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「頭に血が上っていたんだ。冷静じゃなかった」
「そう、4年も? ずいぶん頑丈な頭ね。伯爵やめて鍋にでもなったら?」
ラモーナは私とリオンの婚約が決まって結婚するまでは妊婦だった。その後は肥立ちが悪くて、良くなったと思ったら今度は赤ん坊が肺炎にかかった。
今はふたりとも健康だ。
私はクリストファーを産んだ。
だからラモーナは、私たちが幸せなのだと安心したそうだ。
その幸せを、リオンがぶち壊した。
「言っておくけどラモーナに言わないでね、あなたが馬鹿な復讐したって事」
「言えないよ」
「あなたの自尊心のためじゃないわ! ラモーナが繊細すぎるからよ! あなたが勘違いして馬鹿な事やったって知ってまた食事が喉を通らなくなったら困るでしょっ! 妊婦なのよ!!」
「あ……そっ、そうだね」
心が弱いのは血筋かもしれない。
涙を止めたくて仕方ないのか、目頭を押さえて悶絶している。
「あなたがやった事は最低だわ。どこでどういう暮らしをしているかは知らないけど、社交界にはもうカーティスの居場所はないのよ。充分なの。あなたが個人的な憂さ晴らしをするなら誰も止めなかったかもしれないけど、これはない」
「ゾーイ」
「子供を作ったのよ?」
「愛していたからだ!」
「お得意の嘘ね。何度も聞いた」
「途中からは本当に愛していた」
「愛に本当も嘘もないわ! 真実の愛しか口にしちゃいけないの! 夫婦なんだから!!」
涙が零れてしまった。
私まで傷ついていたなんて、明白の事実だとしても、彼の前では強い自分を保ちたかったのに。
「ゾーイ」
「触らないで!」
リオンの手を叩き落して壁際に逃げた。
幸い、私の涙はスンと止まった。
「君を愛していた。今も愛している」
「あっそう」
「だから辛かった。自分のしてしまった事を後悔したんだ。だから苦しかった」
「私には関係ない事よ」
「君の事だ。君に償いをしたいよ」
「必要ないわ。何もしてほしくない。あなたにはもう何もしてほしくないの」
「息も? 死んでほしいならそうするよ」
「はぁっ!?」
本当に軟弱な男。
現実的な話がまるでできない。
「あなた父親なのよ? そして領主だわ。愚か者だからって責任を放棄していい事にはならない。そうね、あなたにしてほしい事はあるわ」
「なに?」
「いい父親として生きる事よ。親として、領主として、見本を見せて生きるの。今度からは感情で動く前に考えて。あなたがどうしたいかじゃなく、クリストファーの父親はどうするべきか、考えて」
「わかった。必ず、そうする」
「私も、母親として正しく生きる。いいわね?」
「ああ」
「じゃあもう話しかけないで」
「ゾーイ!」
「そう、4年も? ずいぶん頑丈な頭ね。伯爵やめて鍋にでもなったら?」
ラモーナは私とリオンの婚約が決まって結婚するまでは妊婦だった。その後は肥立ちが悪くて、良くなったと思ったら今度は赤ん坊が肺炎にかかった。
今はふたりとも健康だ。
私はクリストファーを産んだ。
だからラモーナは、私たちが幸せなのだと安心したそうだ。
その幸せを、リオンがぶち壊した。
「言っておくけどラモーナに言わないでね、あなたが馬鹿な復讐したって事」
「言えないよ」
「あなたの自尊心のためじゃないわ! ラモーナが繊細すぎるからよ! あなたが勘違いして馬鹿な事やったって知ってまた食事が喉を通らなくなったら困るでしょっ! 妊婦なのよ!!」
「あ……そっ、そうだね」
心が弱いのは血筋かもしれない。
涙を止めたくて仕方ないのか、目頭を押さえて悶絶している。
「あなたがやった事は最低だわ。どこでどういう暮らしをしているかは知らないけど、社交界にはもうカーティスの居場所はないのよ。充分なの。あなたが個人的な憂さ晴らしをするなら誰も止めなかったかもしれないけど、これはない」
「ゾーイ」
「子供を作ったのよ?」
「愛していたからだ!」
「お得意の嘘ね。何度も聞いた」
「途中からは本当に愛していた」
「愛に本当も嘘もないわ! 真実の愛しか口にしちゃいけないの! 夫婦なんだから!!」
涙が零れてしまった。
私まで傷ついていたなんて、明白の事実だとしても、彼の前では強い自分を保ちたかったのに。
「ゾーイ」
「触らないで!」
リオンの手を叩き落して壁際に逃げた。
幸い、私の涙はスンと止まった。
「君を愛していた。今も愛している」
「あっそう」
「だから辛かった。自分のしてしまった事を後悔したんだ。だから苦しかった」
「私には関係ない事よ」
「君の事だ。君に償いをしたいよ」
「必要ないわ。何もしてほしくない。あなたにはもう何もしてほしくないの」
「息も? 死んでほしいならそうするよ」
「はぁっ!?」
本当に軟弱な男。
現実的な話がまるでできない。
「あなた父親なのよ? そして領主だわ。愚か者だからって責任を放棄していい事にはならない。そうね、あなたにしてほしい事はあるわ」
「なに?」
「いい父親として生きる事よ。親として、領主として、見本を見せて生きるの。今度からは感情で動く前に考えて。あなたがどうしたいかじゃなく、クリストファーの父親はどうするべきか、考えて」
「わかった。必ず、そうする」
「私も、母親として正しく生きる。いいわね?」
「ああ」
「じゃあもう話しかけないで」
「ゾーイ!」
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