神々にもてあそばれて転生したら神様扱いされました。

咲狛洋々

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SS 新しい家族

孤独

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 オブテューレの麓にあるクラリス家。周囲に民家は無く、川と街道を挟めば山ばかり。そんなポツンと一軒家には庭があった。苔を敷き詰めた地面、石畳で道を作り中央にはバーベキューが出来る釜戸やウッドデッキ。そして川を見下ろせる位置にはブランコがあった。

「……」

 川のせせらぎを聞きながら、コルは物思いに耽っている。

 最近思い悩む事が多くなった。
教会で信徒等や、子供達に神学を教えているが、それもつまらなくなった。毎日に不満があるわけでは無い。愛すると決めたカムイと都の居る生活。ビクトラやサリザンド達が居るのにも不満がある訳ではない。なのに、何故か虚無感が襲う。

「我はここにおっても良いものか」

 元々、我は孤独を司る朱雀星、四神の一柱。だが伴侶が欲しくて務めを捨てた。確かにカムイと都は伴侶になってくれた。なのに、なぜか今の方が遠くに彼奴等を感じるのだ。

 都に子供が出来た。兎に梟、龍の子だと言う。羨ましいかと聞かれたらそうでも無い事に気が付いた。何故彼奴等はあぁも子が欲しいのか。我もそう望んでいたのに、何故か彼奴等の輪の中には入れなんだ。

「何しとらすね」

「何だ」

「何だってぇ、そらこっちのセリフだで」

「特に何もしとらん」

「……居場所が見つけらんねぇだか」

「どうであろうな」

「んだねぇ、オラもカムイ様と都様の番になったけんど……お呼びはあんまかかんねぇし、オラの部屋に来てもすんぐ都様は寝ちまうし、カムイ様は抱かしてくれねぇだしな」

「そんな事はどうでも良い」

「そーけ?それが1番分かりやすく心が満たされるんでねーか?」

「この地に生きて有限を知った今、心満たす物が共寝ではな」

「んだら旅に出てみるのはどーけ」

「旅か」

「知らねぇ事知るのはワクワクすんでね。旅はそんの最たるもんでねーの?」

 何処へ行く?都を取り戻す為にこの世界をほぼ回った。特に戻ってみたい場所も無かったし、したいと思う事もなかった。

「都様達と離れられるんけ?」

「分からん」

「んだらもう家族になっとるんだね」

 何故そうなるのだ。別に家族で無いとは思ってはおらんが、前程の執着心がある様にも思えぬ。それはやはりカムイに捨てられた時に引かれた、あの線を簡単には消せぬが故なのだろう。都はいつも我を愛でてはくれるが、サリザンドやルーナの様にその心を預けてはくれぬ。

 あぁ、我には何も無いのだな。
神の使命で彼奴等を守り、愛すると義務付けられていた気もする。
だが、一度平穏に身を委ね、その枷がなくなると……この身に何の意味があるのだろうかと思う。

「何処に行きたい訳でも、彼奴等と離れたい訳でも無い。だが分からぬのだ……何故我はここに居るのだろうか」

「永遠の謎だでね。そげな事、悩むだけ無駄だぁね」

「其方は悩みが少なそうだな」

「うんにゃあ、山程あんべ?オラは都様が好きだ。けども……同じ想いは返して貰えねぇ。意地で番になったけんど、オラがいねぇ方がみんなは幸せなんでねーかね?そげんことば思ってしまうんだね」

「そうか」

「オラだって……都様の1番になりてぇ。サリザンド殿みてぇにかっこよく心は奪えねぇし、ルーナみてぇに不安を紛らわすて差し上げる事も出来ねぇ。ペット枠はずっとだでね。そうそう変えらんねぇのも分かってるだす」

「その心の澱を、其方はどうやって消すのだ」

「……畑ば耕すんだす。何も考えんとただ鍬持って土起こすて、作物育てて。えぇ土になっだなぁって思うと、愛されんでもオラは幸せだなぁって思うんだす。けんど、家に帰っと辛かなって思う事はあるだ……流石に今回はちーとキツかね」

 ソレスは我の方がまだ愛されている、求められている。羨ましいと言った。しかし、我にはまだ求める何かがある此奴の方が羨ましいと思うのだ。

「もー御二方を愛すてはねぇのけ」

「愛……なのかさえも分からん。2人が笑えば良かったなと思いはするが、ふと……そこに居ても我は1人なのではと思うのだ」

「やっぱり旅にでるすかねぇんでねぇか?多分、コルは何処に居たって、誰と居たってその孤独は癒せねぇよ?」

「何故孤独を感じるのだろうな」

「オラはその答え分かっけど、自分で見つけねぇと納得できねぇよ?オラにもそげな時があったけど、旅すて……寂すくなって。そん時初めて分かるんだす。ずぶんの帰る場所が何処で、本当に孤独だったのかどうかって」

 旅か。神魂があればな、他の世界を見にも行けた。
この期に及んでこんな後悔をするとはな。

「都に子が生まれたら……出て行こう」

「そこは旅に行くって言わんと、カムイ様なんかはコルを殺すてしまうかもしんねーよ?」

「……そうか」

 風に靡く髪、その行き先を眺めながら一房切り落としてその風に流してやった。地に落ちるでも、木々に遮られるでも無く空高く登り、あっという間に何処かへ消えた。それもまた命の様で、我は流されるままここでは無い何処かに行ってみたいと思った。






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