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揺れる乳
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隣国バルテフォレスから親善大使として聖女が訪問すると国中に報せが広まったのは初夏の頃である。
永く聖女発現に恵まれなかったアンクタン国は大変な騒ぎとなった。
希少で神聖な存在である聖女がやって来ると知った王侯貴族はもちろんのこと、国民らは大いに歓迎ムードに染まる。
国を挙げての歓迎ぶりは異常なほどだった、ベアトリスという聖女の姿にあやかろうと王都は上りと旗を掲げた。
聖女の御髪のオレンジ色と瞳の緑色の二色がそこかしこに溢れた。
「すごーいまるで祭り騒ぎね、この国の民は聖女が余程好きなのねぇ」
豪奢な馬車に乗って手を振るベアトリスは彼らの歓待ぶりを見て上機嫌である。目立つことが大好きな彼女は車窓を大きく開けて愛嬌を振り撒く。
「下品です、聖女様。身を乗り出すなどはしたない」
世話係の司祭の一人が諫める言葉を発したがベアトリスは聞こえないふりをして観衆へ投げキスまでする始末だ。
3人の司祭たちは同時に額に手を当てて「なんてこと」と頭を振って嘆いてみせた。
やがて馬車は王都を一周してからアンクタン城へと入って行った。そこには数時間前から待ち兼ねていた王族が勢揃いして聖女の到着を待っていた。
「初めまして皆様、ベアトリス・ニコリッシュですわぁ!仲良くしてねぇウフ♪」
元の身分は平民で聖女に任命されてからは公爵家の養子になったという、学びきれていないのか、やる気がないのか褒めらた言動ではない。
白装束に真っ赤な宝石を胸元に揺らす彼女の様子は、娼婦のほうが似合う気がするとアンクタンの王妃に印象付けた。側にいた王女も”聖女の選考基準は胸の大きさなのか”と勘繰る。
何かの仕草をする度にベアトリスの胸がタユンタユンと上下左右に揺れる。
嫌悪する女子側とは真逆の反応をしたのは王と王子たちだ、彼らの視線は胸元にばかり集中していた。素直すぎる反応に王妃は頭痛を覚える。
「ところで、聖女様といえば神の祝福を受けると銀髪に変化すると記憶しておりますが、ベアトリス様は違いますのね?原因は?」
一番に気になっていた疑問をぶつけた王妃であるが聖女はキョトリとして「わかんなぁい」と答えた。
すると彼女に侍っていた司祭が慌てて弁解する。
「今世の聖女様は特別なのです!天真爛漫な彼女はこのような御髪で定着したのでございます」
「そうそう、それだわ!忘れてたぁん」
どうにも怪しい印象が増えたが、王と王子らは「そんな些末な問題はどうでもいい」と王妃を除ける。
「どうかね聖女様、わが息子アンドレと自慢の庭園でお茶など、もちろん余も同席したい」
「あら?」
「私がアンドレです!どうかご一緒にお茶をそして親睦を深めましょう!」
食いつくような勢いで聖女に近寄る二人は邪な感情を隠しきれていない、王妃は窘めようとしたが聖女は嬉しそうに同意して彼らの腕に絡まった。
「嬉しいわぁ異国のお茶は初めてよ」
「うむ、きっと気に入って貰えるぞ。我が国は茶葉の生産量が大陸一だからな!」
聖女を真ん中に挟み、キャッキャッウフフとハシャグ声をさせて彼らは玉座の間から去ってしまった。
後に残された王妃と王女、そして宰相が茫然と立ち尽くしていた。
「なんて下品なの!」
永く聖女発現に恵まれなかったアンクタン国は大変な騒ぎとなった。
希少で神聖な存在である聖女がやって来ると知った王侯貴族はもちろんのこと、国民らは大いに歓迎ムードに染まる。
国を挙げての歓迎ぶりは異常なほどだった、ベアトリスという聖女の姿にあやかろうと王都は上りと旗を掲げた。
聖女の御髪のオレンジ色と瞳の緑色の二色がそこかしこに溢れた。
「すごーいまるで祭り騒ぎね、この国の民は聖女が余程好きなのねぇ」
豪奢な馬車に乗って手を振るベアトリスは彼らの歓待ぶりを見て上機嫌である。目立つことが大好きな彼女は車窓を大きく開けて愛嬌を振り撒く。
「下品です、聖女様。身を乗り出すなどはしたない」
世話係の司祭の一人が諫める言葉を発したがベアトリスは聞こえないふりをして観衆へ投げキスまでする始末だ。
3人の司祭たちは同時に額に手を当てて「なんてこと」と頭を振って嘆いてみせた。
やがて馬車は王都を一周してからアンクタン城へと入って行った。そこには数時間前から待ち兼ねていた王族が勢揃いして聖女の到着を待っていた。
「初めまして皆様、ベアトリス・ニコリッシュですわぁ!仲良くしてねぇウフ♪」
元の身分は平民で聖女に任命されてからは公爵家の養子になったという、学びきれていないのか、やる気がないのか褒めらた言動ではない。
白装束に真っ赤な宝石を胸元に揺らす彼女の様子は、娼婦のほうが似合う気がするとアンクタンの王妃に印象付けた。側にいた王女も”聖女の選考基準は胸の大きさなのか”と勘繰る。
何かの仕草をする度にベアトリスの胸がタユンタユンと上下左右に揺れる。
嫌悪する女子側とは真逆の反応をしたのは王と王子たちだ、彼らの視線は胸元にばかり集中していた。素直すぎる反応に王妃は頭痛を覚える。
「ところで、聖女様といえば神の祝福を受けると銀髪に変化すると記憶しておりますが、ベアトリス様は違いますのね?原因は?」
一番に気になっていた疑問をぶつけた王妃であるが聖女はキョトリとして「わかんなぁい」と答えた。
すると彼女に侍っていた司祭が慌てて弁解する。
「今世の聖女様は特別なのです!天真爛漫な彼女はこのような御髪で定着したのでございます」
「そうそう、それだわ!忘れてたぁん」
どうにも怪しい印象が増えたが、王と王子らは「そんな些末な問題はどうでもいい」と王妃を除ける。
「どうかね聖女様、わが息子アンドレと自慢の庭園でお茶など、もちろん余も同席したい」
「あら?」
「私がアンドレです!どうかご一緒にお茶をそして親睦を深めましょう!」
食いつくような勢いで聖女に近寄る二人は邪な感情を隠しきれていない、王妃は窘めようとしたが聖女は嬉しそうに同意して彼らの腕に絡まった。
「嬉しいわぁ異国のお茶は初めてよ」
「うむ、きっと気に入って貰えるぞ。我が国は茶葉の生産量が大陸一だからな!」
聖女を真ん中に挟み、キャッキャッウフフとハシャグ声をさせて彼らは玉座の間から去ってしまった。
後に残された王妃と王女、そして宰相が茫然と立ち尽くしていた。
「なんて下品なの!」
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