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17. 目撃情報
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冒頭に出てきた兵士たちは今日もヒルデをあちこち探し回っていた。人通りが多いところを探そうと商店街を目指して歩いている先輩兵士。そんな先輩のやる気を削ぐような声がした。
「せんぱ~い。喉が乾いたので休憩しましょうよ~」
真夏の炎天下は非常に暑い。汗が衣服に張り付いて気持ちが悪い。
「子供じゃないんだから、勝手に飲め………」
先輩兵士も暑さとヒルデが見つからない腹立たしさからイライラしていた。
『この伯爵領で見つからなかったら他国に行ったってことか、どこかで見落としたってことだ。他国の線も踏まえつつ、国内を一から探さなきゃならなくなる。気を引き締めて探せ!だらけてる場合じゃねぇぞ!!』
捜索隊のボスもイライラしているのか……いつも以上に厳つい顔を見ながら今朝も皆仲良く説教を聞いたところだった。
「別にここで見つからなくても、国内のどこかにいますって。ヒルデ将軍…いや元将軍がこの国捨てるわけないじゃないですか~。そう思いません?先輩」
「皇帝は元将軍を切り捨てたけどな」
いまだにヒルデ本人が出奔したことをしらない兵士たちはただ皇帝にクビにされ放逐されたと思っていた。後輩兵士は商店街につくと可愛らしい小物屋さんを覗いていた女性に声をかけた。本日はフードを外し、爽やかさ満点でいた為逃げられなかった。二人はちゃんと隠密らしい服装は時に隠密に適しないこともあると学んだのだった。
「すみませ~ん!この辺でめっちゃつやっつやの黒髪にアメジストを目にはめちゃったよって感じの紫色の目をした女神みたいな女性見ませんでしたか?あっ!ちなみにスタイル抜群です!」
「お前その軽々しい変な聞き方やめろよ………」
「いやいや、こう聞くのが一番はやいじゃないですか。黒髪、紫色の目の美人さんなんて世の中にたくさんいるんですから。髪てかってますよ~目、宝石ですよ~女神様みたいな美人ですよ~って方がわかりやすいでしょ、先輩」
あまり上品な言い方ではないが、なかなか特徴を捉えた的確な表現ではある。かしこまって聞いたって逃げられるだけだとこの前思ってしまったのか、最近はこんな軽々しい聞き方ばかりしている。だがやはり王に仕える軍人たるものそれでは…と説教するため口を開く。
「お前、でもな………」
「えっ!?」
「「ん?」」
声をかけた女性は否定でも肯定でもなく驚きの声を上げた。二人は知ってるのか?と女性をまじまじと見た。赤毛のそれなりにお高そうな簡易ドレスを着たそれなりの美女。格好を見るに恐らく貴族だろう女性。注目の視線を向けられた女性は焦りだした。
「えっ!?なんでそんなに見るんですか?」
「いや……知ってるっぽそうなんで……」
「はあ?知らないわよ!」
「でも……」
「知らないったら知らないわよ!」
「はあ……でも…………」
赤毛の女性は尋常じゃない汗をかいている。いや、知ってるだろ……。
「知らないわよ!…………ていうか、どちら様?なんでその女性のことを探してるのよ?」
「失礼しました。我々は王宮の兵士で王命により元将軍ヒルデ嬢を探しております。その理由は我々にも預かり知らぬこと」
「はあ?」
彼女の視線が呆れたものに変わった。そんな顔をされても……主君の命に従うのがそんなに呆れられることなのか。
「「それで見たことあるんですか?」」
「……っ!知らないって言ってるでしょ!!!」
女性は走り去っていった。二人は追いかけようと足を踏み出したが、中年の男性に声をかけられて止まった。
「おーい、兄ちゃん。その人なら見たことあるよ」
「「はっ?」」
二人が驚いている間に通りすがりのおじさんは、周りにいた人にも呼びかけた。
「なあお前らも見たことあるだろ。あそこの筋肉男爵のところのメイドさんのことだよな」
男爵の爵位を持った人間のことを筋肉男爵と呼んだら普通であれば不敬罪で処罰される場合もある。トーマス本人がそう呼ばれても気にならないこと、領地もなし、金もない。平民に混ざって労働していることも多いためみんな親しみを込めてあだ名として使っている。
「ああ、めっちゃべっぴんな姉ちゃんだろ」
「すっごい働き者よね。こっちにいたと思ったら、あっちにいるし」
「俺も見たぞ」
「私も」
「ちょ、ちょっと待ってください!隊長呼んでくるんで!」
周りにいた人たちがざわざわみんな俺も、私もしっていると騒ぎだしたことで、やっと驚きから意識を覚ました兵士2人。後輩兵士が慌てて隊長を呼びに走っていった。
「えっ…何この目撃証言。今までの苦労ってなんだったんだ………」
走り去っていく後輩の背を見ながら、思わず呟いてしまう先輩だった。
「せんぱ~い。喉が乾いたので休憩しましょうよ~」
真夏の炎天下は非常に暑い。汗が衣服に張り付いて気持ちが悪い。
「子供じゃないんだから、勝手に飲め………」
先輩兵士も暑さとヒルデが見つからない腹立たしさからイライラしていた。
『この伯爵領で見つからなかったら他国に行ったってことか、どこかで見落としたってことだ。他国の線も踏まえつつ、国内を一から探さなきゃならなくなる。気を引き締めて探せ!だらけてる場合じゃねぇぞ!!』
捜索隊のボスもイライラしているのか……いつも以上に厳つい顔を見ながら今朝も皆仲良く説教を聞いたところだった。
「別にここで見つからなくても、国内のどこかにいますって。ヒルデ将軍…いや元将軍がこの国捨てるわけないじゃないですか~。そう思いません?先輩」
「皇帝は元将軍を切り捨てたけどな」
いまだにヒルデ本人が出奔したことをしらない兵士たちはただ皇帝にクビにされ放逐されたと思っていた。後輩兵士は商店街につくと可愛らしい小物屋さんを覗いていた女性に声をかけた。本日はフードを外し、爽やかさ満点でいた為逃げられなかった。二人はちゃんと隠密らしい服装は時に隠密に適しないこともあると学んだのだった。
「すみませ~ん!この辺でめっちゃつやっつやの黒髪にアメジストを目にはめちゃったよって感じの紫色の目をした女神みたいな女性見ませんでしたか?あっ!ちなみにスタイル抜群です!」
「お前その軽々しい変な聞き方やめろよ………」
「いやいや、こう聞くのが一番はやいじゃないですか。黒髪、紫色の目の美人さんなんて世の中にたくさんいるんですから。髪てかってますよ~目、宝石ですよ~女神様みたいな美人ですよ~って方がわかりやすいでしょ、先輩」
あまり上品な言い方ではないが、なかなか特徴を捉えた的確な表現ではある。かしこまって聞いたって逃げられるだけだとこの前思ってしまったのか、最近はこんな軽々しい聞き方ばかりしている。だがやはり王に仕える軍人たるものそれでは…と説教するため口を開く。
「お前、でもな………」
「えっ!?」
「「ん?」」
声をかけた女性は否定でも肯定でもなく驚きの声を上げた。二人は知ってるのか?と女性をまじまじと見た。赤毛のそれなりにお高そうな簡易ドレスを着たそれなりの美女。格好を見るに恐らく貴族だろう女性。注目の視線を向けられた女性は焦りだした。
「えっ!?なんでそんなに見るんですか?」
「いや……知ってるっぽそうなんで……」
「はあ?知らないわよ!」
「でも……」
「知らないったら知らないわよ!」
「はあ……でも…………」
赤毛の女性は尋常じゃない汗をかいている。いや、知ってるだろ……。
「知らないわよ!…………ていうか、どちら様?なんでその女性のことを探してるのよ?」
「失礼しました。我々は王宮の兵士で王命により元将軍ヒルデ嬢を探しております。その理由は我々にも預かり知らぬこと」
「はあ?」
彼女の視線が呆れたものに変わった。そんな顔をされても……主君の命に従うのがそんなに呆れられることなのか。
「「それで見たことあるんですか?」」
「……っ!知らないって言ってるでしょ!!!」
女性は走り去っていった。二人は追いかけようと足を踏み出したが、中年の男性に声をかけられて止まった。
「おーい、兄ちゃん。その人なら見たことあるよ」
「「はっ?」」
二人が驚いている間に通りすがりのおじさんは、周りにいた人にも呼びかけた。
「なあお前らも見たことあるだろ。あそこの筋肉男爵のところのメイドさんのことだよな」
男爵の爵位を持った人間のことを筋肉男爵と呼んだら普通であれば不敬罪で処罰される場合もある。トーマス本人がそう呼ばれても気にならないこと、領地もなし、金もない。平民に混ざって労働していることも多いためみんな親しみを込めてあだ名として使っている。
「ああ、めっちゃべっぴんな姉ちゃんだろ」
「すっごい働き者よね。こっちにいたと思ったら、あっちにいるし」
「俺も見たぞ」
「私も」
「ちょ、ちょっと待ってください!隊長呼んでくるんで!」
周りにいた人たちがざわざわみんな俺も、私もしっていると騒ぎだしたことで、やっと驚きから意識を覚ました兵士2人。後輩兵士が慌てて隊長を呼びに走っていった。
「えっ…何この目撃証言。今までの苦労ってなんだったんだ………」
走り去っていく後輩の背を見ながら、思わず呟いてしまう先輩だった。
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