズスキルなはずよ)

 念のため【鑑定】!!

(な、なに、この異常なスキルは?『防御魔法士』てなに?)
 女神ゼクシーは驚いた。

 現世とあの世の狭間はざまにくるような人は、ろくな行いをしてこなかったからだ。
 徳の高い人はすぐに昇天し寄り道はしない。
 狭間に引っかかるクズを集め、転移させている。
 だから最初から期待なんてしていないのだ。
 人間性に難がある人が多く、そのため力を与えない様にしている。

 ただそれでも地球での知識を生かせる人も居れば、使う側のみだった人は知識を生かせずに寿命を迎える。
 ストレージや鑑定があれば、使い方によっては十分暮らしていけるスキルだ。

 ただここまでスキルを捻じ曲げて、発展させるのは聞いたことがない。

(しかも普通なら考えないような、捻じ曲がったスキルの組合せをしているから、出来る事も制限があり変なのよね。少ないスキルで生きるために工夫をしたのね)

 この世界に転移してきたときは地球で58年生きてきた人生観があった。
 だがこの世界に転移して、17歳の精神年齢に引っ張られ純真無垢になったのだ。

『俺の周りにいる人達がとても良くしてくれて、これも女神様のご配慮ですよね』
『えっ、もちろんそうよ。せっかく転移したのに、環境が悪いと可哀そうだもの』
(ただの偶然よ。しかも英雄の卵て、300年ぶりだわ)

 女神ゼクシーは放置しておいたエリアスの、転移してからの行動を読み取った。

(あれ?見ない間に変わったわね。よく頑張ってるわ。しかもこんなに性格が良くなって、人から好かれて…)

 あぁ、なぜか愛しく思える。
 黒髪、黒い瞳の美形の少年。
 人の心を引きつけにさせる、雰囲気を持つ少年。

【スキル】魅力が発動していた。

『では女神さま。また会いに来ますね』
『ま、まってちょうだいエリアス。母さんで良いわ』
『はい?』
『今度からは他人行儀な言い方はせず、母さんて呼んでちょうだい!』
『あ、はい、分かりました、母さん』
『あぁ、母さんだなんて。なんて良い響きなんでしょう』
 両手を胸の前で組みながら女神は話している。
『では、本当にまた来ますね』
『あ、絶対また来るのよ。貴方は私のものだから。大聖堂で祈ればいつでもここに来れるからね』

 女神ゼクシーの母性本能が目覚めた瞬間だった。
『体に気を付けてね。あなたに危害を加える様な人が居たら、国の一つくらい滅ぼしてあげるから』
 聞こえないくらいの小さい声でゼクシーは言った。



 女神様は何度も俺に手を振った。
 女神ゼクシーて、あんなだったかな?
 ツンデレだったのかな?


 俺は現実世界に戻り、目を開け立ち上がった。

「エリアス君、随分長く祈っていたわね」
「色々と話すことがあったんですよ。オルガさん」
「女神様と?」
「えぇ、そうですよ」

 待っていた様にシスターがやってた。
 良く見ると服がややくたびれ、顔も痩せていた。
 今居る建物の外壁も塗装が剥げ、老朽化気味だし。

 そのことをストレートに聞いてみた。
「教会は寄付で運営しております。ただ昨今は寄付が減りました。それだけみなさんの生活が苦しいということでしょうか。大聖堂は大きく、他に建物もあり今の寄付の額では修繕が追い付かないのが現状なのです。それに孤児も引き取っておりまして明日のご飯でさえ…」



 帰りに寄付としてシスターに10万円を渡した。
 シスターはとても驚いていた。

「こ、こんなに頂いても宜しいのでしようか?」

「俺もある意味、神の子ですし。このくらいは当然ですから」

「そ、そうですね、人はみな神の子です。このお金で子供達に美味しいものを食べさせてあげられます…。あなたに神のご加護があらんことを」

 そして教会を出るまで、何度も何度も頭を下げられた。


 その後オルガさんから寄付をする気持ちは尊いけど、私に相談してからにしてほしいと言われた。
 生活設計があって色々考えてるんですから、と言われた。
 な、なに?
 どゆこと?

 気づかない振りが、そろそろキツくなってきた。

 そして4人で買い物をしようと歩きだした。
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