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13. 黒幕…?②〜3年前〜
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ヒルデの話を聞いていて、またまた気づきたくなかったことに気づいたトーマス。
「うん?」
「どうかされましたか?」
「いや、お前その場にいなかったよな?」
「そうですよ」
「なんで話しの内容知ってるんだ?」
「天井裏でこっそりと」
うふふ……とかわいらしく笑うが、やっていることは全然かわいくない。相手は天下の大魔術師様、自分には彼女の行動を理解するのは不可能なのだろう。
「まあ……とりあえず、そのイバラ様とやらの企みでお前は追い出されたようなものだな」
「まあ、そういうことですね」
ああ、そういえば……となにかに気づき話を続ける。
「その次の日なんですけど……」
~~~~~~
王の執務室にリカルドの絶叫がこだました。
「なんだこれは!?」
彼が握りしめているのはヒルデが書いた手紙だった。一言で言えば、もう王宮には戻らないという内容。
「まあ、出てったってことですよね?」
淡々と答えるのはキール将軍。
「なっ……なっ……」
なかなか言葉にならない。その隙をついて宰相が言葉を発する。
「まあいろいろと危惧することもありますが……正直助かりましたね」
その言葉にリカルドとキールの視線がすっと宰相に向かう。
「ヒルデ将軍は強すぎます。我が国はヒルデ将軍がいなくてもキール将軍のおかげで他国と対抗する力があります。強すぎるものを持つ国は狙われる可能性も高くなります。それにヒルデ様はどこかに寝返る方ではありませんし……他国に戦力が渡ってしまうわけでもありません。戦争が終わった今、平民出の将軍とは高位貴族から邪険にされるものです。そして彼らは排除のために動き出す力があります。更にそれは内戦へとつながる恐れもあります」
確かに、その通りなのだが……。国を救ってきた英雄に向かってそんなことを言うのはどうなのだろうか。宰相とてヒルデのことは嫌いではない。しかし、国のことを第一に考えなくてはならない。
~~~~~~
「みたいなこと言ってたんですよ」
「……また、天井裏で聞いたのか?」
ニコリとするヒルデ。それは肯定なのか。肯定だろう。
「……それで、何を言いたいんだ?」
「いや、あのときの陛下の顔面白かったなー……と」
「………………」
「ふふっ……冗談ですよ。要するに私はこの国の中枢を担う人間から見てもう不要なものだということですよ」
「………結構苦労人なんだな………」
「産まれたときといい、なんで捨てられるんですかね~?」
そんなことをあっけらかんと明るく言われても……。才ある代わりに与えられた苦難なのだろうか。
「まあいい。なんか考えるのが面倒になっちまった……。とりあえず、この家のこと頼むぞ」
「承知いたしました」
それはそれは優雅に礼をするヒルデ。
「それにしても……天才魔術師且つ隠密みたいなことするお前がそんな女に黙ってやられるなんて……………ハッ!」
黙ってやられる?いや、彼女は気づいていたのだ。自分のせいですまないといったのは、イバラが自分を狙って事件を起こしたことを知っていたのに何もしなかったことに対してか。いや、彼女は計画段階から知っていたに違いない。だって、こいつはヒルデだ。じゃあ、なぜ王宮を出てきた?
主君が斬りつけられるのを見逃してまで、平民から成り上がった地位を捨てて得た自由はなんのため?
ソローッと恐る恐るヒルデの顔を見る。
目が合うと口角が上がりニヤーッと悪い顔に変わった。
「!!!?」
「知りたいですか?」
ブンブンッと頭を何度も横にふるトーマス。これ以上何も知りたくない。自分の手に負えないことを聞いて良いことなど何もないのだ。
今度は何も話すことなく、部屋を去っていくヒルデだった。
「うん?」
「どうかされましたか?」
「いや、お前その場にいなかったよな?」
「そうですよ」
「なんで話しの内容知ってるんだ?」
「天井裏でこっそりと」
うふふ……とかわいらしく笑うが、やっていることは全然かわいくない。相手は天下の大魔術師様、自分には彼女の行動を理解するのは不可能なのだろう。
「まあ……とりあえず、そのイバラ様とやらの企みでお前は追い出されたようなものだな」
「まあ、そういうことですね」
ああ、そういえば……となにかに気づき話を続ける。
「その次の日なんですけど……」
~~~~~~
王の執務室にリカルドの絶叫がこだました。
「なんだこれは!?」
彼が握りしめているのはヒルデが書いた手紙だった。一言で言えば、もう王宮には戻らないという内容。
「まあ、出てったってことですよね?」
淡々と答えるのはキール将軍。
「なっ……なっ……」
なかなか言葉にならない。その隙をついて宰相が言葉を発する。
「まあいろいろと危惧することもありますが……正直助かりましたね」
その言葉にリカルドとキールの視線がすっと宰相に向かう。
「ヒルデ将軍は強すぎます。我が国はヒルデ将軍がいなくてもキール将軍のおかげで他国と対抗する力があります。強すぎるものを持つ国は狙われる可能性も高くなります。それにヒルデ様はどこかに寝返る方ではありませんし……他国に戦力が渡ってしまうわけでもありません。戦争が終わった今、平民出の将軍とは高位貴族から邪険にされるものです。そして彼らは排除のために動き出す力があります。更にそれは内戦へとつながる恐れもあります」
確かに、その通りなのだが……。国を救ってきた英雄に向かってそんなことを言うのはどうなのだろうか。宰相とてヒルデのことは嫌いではない。しかし、国のことを第一に考えなくてはならない。
~~~~~~
「みたいなこと言ってたんですよ」
「……また、天井裏で聞いたのか?」
ニコリとするヒルデ。それは肯定なのか。肯定だろう。
「……それで、何を言いたいんだ?」
「いや、あのときの陛下の顔面白かったなー……と」
「………………」
「ふふっ……冗談ですよ。要するに私はこの国の中枢を担う人間から見てもう不要なものだということですよ」
「………結構苦労人なんだな………」
「産まれたときといい、なんで捨てられるんですかね~?」
そんなことをあっけらかんと明るく言われても……。才ある代わりに与えられた苦難なのだろうか。
「まあいい。なんか考えるのが面倒になっちまった……。とりあえず、この家のこと頼むぞ」
「承知いたしました」
それはそれは優雅に礼をするヒルデ。
「それにしても……天才魔術師且つ隠密みたいなことするお前がそんな女に黙ってやられるなんて……………ハッ!」
黙ってやられる?いや、彼女は気づいていたのだ。自分のせいですまないといったのは、イバラが自分を狙って事件を起こしたことを知っていたのに何もしなかったことに対してか。いや、彼女は計画段階から知っていたに違いない。だって、こいつはヒルデだ。じゃあ、なぜ王宮を出てきた?
主君が斬りつけられるのを見逃してまで、平民から成り上がった地位を捨てて得た自由はなんのため?
ソローッと恐る恐るヒルデの顔を見る。
目が合うと口角が上がりニヤーッと悪い顔に変わった。
「!!!?」
「知りたいですか?」
ブンブンッと頭を何度も横にふるトーマス。これ以上何も知りたくない。自分の手に負えないことを聞いて良いことなど何もないのだ。
今度は何も話すことなく、部屋を去っていくヒルデだった。
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