縁談を妹に奪われ続けていたら、プチギレした弟が辺境伯令息と何やら画策し始めた模様です

春乃紅葉@コミカライズ2作品公開中〜

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013 後妻の立場

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 私が案内された部屋は、マルセル様の療養部屋の真上の部屋でした。天蓋付きのベッドに大きな鏡台とクローゼット、キャビネットの上には庭で見た赤い薔薇が飾られています。

「良い香り……」
「お気に入りいただけましたでしょうか?」
「ええ。ありがとう」

 案内してくれた若いメイドは、私の言葉に顔を綻ばせました。ですが、この部屋の家具は新しく、どれも新品に見えます。ヨハンのお母様の部屋ではなかったのでしょうか。

「ヨハン様の命で必要なものは用意いたしました。ご確認いただいて、足りないものなどございましたら何なりと、このマールにお申し付けください。ベルティーナ様の身の回りのお世話は私が担当いたしますので」
「よろしくお願いしますね。マール」
「はい。後程ヨハン様がいらっしゃいますので、屋敷内をご案内してくださいます。あ、クローゼットもご確認くださいませ」
「ええ」

 マールがクローゼットを開くと、中には上質なドレスが並んでいました。母のドレスとは違いデザインも新しく、カーティアとも違い露出も少ない上品なドレスです。

「これは……」
「お気に召しましたか。よろしければ袖を通していただきたいです。サイズの確認をさせてください。こちらのドレスは――」

 マールが言いかけた言葉を止めました。
 部屋に誰かが訪ねてきたからです。ヨハンかと思いましたが、マールが扉を開くと一人のご令嬢が立っていました。

「ごきげんよう。ベルティーナ様」
「あら。シエラじゃない」

 それはヨハンの妹のシエラ=アーノルトでした。
 アルドと同い年の彼女とは、あまりお話しした事がありませんが、アルドからよく話は聞いています。
 第二王子様へ嫁いだフィエラ様とは見た目は似ていますが、性格は正反対で、とても活発なお嬢様だそうです。
 因みに、アルドの初恋はフィエラ様でした。
 学園生活に出会いを求めたのは、初恋の女性が結婚してしまったことも一つの要因だったのかもしれません。

「ベルティーナ様。お部屋は気に入って頂けましたか?」
「ええ。素敵なドレスも用意していただいて。もしかしたらシエラが選んでくれたのかしら?」
「いえ。これは全部お兄様ですわ。あの、私もアルドのようにベルお義姉様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「それは構わないけれど……」

 ヨハンが準備してくれただなんて。
 後でお礼を言わなければなりません。

「駄目ですか? ベルお義姉様に勉強も見ていただきたかったのに……」
「ええ。勿論よ。あ、でも、私はお義姉様ではなくて、義母親になるので」
「は? 義母親ですって!?」

 シエラは驚き、納得がいかないといった表情で声をあげました。私ごときが母親を名乗るなんて、おこがましいにも程があったのでしょう。

「無理に呼ばなくていいのですよ。私は……」

 言いかけた時、開いたままの扉をノックしたヨハンと目が合いました。ムスッとした顔でこちらを見やり、少し機嫌が悪そうです。

「シエラ。ベルティーナ。何を騒いでいるのだ?」
「お兄様っ!? ちょっとよろしいですかっ!」

 部屋に現れたヨハンはシエラに引き摺られるようにして連れていかれました。
 やはり、後妻の立場とは難しい様子です。
 見知った仲であれ、受け入れることは難しいのでしょう。ですが、寛大なマルセル様の期待に応えるべく、私はアーノルト家の一人として尽くしたいと思います。

「あの。ベルティーナ様。もしよろしかったら試着しませんか? ヨハン様も選んだ甲斐があったとお喜びになると思いますので。どれになさいますか?」
「えっと、でしたら……これに」

 マールに言われるまま、私は目の前にあったワンピースを手に取りました。

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