玉座のぬくもり

そらうみ

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それから王子は、毎日時間が空いた時には俺の居る部屋に通う様になっていた。

王子が来る前はいつも部屋に香りが漂い、そしてニコラスがそっと俺に近づきベッドの上で俺を慣らした。

最初はニコラスに抵抗して拒否をしたが、レジェス王子は俺が慣らされていなくても気にもせず、王子が俺を慣らす事もなく、無理矢理犯してきた。

その時の痛みはひどく、それから俺は素直にニコラスの前戯を受け入れる様になっていた。


ニコラスは手に何かの薬をつけ、俺の中を解す以外のことはしなかった。
きっとこれも王子に指示されているのだろう。


何度目かの王子に犯されている時、俺は王子に訊ねた。

「おうじっ…どうしって…っ…おれが…んっんっ…おれを…よんだんだっ…ぁぁっ!」

俺は出来る限り喘ぎ声を出したくないので普段は声を抑えていたが、今この時は王子に声をかけた。

「んー…?あー…なぜかって…ふっ…んっ…そんなの…君が、愛する人だからだ…っつっ。」

そのまま激しく打ち続けられ、そして激しく痙攣し、脱力した。

「…ふっー…。クレト、意識はまだあるな?

私は生まれてからずっとこの城に、この国に縛られている。
王の元に生まれてしまったのだからそれは仕方ない。
しかし、それなら王の宿命や責任を取る一方で、一つだけ私が欲しいものを手に入れようとしたんだ。
私は国中の事を知っている。国中を調べ探し尽くし、見つけたのがクレト、君なんだよ。
私はクレトを愛しているし、今のように私の全てを、何も考えず本能のままぶつけたいんだ。
でもそうすると、クレトが私を愛してくれないのは分かっている。
でも、自分を抑えてクレトに愛してもらうより、私がクレトを愛する方を選んだんだ。」

そういって王子は俺の首筋に強く噛み付いた。

「いっ…っつつ!!!」

今や俺の体は、王子から受けたもので埋め尽くされていた。

結局、俺を選んだ理由は分からなかった。
そして王子は、俺からの愛を望んでもいないのだ。

俺はもう、王子にされるがままになるしかないのか…。


俺が空な目で王子を見ていると、王子は手元で何かを指に塗っていた。

「愛されなくても良いとは言ったが、たまには求められてもみたい。
クレト、力を抜くんだ。」

王子が何か塗りつけた指を、俺の中へと擦り付けてくる。

「んぅ、うっ、っ、っ…。」

俺は自分の手で口を抑える。

いつもならここで、王子から口を封じないよう邪魔が入るのだが、今は何かを塗りつけるのに集中していた。

「っ、っ…っっつ…んんっ!?」

突然、俺の中が熱くなる。そして、だんだんと内側が痺れてきた。

「うっ…うっ…んんっ…ううっ…。」

俺は両手を口から頭の上に移動させシーツを掴み、全身をねじりながらよがってしまっていた。

「あぁ…熱い…あっ…苦しい…。」

俺の中の全てが、感じる場所になってしまっている。
王子はすでに指を抜いていたが、そんな俺の様子をじっと観察していた。

「あぁっ…熱い…苦しいっ…んんっ…我慢…出来ない…。王子…っつ早く、いつものようにっっつ!!!」

このままでは頭がおかしくなると思った。
とにかく早くこの状態から解放されたい。

「いい感じだね。あまり頻繁に使うのは良くないが。
…今回はこれくらいにして次回はもっと焦らしてやろう。」

そう言った王子は、微笑みながら俺の中へと入ってくる。

俺は必死に王子の性器を、俺の中の至る所へ擦り付けるかのように自分から腰を動かした。
両足も王子の腰に絡めて掴み、もう快楽を追い求めることしか考えていなかった。

王子はずっと笑顔のまま、初めはゆっくりと大きく、そして徐々に動きを早め、
最後は思いっきり奥へと精液を吐き出していた。




それから王子と何度か達した後、王子は脱力している俺に口づけをしてきた。

「クレト…君は愛する者との口づけをした事があるかい?」

俺は王子を見つめ、目を逸らした。
王子はきっと知っていて俺に聞いている。

「ふふっ、愛する者との口づけは、頭まで痺れるんだよ。
ぜひクレトにも知ってもらいたい。」




王子が部屋から退出し、今はニコラスが俺の体を清めてくれていた。

俺はその間ずっとニコラスを見つめ続けていたが、ニコラスが俺から離れそうになると袖を掴み呼び止めた。

「ニコラス…俺に…口づけしてほしい…。」

ニコラスが驚いた表情で俺を見つめた。

俺も、何故そんな事を強請ってしまったのか分からない。

俺はニコラスを愛していたのだろうか?
先ほどの薬の効果が残っていたのだろうか?
王子以外を知りたくなったのだろうか?

ニコラスはしばらく俺を見つめて動かなかったが、やがて袖を掴んだままの俺の手を取り話しかけてきた。

「いつか…いつか私があなたの唇に口づけできるその時まで、どうか待っていてください。
今の私ではあなたを守れません…。私はあなたに口づけ出来るよう最善を尽くします。
そしてそれが叶うまで、私はずっと、あなたのお側にいます。」

そしてニコラスは俺に顔を近づけ、優しく俺の頬にキスをした。



ニコラスが部屋を出た後、俺は静かに泣いていた。

もう二度と、こんな風に泣きたくない…。

俺は今までとは全く違う涙を、1人静かに流していた。




静まり返った謁見の間で、玉座にレジェス王子が座っていた。
そしてその足元には長髪の人物が床に座り込み、王子の方膝へ頭を寄せていた。

謁見の間には、今は2人しかしない。

「…私は…いつまで試されるのでしょうか?」

王子はゆっくりと彼に顔を近づけ、片手で相手の顎を持ち上げ視線を合わせた。

「わたしがクレトを愛し続ける限りだ。」

王子はそう言うとさらに顔を近づけ、頬に軽くキスをした。

それから王子はゆっくり立ち上がり、何も言わずその場を離れた。

王子が去ったその場所には、今は1人の人物しかいない。



その人物は玉座に

王子が残した温もりを求めて

そっと片頬を近づけた。
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