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「許してくれ。本当にすまなかったと思っている。愛しているんだゾーイ」
夫のリオンが泣いて縋ってくる。まあ、嘘をついて結婚に至った相手を夫と呼べるかどうかはわからないけど。
「あなたの『愛してる』って嘘でしょう?」
「嘘をついた事は認める。謝るよ。申し訳なかった」
「申し訳なかった? あなた、私が嘘の愛だけで怒ってると思ってるの?」
「ゾーイ」
伸びて来た夫の手を叩き落した。
リオンは傷ついたような顔をしているけれど、正直、呆れる。
「あなたは心優しい兄よ。妹の復讐を代わりにやってあげるんだものね」
「ゾーイ」
「でも根性がひん曲がってるでしょう。仮に、私が本当にラモーナの婚約をぶち壊した〝恋人〟だったとしても、私を口説いて、愛しあって、子供まで作ったそのあとで『君に愛される資格はない。理由はわかっているはずだ』なんてよく言えたわね」
「すまなかった。僕が間違っていた」
「そうよ、あなたは間違えた。復讐の方法も、相手もね」
リオンの妹ラモーナは、かつて侯爵令息カーティス・アーノルドと婚約していた。
ところがカーティスは婚約破棄した上で〝恋人〟と消えた。
そしてラモーナは心に傷を負い、痩せ細り、病に臥せった。
そして今は回復し、公爵夫人ラモーナ・コーエンとなって幸せに暮らしている。
そう、ラモーナは立ち直り、幸せに暮らしているのだ。
根に持っているのは兄のリオンだけ。つまり私の夫。
「ゾーイ、僕は愚かだった。そうだ、愚かなんだ」
「ええ」
「君の言う事が正しいよ。だから、必死で謝ってる」
「謝って済むと思ってる? 謝ってどうしたいの? 元に戻るとして、どういう状態を〝元通り〟って考えてるわけ? 私たちの関係は全部あなたの〝嘘〟なんでしょう?」
「ゾーイ」
リオンが頭を抱えた。
妹を愛しているのは素晴らしい事だ。
さて、では筋違いな復讐をする事は?
最悪。最低。
カーティスの〝恋人〟はゾーイ・ウォレス、リオンはそう思っていた。私の旧姓もゾーイ・ウォレス。
──君は愛されるに値しない女だ。そうだろう?
──えっ?
──だからカーティス・アーノルドにも棄てられた。僕なら愛すると思ったか?
──は? カーティスって誰?
──白を切るつもりか? 君が破談にした婚約から目を逸らしたいだけだろう!
──あなた、なんの話をしてるの?
私はカーティスなんて会った事もなかった。
当然だ。ラモーナの婚約をぶち壊した〝恋人〟はジョーイ・ウォレスという男だったのだから。
人違い。酷い過ちだ。
夫のリオンが泣いて縋ってくる。まあ、嘘をついて結婚に至った相手を夫と呼べるかどうかはわからないけど。
「あなたの『愛してる』って嘘でしょう?」
「嘘をついた事は認める。謝るよ。申し訳なかった」
「申し訳なかった? あなた、私が嘘の愛だけで怒ってると思ってるの?」
「ゾーイ」
伸びて来た夫の手を叩き落した。
リオンは傷ついたような顔をしているけれど、正直、呆れる。
「あなたは心優しい兄よ。妹の復讐を代わりにやってあげるんだものね」
「ゾーイ」
「でも根性がひん曲がってるでしょう。仮に、私が本当にラモーナの婚約をぶち壊した〝恋人〟だったとしても、私を口説いて、愛しあって、子供まで作ったそのあとで『君に愛される資格はない。理由はわかっているはずだ』なんてよく言えたわね」
「すまなかった。僕が間違っていた」
「そうよ、あなたは間違えた。復讐の方法も、相手もね」
リオンの妹ラモーナは、かつて侯爵令息カーティス・アーノルドと婚約していた。
ところがカーティスは婚約破棄した上で〝恋人〟と消えた。
そしてラモーナは心に傷を負い、痩せ細り、病に臥せった。
そして今は回復し、公爵夫人ラモーナ・コーエンとなって幸せに暮らしている。
そう、ラモーナは立ち直り、幸せに暮らしているのだ。
根に持っているのは兄のリオンだけ。つまり私の夫。
「ゾーイ、僕は愚かだった。そうだ、愚かなんだ」
「ええ」
「君の言う事が正しいよ。だから、必死で謝ってる」
「謝って済むと思ってる? 謝ってどうしたいの? 元に戻るとして、どういう状態を〝元通り〟って考えてるわけ? 私たちの関係は全部あなたの〝嘘〟なんでしょう?」
「ゾーイ」
リオンが頭を抱えた。
妹を愛しているのは素晴らしい事だ。
さて、では筋違いな復讐をする事は?
最悪。最低。
カーティスの〝恋人〟はゾーイ・ウォレス、リオンはそう思っていた。私の旧姓もゾーイ・ウォレス。
──君は愛されるに値しない女だ。そうだろう?
──えっ?
──だからカーティス・アーノルドにも棄てられた。僕なら愛すると思ったか?
──は? カーティスって誰?
──白を切るつもりか? 君が破談にした婚約から目を逸らしたいだけだろう!
──あなた、なんの話をしてるの?
私はカーティスなんて会った事もなかった。
当然だ。ラモーナの婚約をぶち壊した〝恋人〟はジョーイ・ウォレスという男だったのだから。
人違い。酷い過ちだ。
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