70 / 87
時間がかかるのも知っている
しおりを挟む
「でも、さっきも言った通り思考の癖はなかなか変わらない。有言実行には時間はかかるよ」
「うん、自覚はあるよ。でも、それでも自分を愛して大切にするってもう決めたから」
「…ありがとう。期待せず待ってる」
「そこは期待してよ」
「やだ。ぬか喜びは悲しいもん」
くすくすとニノン達は笑い合う。すると、無意識のニノンの身体はゆっくりとほつれていった。焦るニノンに、無意識のニノンが笑う。
「え」
「ふふ、大丈夫。私は無意識の中に溶けるだけ。この〝私〟は無意識が形を持っただけだから。また対話の必要があって、また貴女がここに来るならば必要な形を持って会いに来るよ」
ニノンがあからさまにホッとすると、無意識のニノンはさらに笑った。
「ふふ、もう。最初会った時はあんなに会いたくないオーラ全開だったくせに」
「そ、それは」
「でも、もう大丈夫だね」
無意識のニノンは、ニノンに対して消えかけの手を優しく振った。
「貴女が私を愛してくれるように、私は貴女を愛しています。どうか、その道行きに祝福と幸運のあらんことを」
そうして溶けたもう形のないもう一人の自分を、ニノンは優しく手繰り寄せるようにぎゅっとした。そこにはもう何もないけれど、きっと無意識の自分に何かが伝わると信じて。
「許してくれてありがとう。愛してくれてありがとう。私も貴女を許します。私も貴女を愛します。…貴女のおかげで、私はとても幸せです」
またふわりと心が軽くなった気がした。無意識の自分を感じて、ニノンはなんだかとても嬉しく思った。
「さて、泉から出なくちゃ」
ニノンは上を見上げる。光が差さないほど奥へときてしまった。泉から出るどころか、光が差し込む部分に上がるまですら大変そうだ。ニノンは足をバタバタと動かして、光を目指した。
「うん、自覚はあるよ。でも、それでも自分を愛して大切にするってもう決めたから」
「…ありがとう。期待せず待ってる」
「そこは期待してよ」
「やだ。ぬか喜びは悲しいもん」
くすくすとニノン達は笑い合う。すると、無意識のニノンの身体はゆっくりとほつれていった。焦るニノンに、無意識のニノンが笑う。
「え」
「ふふ、大丈夫。私は無意識の中に溶けるだけ。この〝私〟は無意識が形を持っただけだから。また対話の必要があって、また貴女がここに来るならば必要な形を持って会いに来るよ」
ニノンがあからさまにホッとすると、無意識のニノンはさらに笑った。
「ふふ、もう。最初会った時はあんなに会いたくないオーラ全開だったくせに」
「そ、それは」
「でも、もう大丈夫だね」
無意識のニノンは、ニノンに対して消えかけの手を優しく振った。
「貴女が私を愛してくれるように、私は貴女を愛しています。どうか、その道行きに祝福と幸運のあらんことを」
そうして溶けたもう形のないもう一人の自分を、ニノンは優しく手繰り寄せるようにぎゅっとした。そこにはもう何もないけれど、きっと無意識の自分に何かが伝わると信じて。
「許してくれてありがとう。愛してくれてありがとう。私も貴女を許します。私も貴女を愛します。…貴女のおかげで、私はとても幸せです」
またふわりと心が軽くなった気がした。無意識の自分を感じて、ニノンはなんだかとても嬉しく思った。
「さて、泉から出なくちゃ」
ニノンは上を見上げる。光が差さないほど奥へときてしまった。泉から出るどころか、光が差し込む部分に上がるまですら大変そうだ。ニノンは足をバタバタと動かして、光を目指した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
601
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる