59 / 108
娘が無事だと知った
しおりを挟む
「ふーん」
送られてきた報告書に、まあこんなものかと納得する。
キューを捨てた乳母の家族は、突然乳母が行方不明になり途方にくれる…かと思えば。
実際には彼女が消えたことでたんまりと入ってきたお金…退職金兼口止め料だったそれを使ってそれなりに楽しく暮らしているらしい。心配する様子は見受けられないとか。
幼子を山に捨てる薄情者にはお似合いの仕打ちだと言えるだろう。
おかげでこちらも罪悪感など持たずに済むが。
「乳母自身は…」
今更沸いた罪悪感や家族への未練からだろうか。
坑夫たちの前では明るく元気に気遣い上手な寮母でいるようだが。
一人きりになると、死んだ様な表情だ。
「こちらは、罰としては十分かな」
こちらに関しては納得はいった。
あとは、両親の方。
とはいえ、キューは弟は好きだという。
キューはオレの番なので、その弟は一応オレの義弟なわけだ。
両親には仕置をしたいが、弟に影響が出ない範囲でとなると…。
「オレが出向くしかないかな」
オレは準備をして、ある日半日だけ寺を空けた。
最近やり手の、パラディース教という新興宗教。
平民や商人たち、果ては貴族にまで影響力を持つという。
ついこの間、どこかの家が目をつけられて潰されたという噂も耳にした。
そんな宗教の教主が何故か私に会いたいという。
下手に断れる相手ではないので、予定を組んでお出迎えした。
「…お初にお目にかかる。オレを迎え入れてくれて、どうもありがとう」
余裕たっぷりに、年齢不相応な余裕を見せるその幼子は。
私が捨てた娘、キューケンと同じ色を宿していた。
「あ…」
「オレの可愛い義妹の、実の親に会えてとても光栄だよ」
柔らかな笑みの奥に燃えるような怒りを感じる。
目をつけられてはいけない存在に目をつけられた。
だが、私は場違いにも安心と喜びを感じている。
我が身可愛さに、理不尽に捨てた実の子が無事だと知ったから。
我ながら、勝手なものだ。
「さて。我が義妹…可愛いキューはもうこちらの子にした。一応その報告と挨拶にきたんだ」
「…ありがとうございます」
「ありがとうございます?すごいすごい!捨てた子を拾ってくださってありがとうございます、なんて普通の親には言えないよ!」
おっしゃる通りで。
「…申し訳ありません」
「言う相手が違うんじゃないかな」
「私には、会えません」
「うん、絶対死んでも会わせないよ」
微笑みを絶やさないのに、その目は私を射殺すように鋭い。
「…オレはいつでもどうとでもできる。そうしないのは、キューが弟とやらを今でも大切に思っているから」
「…!」
「肝に命じて、我が義弟をしっかり大事に育てなよ」
キューの弟なら、オレの義弟同然だからね。
そう言われて、心に決める。
あの子を今まで以上に死ぬほど大切にしようと。
でなければこの幼い獣は私と妻をいとも容易く喰い殺すだろう。
そんな予感がした。
「時間と手間を取らせたのにごめんね。キューが寂しがるからもう帰るよ。下山も登山も結構あるからね」
踵を返して颯爽と帰る姿に、色々な意味で安堵と恐ろしさを感じて死にそうなくらいうるさい心臓に胸を掻き毟くった。
送られてきた報告書に、まあこんなものかと納得する。
キューを捨てた乳母の家族は、突然乳母が行方不明になり途方にくれる…かと思えば。
実際には彼女が消えたことでたんまりと入ってきたお金…退職金兼口止め料だったそれを使ってそれなりに楽しく暮らしているらしい。心配する様子は見受けられないとか。
幼子を山に捨てる薄情者にはお似合いの仕打ちだと言えるだろう。
おかげでこちらも罪悪感など持たずに済むが。
「乳母自身は…」
今更沸いた罪悪感や家族への未練からだろうか。
坑夫たちの前では明るく元気に気遣い上手な寮母でいるようだが。
一人きりになると、死んだ様な表情だ。
「こちらは、罰としては十分かな」
こちらに関しては納得はいった。
あとは、両親の方。
とはいえ、キューは弟は好きだという。
キューはオレの番なので、その弟は一応オレの義弟なわけだ。
両親には仕置をしたいが、弟に影響が出ない範囲でとなると…。
「オレが出向くしかないかな」
オレは準備をして、ある日半日だけ寺を空けた。
最近やり手の、パラディース教という新興宗教。
平民や商人たち、果ては貴族にまで影響力を持つという。
ついこの間、どこかの家が目をつけられて潰されたという噂も耳にした。
そんな宗教の教主が何故か私に会いたいという。
下手に断れる相手ではないので、予定を組んでお出迎えした。
「…お初にお目にかかる。オレを迎え入れてくれて、どうもありがとう」
余裕たっぷりに、年齢不相応な余裕を見せるその幼子は。
私が捨てた娘、キューケンと同じ色を宿していた。
「あ…」
「オレの可愛い義妹の、実の親に会えてとても光栄だよ」
柔らかな笑みの奥に燃えるような怒りを感じる。
目をつけられてはいけない存在に目をつけられた。
だが、私は場違いにも安心と喜びを感じている。
我が身可愛さに、理不尽に捨てた実の子が無事だと知ったから。
我ながら、勝手なものだ。
「さて。我が義妹…可愛いキューはもうこちらの子にした。一応その報告と挨拶にきたんだ」
「…ありがとうございます」
「ありがとうございます?すごいすごい!捨てた子を拾ってくださってありがとうございます、なんて普通の親には言えないよ!」
おっしゃる通りで。
「…申し訳ありません」
「言う相手が違うんじゃないかな」
「私には、会えません」
「うん、絶対死んでも会わせないよ」
微笑みを絶やさないのに、その目は私を射殺すように鋭い。
「…オレはいつでもどうとでもできる。そうしないのは、キューが弟とやらを今でも大切に思っているから」
「…!」
「肝に命じて、我が義弟をしっかり大事に育てなよ」
キューの弟なら、オレの義弟同然だからね。
そう言われて、心に決める。
あの子を今まで以上に死ぬほど大切にしようと。
でなければこの幼い獣は私と妻をいとも容易く喰い殺すだろう。
そんな予感がした。
「時間と手間を取らせたのにごめんね。キューが寂しがるからもう帰るよ。下山も登山も結構あるからね」
踵を返して颯爽と帰る姿に、色々な意味で安堵と恐ろしさを感じて死にそうなくらいうるさい心臓に胸を掻き毟くった。
510
あなたにおすすめの小説
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?
朱音ゆうひ@『桜の嫁入り』発売中です
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!
「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」
王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。
不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。
もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた?
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)
【完結】せっかくモブに転生したのに、まわりが濃すぎて逆に目立つんですけど
monaca
恋愛
前世で目立って嫌だったわたしは、女神に「モブに転生させて」とお願いした。
でも、なんだか周りの人間がおかしい。
どいつもこいつも、妙にキャラの濃いのが揃っている。
これ、普通にしているわたしのほうが、逆に目立ってるんじゃない?
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。
なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。
普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。
それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。
そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
転生貧乏令嬢メイドは見なかった!
seo
恋愛
血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。
いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。
これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。
#逆ハー風なところあり
#他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる