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9 レディ誕生秘話
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「カリーナ?」
「!」
兄がホイホイ現れた。
まあ、名ばかりでも当主だから? いて当たり前だけど!?
ついでに言うとエセ黒光り伯爵になり果てているからキモい!
吐き気がする!!
「この人でなし!!」
「なっ……」
ポッ。
「ん?」
「くそっ」
兄が頬を染め、超絶イケメン版グリフィスが悪態をつく。
まあ、気持ちはわかる。
「グリフィス……」
見破ってるし。
超絶イケメン版グリフィスがズンズン歩くので、あっという間に兄と接近。
兄はテカテカヌルヌルの様相でモジモジと壁に寄った。
死ねばいいのに。
「グリフィス、妹に触らないでくれ。妹は……エドのものだ」
「違うわよ!」
蹴り飛ばしたいけど触りたくない兄に向って、私は叫んだ。
「それより」
「!」
え?
なんか、流されたんだけど!?
「素敵なグリフィスに戻ってくれたんだね。やっと想いが通じた」
「へ?」
なっ、なに!?
どどどっ、どういう事!?
兄がクネクネしてるんだけど!?
なんで照れてるの!?
「!」
鳥肌マックスよ。
地獄だわ……
「ふざけるな。カリーナのためだ」
「グリフィスぅ。もう、い・じ・わ・るっ」
兄が、キモい。
ゲシッ。
無言のまま、グリフィスが兄を蹴った。
「あんっ」
「ひっ」
「見るな!」
グリフィスにほぼ抱えられる形で、私は廊下を駆け抜けた。
「あっ、待って! 行かないでグリフィス!!」
「黙れ! お前の愛人が失神してるぞ! 助けに行かないと死ぬぞ!」
「えっ!? やっ、そんな……っ、どうしよう……っ!?」
兄のナヨッとした声と、正規版グリフィスに胸を掻き乱される私。
目が回る……なんて思っていたら、階段の踊り場で足が止まった。
「ふぅ。嫌な奴に会った」
「グ、グリフィス……? なんなの……?」
訳ありみたいだけど。
というか、私以外みんな訳ありみたいなんだけど。
泣きそう。
「あぁん、泣かないでぇ。私の愛しいカリーナァ」
「グリフィス……っ」
散々キモがってきたグリフィスの女言葉に、全力で癒された。
私は心のままに彼に抱きついて、シャツに悍ましい顔型を残した。青いアイシャドウと真っ赤な口紅とピンクのチークの合わせ技。濃いのよ。ギトギト。
「……」
涙も引っ込んだ。
ムンディ……どんな趣味なの。
思わずグリフィスも凝視しちゃったわよね。
「ん?」
「いえ。よく私なんか助けたなって思って」
「愛しのカリーナだからな」
「……顔を、洗いたい」
そういうわけで、井戸で顔を洗った。
グリフィスが化粧の落とし方にも詳しいので、助かった。
「あなたがレディになってしまったのは、兄のせいなの?」
顔を拭かれながら、私は尋ねた。
甲斐甲斐しく私の顔や生え際を拭うグリフィスは、ただの面倒見のいい超絶イケメンだった。
「まあ、そうだな」
ドッと気が重くなる。
過去のキモい発言を思い返して、申し訳ない気持ちでいっぱい。
「俺にとってはふたりとも大事な幼馴染だったんだけど、ある頃からエミールがあんな感じになって、まあキモくて」
「ごめんなさい」
「カリーナはなにも悪くない。悪いのは……悪いと言うか、キモいのはエミールだし。いいんだよ別に、あいつが男を愛しても。ただ好きとかどうとかって問題じゃないだろ、あのキモさは」
「ええ。愛って言うか、変態」
「キモいんだよ」
「キモいわ」
兄がムンディ伯爵色に染められたのかと思ったけど、違った。
同類に媚びを売って、援助という尤もらしい関係を結んだのだ。
「それに俺は物心ついた頃からずっとカリーナが好きだった。愛してたんだ」
──僕を愛してくれないなんて酷い!
──後悔させてやる! 後から僕に縋っても無駄なんだからね!!
──絶対に結婚なんかさせてやるもんか!
──どんな手を使ったって、僕から君を奪ったカリーナを罰してやる!!
──父はもう妹の結婚相手を決めているんだからね!!
──姦通罪は死刑だからねっ!!
「……え?」
いろいろ衝撃的過ぎて、言葉にならない。
「だからまあ、苦肉の策だったわけだ。エミールは女に興味ないし、女になればたとえカリーナが他の男と結婚させられても親友として傍にくっついていられるし? 今思えば浅はかだったけど。でも、実際ずっと一緒にいられた。いい思い出になったよ」
「……」
そうかもしれないんだけど……
なんか、微妙。
「!」
兄がホイホイ現れた。
まあ、名ばかりでも当主だから? いて当たり前だけど!?
ついでに言うとエセ黒光り伯爵になり果てているからキモい!
吐き気がする!!
「この人でなし!!」
「なっ……」
ポッ。
「ん?」
「くそっ」
兄が頬を染め、超絶イケメン版グリフィスが悪態をつく。
まあ、気持ちはわかる。
「グリフィス……」
見破ってるし。
超絶イケメン版グリフィスがズンズン歩くので、あっという間に兄と接近。
兄はテカテカヌルヌルの様相でモジモジと壁に寄った。
死ねばいいのに。
「グリフィス、妹に触らないでくれ。妹は……エドのものだ」
「違うわよ!」
蹴り飛ばしたいけど触りたくない兄に向って、私は叫んだ。
「それより」
「!」
え?
なんか、流されたんだけど!?
「素敵なグリフィスに戻ってくれたんだね。やっと想いが通じた」
「へ?」
なっ、なに!?
どどどっ、どういう事!?
兄がクネクネしてるんだけど!?
なんで照れてるの!?
「!」
鳥肌マックスよ。
地獄だわ……
「ふざけるな。カリーナのためだ」
「グリフィスぅ。もう、い・じ・わ・るっ」
兄が、キモい。
ゲシッ。
無言のまま、グリフィスが兄を蹴った。
「あんっ」
「ひっ」
「見るな!」
グリフィスにほぼ抱えられる形で、私は廊下を駆け抜けた。
「あっ、待って! 行かないでグリフィス!!」
「黙れ! お前の愛人が失神してるぞ! 助けに行かないと死ぬぞ!」
「えっ!? やっ、そんな……っ、どうしよう……っ!?」
兄のナヨッとした声と、正規版グリフィスに胸を掻き乱される私。
目が回る……なんて思っていたら、階段の踊り場で足が止まった。
「ふぅ。嫌な奴に会った」
「グ、グリフィス……? なんなの……?」
訳ありみたいだけど。
というか、私以外みんな訳ありみたいなんだけど。
泣きそう。
「あぁん、泣かないでぇ。私の愛しいカリーナァ」
「グリフィス……っ」
散々キモがってきたグリフィスの女言葉に、全力で癒された。
私は心のままに彼に抱きついて、シャツに悍ましい顔型を残した。青いアイシャドウと真っ赤な口紅とピンクのチークの合わせ技。濃いのよ。ギトギト。
「……」
涙も引っ込んだ。
ムンディ……どんな趣味なの。
思わずグリフィスも凝視しちゃったわよね。
「ん?」
「いえ。よく私なんか助けたなって思って」
「愛しのカリーナだからな」
「……顔を、洗いたい」
そういうわけで、井戸で顔を洗った。
グリフィスが化粧の落とし方にも詳しいので、助かった。
「あなたがレディになってしまったのは、兄のせいなの?」
顔を拭かれながら、私は尋ねた。
甲斐甲斐しく私の顔や生え際を拭うグリフィスは、ただの面倒見のいい超絶イケメンだった。
「まあ、そうだな」
ドッと気が重くなる。
過去のキモい発言を思い返して、申し訳ない気持ちでいっぱい。
「俺にとってはふたりとも大事な幼馴染だったんだけど、ある頃からエミールがあんな感じになって、まあキモくて」
「ごめんなさい」
「カリーナはなにも悪くない。悪いのは……悪いと言うか、キモいのはエミールだし。いいんだよ別に、あいつが男を愛しても。ただ好きとかどうとかって問題じゃないだろ、あのキモさは」
「ええ。愛って言うか、変態」
「キモいんだよ」
「キモいわ」
兄がムンディ伯爵色に染められたのかと思ったけど、違った。
同類に媚びを売って、援助という尤もらしい関係を結んだのだ。
「それに俺は物心ついた頃からずっとカリーナが好きだった。愛してたんだ」
──僕を愛してくれないなんて酷い!
──後悔させてやる! 後から僕に縋っても無駄なんだからね!!
──絶対に結婚なんかさせてやるもんか!
──どんな手を使ったって、僕から君を奪ったカリーナを罰してやる!!
──父はもう妹の結婚相手を決めているんだからね!!
──姦通罪は死刑だからねっ!!
「……え?」
いろいろ衝撃的過ぎて、言葉にならない。
「だからまあ、苦肉の策だったわけだ。エミールは女に興味ないし、女になればたとえカリーナが他の男と結婚させられても親友として傍にくっついていられるし? 今思えば浅はかだったけど。でも、実際ずっと一緒にいられた。いい思い出になったよ」
「……」
そうかもしれないんだけど……
なんか、微妙。
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