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6 死がふたりを別つまで
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「ぬうああああぁぁぁぁっ!!」
「!」
キイィィィンッ!
突撃した私の剣を受け流し、夫は愕然として呟いた。
「重い……!」
「余所見すんじゃないわ、よッ!」
「くっ!」
ギィィンッ!
近距離で柄の近くに受けた刃は、先ほどより少しだけ低く鳴いた。
突いて、払って、薙いで、叩き下ろす。
私は命をかけて猛攻撃をしかけた。
「君はッ、私をっ、こっ、殺す気かッ!?」
「流すだけッ!? かかって来なさいよ!!」
「君にッ、できるわけないだろッ!!」
「馬鹿言ってんじゃないわよっ! 戦場では待ったなしでしょッ!!」
「ここは戦場じゃないッ!!」
「私の心はッ、大荒れよッ!! んでやあッ!!」
「サラッ! サラ、落ち着けッ!」
「ぬふわぁッ!!」
「サ」
「でぇえいッ!!」
「ぐっ!」
近距離で見つめ合えば済むと思ったのか、鍔迫り合いに持ち込まれる。
「ふんっ」
「くうっ」
脛を蹴ってやった。
よろめいた首元めがけて突き刺そうとすると、夫は受け身を取りつつくるりと前転して、唖然とした顔を私に向ける。
「なんでそんなに強いんだ!」
「気に入ったって言ったじゃないッ!!」
「待て! わかった! 降参だ!!」
「っ」
降参と言われて、次の攻撃のため振りかぶっていた剣の流れを、ぐっと押し込める。そして夫を睨んだ。
片膝をついて振り返り、夫は私に方手をあげて降参している。
「どういう意味よ!」
「君を置いて行ったりしない」
そして注意深く私を見たまま、持っていた剣も床に下ろし、両手をあげた。
「降伏する?」
「いや」
降参と降伏では微妙に意味が違ってくる。
夫はそこは騙されず、膝を擦って私のほうを向くと手を頭の後ろにやった。
「君を連れて行こう。どこまでも」
「そうよ!」
「ただ、隊は任せない」
「……チッ」
ちょっと期待したのに、早々と夢は打ち砕かれた。
「でも、サラのために甲冑と剣を作ると約束する。馬も用意しよう。サラ、君は私が思い描き、そして期待した以上に強く美しい妻だった。君を連れて行かなければ守れるだろうなんて、私が間違っていた。すまなかった」
「わかればいいのよ」
「君の誇りを傷つけ、侮辱した」
「そう!」
「私たちは結婚式で誓いあった。死がふたりを別つまで慈しみあい、愛しあうと」
「そうよ!」
「だから君と家庭を築き、息子や娘や親や国を守り抜き、共に老いて安らかに眠りにつくためにも」
「ええ!」
「君を私の傍から離さず、戦地に赴く際には私の身辺は君に任せよう。なぜならこの世でいちばん信頼しているのは妻である君だからだ、サラ」
「愛してるわ、オリヴァー」
私は剣を捨て、夫の前に跪いた。
夫は私を強く抱きしめて、熱い、キスをしてくれた。
よかった。
これですべて、収まった。
「!」
キイィィィンッ!
突撃した私の剣を受け流し、夫は愕然として呟いた。
「重い……!」
「余所見すんじゃないわ、よッ!」
「くっ!」
ギィィンッ!
近距離で柄の近くに受けた刃は、先ほどより少しだけ低く鳴いた。
突いて、払って、薙いで、叩き下ろす。
私は命をかけて猛攻撃をしかけた。
「君はッ、私をっ、こっ、殺す気かッ!?」
「流すだけッ!? かかって来なさいよ!!」
「君にッ、できるわけないだろッ!!」
「馬鹿言ってんじゃないわよっ! 戦場では待ったなしでしょッ!!」
「ここは戦場じゃないッ!!」
「私の心はッ、大荒れよッ!! んでやあッ!!」
「サラッ! サラ、落ち着けッ!」
「ぬふわぁッ!!」
「サ」
「でぇえいッ!!」
「ぐっ!」
近距離で見つめ合えば済むと思ったのか、鍔迫り合いに持ち込まれる。
「ふんっ」
「くうっ」
脛を蹴ってやった。
よろめいた首元めがけて突き刺そうとすると、夫は受け身を取りつつくるりと前転して、唖然とした顔を私に向ける。
「なんでそんなに強いんだ!」
「気に入ったって言ったじゃないッ!!」
「待て! わかった! 降参だ!!」
「っ」
降参と言われて、次の攻撃のため振りかぶっていた剣の流れを、ぐっと押し込める。そして夫を睨んだ。
片膝をついて振り返り、夫は私に方手をあげて降参している。
「どういう意味よ!」
「君を置いて行ったりしない」
そして注意深く私を見たまま、持っていた剣も床に下ろし、両手をあげた。
「降伏する?」
「いや」
降参と降伏では微妙に意味が違ってくる。
夫はそこは騙されず、膝を擦って私のほうを向くと手を頭の後ろにやった。
「君を連れて行こう。どこまでも」
「そうよ!」
「ただ、隊は任せない」
「……チッ」
ちょっと期待したのに、早々と夢は打ち砕かれた。
「でも、サラのために甲冑と剣を作ると約束する。馬も用意しよう。サラ、君は私が思い描き、そして期待した以上に強く美しい妻だった。君を連れて行かなければ守れるだろうなんて、私が間違っていた。すまなかった」
「わかればいいのよ」
「君の誇りを傷つけ、侮辱した」
「そう!」
「私たちは結婚式で誓いあった。死がふたりを別つまで慈しみあい、愛しあうと」
「そうよ!」
「だから君と家庭を築き、息子や娘や親や国を守り抜き、共に老いて安らかに眠りにつくためにも」
「ええ!」
「君を私の傍から離さず、戦地に赴く際には私の身辺は君に任せよう。なぜならこの世でいちばん信頼しているのは妻である君だからだ、サラ」
「愛してるわ、オリヴァー」
私は剣を捨て、夫の前に跪いた。
夫は私を強く抱きしめて、熱い、キスをしてくれた。
よかった。
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