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まりたん、と呼ばれて目を開ける。
「あ、まりたん起きた。大丈夫?」
長く眠ったあとのように、すっと目が覚める。長谷の顔の向こうに、見慣れない天井があった。身体が、とてもだるい。長谷がべたべたと頬やおでこを触ってくるけれど、嫌じゃなかった。
「私……」
起き上がろうとすると、掛け布団ごと押さえこまれて動けなくなる。
「覚えてないの? まりたん、忘れ物とりにきて防災センターで倒れたんだよ」
「……」
「すごい熱だったんだから。もう、無理しないでよ」
熱。そうか、だから、おかしな夢を見たのね。
咲良に路地で襲われて、そのあと、ミーチャが駆けつけてくる。まるでヒーローのように。それから空を飛んで、気づいたら彼とキスをしていた。ものすごく身体が痛くて……夢でも、痛みを感じる事もあるのね……彼のキスは魔法のように、私を痛みから解放してくれた。やっぱり、ヒーローみたいに。
さすが、夢ね。役得。
「ここ……」
「劇場の控え室。布団敷いてもらった。もう、お姉さん心配したよ。日高さんに言っとくから、明日、どうしても無理なら休みなよ?」
「でも、風邪じゃないから……」
ぼんやり口にすると、長谷が変な顔をして息をつめた。頭がすっきりしていると思ったけれど、気のせいだったようだ。横になっているはずなのに、眩暈がする。
「そうだね」
「わたし、夢をみたの……」
「うん。もう少し寝てなよ。送ってあげるから」
「でも、はせさん、わたしの……」
家を知らないでしょう?
そう言いたかったのに、やっぱり、瞼がさがってしまって駄目だった。頭を撫でてくれる、長谷の手が優しい。ああ、私は、彼女のこと、とても好きだな。
半分、夢をみているのだろうか。すばるさん、と、ミーチャの声が聞こえた気がした。
おかしいの。
さんなんて、つけないくせに。
「あ、まりたん起きた。大丈夫?」
長く眠ったあとのように、すっと目が覚める。長谷の顔の向こうに、見慣れない天井があった。身体が、とてもだるい。長谷がべたべたと頬やおでこを触ってくるけれど、嫌じゃなかった。
「私……」
起き上がろうとすると、掛け布団ごと押さえこまれて動けなくなる。
「覚えてないの? まりたん、忘れ物とりにきて防災センターで倒れたんだよ」
「……」
「すごい熱だったんだから。もう、無理しないでよ」
熱。そうか、だから、おかしな夢を見たのね。
咲良に路地で襲われて、そのあと、ミーチャが駆けつけてくる。まるでヒーローのように。それから空を飛んで、気づいたら彼とキスをしていた。ものすごく身体が痛くて……夢でも、痛みを感じる事もあるのね……彼のキスは魔法のように、私を痛みから解放してくれた。やっぱり、ヒーローみたいに。
さすが、夢ね。役得。
「ここ……」
「劇場の控え室。布団敷いてもらった。もう、お姉さん心配したよ。日高さんに言っとくから、明日、どうしても無理なら休みなよ?」
「でも、風邪じゃないから……」
ぼんやり口にすると、長谷が変な顔をして息をつめた。頭がすっきりしていると思ったけれど、気のせいだったようだ。横になっているはずなのに、眩暈がする。
「そうだね」
「わたし、夢をみたの……」
「うん。もう少し寝てなよ。送ってあげるから」
「でも、はせさん、わたしの……」
家を知らないでしょう?
そう言いたかったのに、やっぱり、瞼がさがってしまって駄目だった。頭を撫でてくれる、長谷の手が優しい。ああ、私は、彼女のこと、とても好きだな。
半分、夢をみているのだろうか。すばるさん、と、ミーチャの声が聞こえた気がした。
おかしいの。
さんなんて、つけないくせに。
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