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転生 始まりの街

勧誘

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門の外が騒がしかったためが、ザワザワと人がコソコソと喋っており、視線が気持ち悪く再びフードを目深く被ると認識阻害のスキルを使い認知する場所や背格好を誤魔化した。

街の人は騒ぎもあったがホワーフォオウルがまた現れ主人らしき人を拝もうとしただけだ。
エインズワースが北の門に足を運んだのもその情報が詰所に寄せられたので、あの時の少女が来てるのではないかと思ったからだ。

まさか無理に使役し邪悪なものとして槍をつきつけているとは思わず眩暈を起こしかけた。
そして何よりその主人の少女が成人済みだとは思わず余計に眩暈がした。

騎士団の詰所に着き扉を開けて中に入るエインズワースとマリ。

「おう、エインズワース外の様子はどうだった?」

マリとしては初めましての男性がエインズワースに声をかけてきた。

「隊長、それが先日の少女を邪悪なものと決めつけて聞き耳を持たずに槍を突きつけてまして….」

「なんだと?ホワーフォオウルを連れてるから十中八九その子だろうが」

驚いたように立ち上がると詰め寄り出て行こうとした。

「どこに行こうとしてるのですか?彼女ならここにいますよ」

「は?どこにいるんだよ?」

「え?彼女ならここに……ってあれ?」

後ろからついてくているはずの小柄な少女マリがおらず、キョロキョロと辺りを探す。

姿が見当たらない。まさか逸れたのかと顔を青く始めるエインズワースだったがマリの声が聞こえた。

「あの、私ならここにいます……」

不安げな声がエインズワースと隊長の間から聞こえて、いなかったはずのマリがいた。

「うおっ!」

「すみません、視線が気になったので認識阻害を使ってました」

「逸れてなくて良かったです。素晴らしい技量ですね」

フードをとりながら突然現れたマリに驚き、仰け反った隊長に対しエインズワースは頷き、マリのスキルの技量を素直に誉めた。

「ありがとうございます?」

「なんで疑問系なんだよ」

「立ち話もなんですし、どうぞお座りください」

なぜ誉められたかわからずも誉めてもらったので感謝を述べたマリだったが疑問形だったため突っ込まれた。

椅子を勧められたのはいいが空いている場所がなくどうしたものかと悩んでいたが二人と同じ格好をした騎士が立ち上がり席を譲る。

どうしたものかとエインズワースを見上げるも頷くだけなので素直に座る。
そこに暖かい紅茶が置かれ、お話しする大勢になった。

「まずは部下達が申し訳ございませんでした」

また謝罪をされ困惑しながら首を振った。

「こちらの不手際ではありますが、マリさんの能力を詳しく知りたいのです。本来なら個人の情報を大勢の中提示するのは憚れるものなのですが……」

「なにか、ご事情があるみたいですね。」

「お察しが早くて助かります。貴方の詳しい情報は外部に漏れぬようしっかり守ります。あのような事が起きたばかりなので、信用に値しないとは存じませんが、ご提示ください」

悪目立ちのしたくないマリは素直に応じる事にした。何か妙な事が起きれば抗議しようと心に決めた。

小さく頷いたマリに安堵しながら、水晶玉を用意した。

「これは、名前、種族やスキルなど貴方に関するものすべてがわかるものです。先程のように手を置いてください」

言われるまま、手を置くと水晶玉から光の線が放射されプロジェクターのように文字が壁に映し出された。

名前 マリ  年齢 16歳

種族 人族 

職業 魔法使い

性別 女性

出身国 アークセルシュ王国

体力 1600
魔力    15000

魔法適正
属性 水魔法10  氷魔法10  空間魔法10

スキル 短剣3 投擲2 認識阻害5 自己回復力2 暗視 気配察知2 鑑定3 裁縫3 速読2

その他 従魔ホワーフォオウル ネェージュ
    不老


マリが初めて確認した時と同じ状態でスキルに数字が追加されていた。

「空間魔法!?」

「魔法属性3つとも10!?」

「え?!子供だと思ってた」

「魔力量すごい量……だな」

あちこちで驚愕の声が上がっていて、マリの頭の中はクエッションマークで埋め尽くされた。

「なるほど、それで二人を邪悪なものと判断したのか…」

「ええ、そのようです。彼女が怒って何処か行かなくて本当によかった」

「お前が俺や団長や副団長に判断を仰ぐ事なく謹慎行きを命じた理由がわかった」

ちらりとマリと部屋の奥にある鉄の扉に目を向けた。

「あの、私何か問題でも……」

もしかして、勧誘されたりしないよね……

マリは落ち着かない気持ちのまま訳もわからず自分に問題があったのではないかと質問したが二人は首を振った。

「いいや、君は悪くない。全てはこちらの問題だ」

突然知らない声が聞こえてピクリと肩を揺らしながら立ち上がり反射的に、短剣に手を伸ばしたが声をかけてきた男性は手で制し帯剣していた剣を床に置いた。

「私はアークセルシュ王国騎士団ソグム支部の団長ヨハン・クリストンと申します。我々騎士団は貴方に害をなす事は致しませんのでお座りいただきたい」

「あの、そのすみません」

赤面しながら座ったマリにククッと喉奥で笑うとエインズワースと入れ替わるように目の前に座る。

「君は優れた魔法使いだ。王立魔術団へ入団する事が可能だ。こちらで推薦状を出すこともできるし、安定した収入も得ることができる。どうだろう?」

魔力が強いことで何かに勧誘されるとは思った。だけど自由に気ままにまったりと生活がしたい。煩わしいのは嫌いだ。

私は国の機関に縛られたくない。拠点は作っても自由に飛んでいたい……もし断る事ができるのなら…….

「あの…その…名誉ある事だとは思います。でも私は自由にまったりと生きていきたいんです。だから……すみません、お断りします」

机に頭がつくぐらいに下げるマリに、予想していたのかふっと笑ったクリストンは頭を上げさせた。

「個人の自由だから謝らなくていい。君は枠にはまらない人間とは思ってはいた」

「え??」

彼の言葉に今度はマリが驚かせられた。ここに連れてこられたのも詳しく提示させられたのも勧誘して国のものにしようと考えてのことだと思っていた。

クリストンから出た言葉は意外でしかなかった。

「君は短剣を使うだろう??」

「そうですが」

魔法なしで倒せない魔物もいると聞いた。自由に生きていくと決めているからパーティーなど組む仲間のために動かなければならなくなる。そうすれば自由度が減る。

だから女神に言われて短剣を選び倒せる手段を増やした。

「普通は魔力が多いとそれに固執し他を覚えようとはしないからな」

「…なるほど、でも、魔法だけじゃ倒せない相手もいますよね」

「ああ、魔力や威力が高ければそんなの覆せると思っている連中だ」

「じゃあ、なんで勧誘を?」

「魔力や剣に長けたものを見つけたら勧誘するようになっている。断るものは自由を好み冒険者や旅人になる人が多い。君のことは申し訳ないが国王陛下とソグムの領主には報告しなければならない」

小説や漫画でよくあることだ。この時点で目立っている。ネェージュもレア生物だそれを連れてる時点で目立つ。

「こればっかりは避けられないかなー」

ボソリと呟いた言葉を聞いたクリストンやエインズワースは苦笑いをした。

「私は目立ちたくありません。ネェージュを連れてる時点で意味はないかもしれません。でも、私は自由がいいです。目立たないこと、無理に干渉しないことを約束してくださるのなら構いません」

「ああ、わかった。有益者として国王陛下とへの目通りはあると思うが、君の意思は尊重されるから安心してくれ、もし何かあればこちらでも対処できるし。提案もする」

そう言うと何故か頭を撫でられてしまった
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