公爵閣下のご息女は、華麗に変身する

下菊みこと

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時間がかかるのも知っている

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「でも、さっきも言った通り思考の癖はなかなか変わらない。有言実行には時間はかかるよ」

「うん、自覚はあるよ。でも、それでも自分を愛して大切にするってもう決めたから」

「…ありがとう。期待せず待ってる」

「そこは期待してよ」

「やだ。ぬか喜びは悲しいもん」

くすくすとニノン達は笑い合う。すると、無意識のニノンの身体はゆっくりとほつれていった。焦るニノンに、無意識のニノンが笑う。

「え」

「ふふ、大丈夫。私は無意識の中に溶けるだけ。この〝私〟は無意識が形を持っただけだから。また対話の必要があって、また貴女がここに来るならば必要な形を持って会いに来るよ」

ニノンがあからさまにホッとすると、無意識のニノンはさらに笑った。

「ふふ、もう。最初会った時はあんなに会いたくないオーラ全開だったくせに」

「そ、それは」

「でも、もう大丈夫だね」

無意識のニノンは、ニノンに対して消えかけの手を優しく振った。

「貴女が私を愛してくれるように、私は貴女を愛しています。どうか、その道行きに祝福と幸運のあらんことを」

そうして溶けたもう形のないもう一人の自分を、ニノンは優しく手繰り寄せるようにぎゅっとした。そこにはもう何もないけれど、きっと無意識の自分に何かが伝わると信じて。

「許してくれてありがとう。愛してくれてありがとう。私も貴女を許します。私も貴女を愛します。…貴女のおかげで、私はとても幸せです」

またふわりと心が軽くなった気がした。無意識の自分を感じて、ニノンはなんだかとても嬉しく思った。

「さて、泉から出なくちゃ」

ニノンは上を見上げる。光が差さないほど奥へときてしまった。泉から出るどころか、光が差し込む部分に上がるまですら大変そうだ。ニノンは足をバタバタと動かして、光を目指した。
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