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神は良い見世物だったと手を叩く

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「おかえり、ニノン」

湖から出たニノン。それを出迎えたのは神。

「ああ、濡れて寒いだろう?魔法で乾かすと良い」

「はい、神様」

ニノンは魔法で自分の服を乾かす。

「しかしニノン。先程の見世物は素晴らしかったなぁ?」

そう言いながらニノンに対してパチパチと拍手を送る神。ニノンは首をかしげる。

「見世物ですか?」

「ああ、無意識の自分との対話。実に面白かった。優しさだけで出来たような甘い顔の裏で、お前も本当は傷ついたり人を許さなかったりしたんだなぁ」

「えっと…」

「無意識の自分があんなことを言うってことは、傷ついたのはもちろんその相手を許せていないということだろう?ああ、これだから人間は…」

にやにやと笑う神に、ニノンはやっぱり国の人々が思う神と現実の神は性格が違うなと思った。

「で、どうだった?無意識のうちに自分をあそこまで憎んでいたと知った感想は」

「…感想、ですか?うーん」

「自分を馬鹿にして、嘲笑して、わざと傷つけるためにお前が忘れようとしていた古傷に塩を塗る。それこそが本当のお前だ。それこそがお前の本心だ。それでもお前はお前を抱きしめ、許して愛すると誓ったな。それが本当に可能だと思うか?」

「それは…」

「長年お前を苛み続けたお前が、お前自身を本当に愛せると?それは本心か?その場限りの嘘ではないのか?嘘でないとして、可能だと思うのか?結局出来ませんでした、なんてオチにならないと言い切れるのか?」

畳み掛けてくる神に、ニノンは笑顔を見せる。

「…多分、ですけど。私はもう大丈夫だと思います」

「それは何故だ?」

にまにま笑う神に、ニノンは目をはっきり見つめて言った。

「神様のお陰です」

「…は?」

神は予想外の言葉に固まる。しかしニノンは気にせず笑顔で続けた。

「神様が無意識の私に…あの子に会わせてくださったからです。そのおかげで私は、私の心の傷を知ることが出来たんです。些細なことかもしれないと思います。けれどたしかに、その些細なことで私はこんなにも傷ついていたのだと知ることが出来ました。ようやく、自分の傷に向き合えたんです」

「…」

神は先程までの上機嫌な様子から一変して、不愉快そうに眉をひそめる。

「私は今まで、自分を無意識に嫌いそれすらも隠していました。結果、無意識の私を苛んでいた。無意識の私には申し訳ないことをしてしまいました。でも、それも今日でおしまい。気付けたのなら、あとは許して愛するだけです」

「…ふーん」

神ははっきりとそう言い切るニノンを見つめる。
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