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011 後妻として
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同行していた筆頭執事のエイベルに契約書を任せ内容を確認させると、両親は満足げに帰られました。あまりに嬉しかったのか、私への挨拶は忘れてしまったご様子で、エイベルだけが、「おめでとうございます」と祝福の言葉を述べてくれました。
そして私は今、アーノルト伯爵様とヨハンと三人で、契約を交わした部屋にてお茶をいただいています。
二年前の非礼を謝罪したところ、アーノルト伯爵様は笑ってこう仰いました。
「ベルティーナ。君が気に病むことではない。これから、よろしく頼むよ」
「はい。アーノルト伯爵様。至らない点が多々あるかと存じますが、精一杯尽くさせていただきますので、よろしくお願いいたします」
「そう畏まらなくてよい。私達は家族になるのだからな」
伯爵の仰る通りです。私はアーノルト伯爵の妻になります。それなのに伯爵様とお呼びし、お気を悪くさせたに違いありません。お優しい伯爵様は笑っていらっしゃいますが、早くも失敗してしまいました。
「失礼いたしました。あの。私はアーノルト伯爵様を何とお呼びしたら良いでしょうか? マルセル=アーノルト様ですので。ま、マルセル様と……」
「それでいこう」
マルセル様は間髪いれずにご快諾してくださいました。
懐の深さに感服いたします。
ですが、ヨハンは飲んでいた紅茶を吹き出して驚いていました。
「ち、父上?」
「いや。ベルティーナにそう呼ばれたら、体の調子が良くなってきた。……気がする」
「そんな奇跡は起こりません。絶対安静をお忘れなく。それから……」
「一週間後に家族だけで婚約式を挙げよう。それまでの間、このままでは駄目か?」
「…………」
何故でしょう。ヨハンとマルセル様が険悪な雰囲気になられました。お互い無機質な表情のまま見つめ合い、ヨハンは根負けしたのか溜め息をついて私へと目を向けました。
「ベルティーナ。父と話があるから、君に用意した部屋で待っていてくれないか? 一通り見て、足りないものがないか確認しておいてくれ」
「わかりました」
ヨハンが目配せすると、控えていたメイドが私を案内をしてくれました。
◇◇
「父上。話が違いますよね」
ベルティーナが部屋を出ていくと、間髪いれずにヨハンは父へ問いただした。
「ああ。本当なら今頃、私はベルティーナにお義父様と呼ばれていた」
「ですよね。ロジエ伯爵の前だけで良かったのですよ。ご自身が婚約者であるフリは」
そして私は今、アーノルト伯爵様とヨハンと三人で、契約を交わした部屋にてお茶をいただいています。
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「ベルティーナ。君が気に病むことではない。これから、よろしく頼むよ」
「はい。アーノルト伯爵様。至らない点が多々あるかと存じますが、精一杯尽くさせていただきますので、よろしくお願いいたします」
「そう畏まらなくてよい。私達は家族になるのだからな」
伯爵の仰る通りです。私はアーノルト伯爵の妻になります。それなのに伯爵様とお呼びし、お気を悪くさせたに違いありません。お優しい伯爵様は笑っていらっしゃいますが、早くも失敗してしまいました。
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「それでいこう」
マルセル様は間髪いれずにご快諾してくださいました。
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ですが、ヨハンは飲んでいた紅茶を吹き出して驚いていました。
「ち、父上?」
「いや。ベルティーナにそう呼ばれたら、体の調子が良くなってきた。……気がする」
「そんな奇跡は起こりません。絶対安静をお忘れなく。それから……」
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「わかりました」
ヨハンが目配せすると、控えていたメイドが私を案内をしてくれました。
◇◇
「父上。話が違いますよね」
ベルティーナが部屋を出ていくと、間髪いれずにヨハンは父へ問いただした。
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