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014 婚約の申し込み(一度目)
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「あの、お兄様。どうしてベルティーナ様が義母親などと仰っているのですか? お兄様はベルティーナ様とご結婚されても良いと仰ったではありませんか! ロジエ伯爵様を欺きアルドのお姉様を助けてくださるのでしょう?」
シエラは俺の部屋に入るなり興奮気味で不満を並べた。
大好きなアルドの力になれると喜んでいたのは知っている。しかし今は俺も苛立ちが抑えられずシエラに構う余裕はなかった。
「落ち着け。ロジエ伯爵との契約は万事上手く運んだのだが、アーノルト伯爵様がダダをこねているのだ。詳細はそちらに問いただしてくれ」
「は? お父様はご乱心かしら?」
「さぁ? 俺もよく分からん。アルドとの約束は果たせるから、心配するな」
「分かりました。お父様にお伺いしてみますわ」
シエラは呆れた様子で俺の部屋を出て行った。
数週間前、シエラはアルドからベルティーナの婚約が妹のカーティアに取られ続けていることを聞いたそうだ。学園でもカーティアの悪い噂を聞いていたことから、どうしてもアルドの力になって欲しいと俺に頼み込んできたのだ。
誰とも結婚する気がないなら、アルドの姉を嫁にもらい助けてやって欲しい、と。
だから、シエラは知らない。
俺が二年前にベルティーナに婚約を申し込んで振られたことを。
いや。あれは恐らく違ったのだ。
俺は、ベルティーナを酷く傷つけてしまった。
ベルティーナは入学当初から常に首席であり続けていた。
家柄も並みで見た目も並み、そして大人しい性格だった彼女は、周囲から孤立していた。
秀才過ぎて話が合わないだとか、生まれ持った天才だとか周囲から妬まれ距離を置かれていたのだ。
でも、俺は知っていた。
彼女は誰よりも読書家で努力家だということを。
みんなベルティーナのことを知りもしないくせに陰口だけは叩く。
そんな悪意を彼女の耳に入れたくなくて守りたくて、俺は次席を理由にずっと彼女の隣を独占した。
ガキみたいに次は勝つだなんてほざきながら。
初めはちょっと警戒していたベルティーナだったが、アルドの話をしたり、二人で課題に取り組む内に笑顔を向けてくれるようになった。思い返せばあの頃が一番幸せで、ずっとあのままの関係でいたかった。
でも卒業と同時に、ベルティーナの両親が婚約者候補を探し始めたとアルドから聞いて、俺はすぐに父を説得して婚約を申し込んだ。
ベルティーナが良い返事をくれると、信じていた。
婚約を相談する両家の席に、あの屑女が現れるまでは。
「まぁ。なんて素敵な方なのかしら。ヨハン様。私、カーティア=ロジエと申します。貴方のような素敵な方と婚約できるなんて、とても嬉しく存じますわ」
シエラは俺の部屋に入るなり興奮気味で不満を並べた。
大好きなアルドの力になれると喜んでいたのは知っている。しかし今は俺も苛立ちが抑えられずシエラに構う余裕はなかった。
「落ち着け。ロジエ伯爵との契約は万事上手く運んだのだが、アーノルト伯爵様がダダをこねているのだ。詳細はそちらに問いただしてくれ」
「は? お父様はご乱心かしら?」
「さぁ? 俺もよく分からん。アルドとの約束は果たせるから、心配するな」
「分かりました。お父様にお伺いしてみますわ」
シエラは呆れた様子で俺の部屋を出て行った。
数週間前、シエラはアルドからベルティーナの婚約が妹のカーティアに取られ続けていることを聞いたそうだ。学園でもカーティアの悪い噂を聞いていたことから、どうしてもアルドの力になって欲しいと俺に頼み込んできたのだ。
誰とも結婚する気がないなら、アルドの姉を嫁にもらい助けてやって欲しい、と。
だから、シエラは知らない。
俺が二年前にベルティーナに婚約を申し込んで振られたことを。
いや。あれは恐らく違ったのだ。
俺は、ベルティーナを酷く傷つけてしまった。
ベルティーナは入学当初から常に首席であり続けていた。
家柄も並みで見た目も並み、そして大人しい性格だった彼女は、周囲から孤立していた。
秀才過ぎて話が合わないだとか、生まれ持った天才だとか周囲から妬まれ距離を置かれていたのだ。
でも、俺は知っていた。
彼女は誰よりも読書家で努力家だということを。
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そんな悪意を彼女の耳に入れたくなくて守りたくて、俺は次席を理由にずっと彼女の隣を独占した。
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初めはちょっと警戒していたベルティーナだったが、アルドの話をしたり、二人で課題に取り組む内に笑顔を向けてくれるようになった。思い返せばあの頃が一番幸せで、ずっとあのままの関係でいたかった。
でも卒業と同時に、ベルティーナの両親が婚約者候補を探し始めたとアルドから聞いて、俺はすぐに父を説得して婚約を申し込んだ。
ベルティーナが良い返事をくれると、信じていた。
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