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私の変な幼馴染
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「ごめん、ベルローズ! ぼ、僕、アレクサンドル王子のこと、好きになっちゃったんだーっ!」
私には少し変な幼馴染がいる。侯爵家の嫡男、イヴァン・グレイズ。
私達は母親同士が親友ということもあり、物心ついた頃からお互いの家で遊んでいた。
そんな幼馴染が私に恋を打ち明けたのは、学園に入学して1年程経った13歳の頃だった。
サラサラの銀髪に、サファイアのようなパッチリした瞳。
もしかしたら、彼は私より美人かもしれない。
そんな彼が、私の生まれた時からの婚約者である、この国の第2王子、アレクサンドル様を好きであると告白してきたのである。
イヴァンとは、10歳まではお互いの家を行き来するなど、家族ぐるみの付き合いをしていた。
私は幼少の頃より、どうも人に自分の気持ちを素直に述べるのが苦手であった。
例えば、貴族の子供同士での交流のお茶会で、テーブルに2種類のケーキが1つずつ置かれている。イチゴのケーキとブルーベリーのケーキ、どちらが食べたいか聞かれたとしよう。
私ならこう答える。
「イチゴのケーキ、食べてあげても良くてよ」
本当は「私、イチゴのケーキが食べたいわ」と言いたいのに、口から出てくるのは、なぜか婉曲したそんな表現。
こんな言い方しかできないので、もちろん、周りには傲慢だとか、我儘だとか、よく誤解される。
もちろん、親しい友達ができるはずもなく、周りからは距離を置かれ、遠巻きに見られることが多かった。
そんな私をいつも助けてくれるのが、イヴァンだった。
「ローズは、イチゴケーキを食べたいんだよね!」
ツンツン答えた私の後に、いつもニコニコ説明してくれる。
イヴァンは私の性格や言葉の表現をよく理解してくれていて、幼い頃からまるで通訳のように、私の気持ちを上手に説明してくれていた。
ちょっと素直になれない私の性格をよく理解してくれているし、話は合うし、イヴァンと一緒にいるととても居心地が良くて、楽しかった。
もしかしたら、ほのかな恋心を抱いていたかもしれない。なるべく意識しないようにしていたけど……。
11歳の誕生日を前に、私達は会うのを止めた。
なぜなら、私は第2王子のアレクサンドル様の婚約者だから。
幼馴染とはいえ、いつまでも異性の友人と一緒にいる訳にはいかないでしょ?
―――そして、12歳の春、学園で私達は再会した。
クラスは違ったので、見かけたら会釈する程度の付き合いだったけど、その頃はまだ普通だったと思う。
しかし、この13歳の愛の叫びの後、彼はすっかり変わってしまった。
「ローズ、ローズ、見て! このお菓子、とても美味しいだけじゃなく、見た目も繊細で、すごく可愛いでしょ? アレクサンドル様にプレゼントしようと思うんだけど、どうかしら?」
あれから3年。私達は16歳になった。
この語尾にハートマークが付きそうな喋り方をしているのは、イヴァンである。
彼はあれから、どんどん女性化している。
話し方も仕草もだ。
学園では制服着用だし、服装こそ男性だが、長く伸ばした美しい銀の髪は、肩の位置で緩やかに結われ、前側に垂らしている。
なんだかとても優美な雰囲気を醸し出している。
あれから、私とイヴァンの関係は、女友達のソレになった。
あの告白の後、私はイヴァンのアレクサンドル様への秘められた恋を応援することにした。
ちょうど男同士の恋愛をテーマにした恋愛小説を読んでいた影響もあったのかもしれない。
アレクサンドル様のことは、パートナーとしては尊敬しているけど、政略結婚だし、別に恋愛感情はない。
だから、別にイヴァンがそんなに王子が好きなら、陰ながら応援してあげようと思ったのだ。
……イヴァンは私の初恋でもあるので、少し微妙な気持ちではあるが。
「あら、ベルローズ様! イヴァン様! こんにちは!」
我が婚約者のアレクサンドル様に、べったり腕を絡ませて、にこやかに挨拶してきたのは、男爵令嬢のソフィア。
愛妾希望なのか、入学以来、ずっとアレクサンドル様に付き纏っているが、アレクサンドル様も満更ではない様子。
もしかしたら、もうデキているのかもしれない。
「御機嫌よう、ソフィア様」
私が淑女の礼で答えようとすると、イヴァンが口を挟んできた。
「ちょっと、アンタ! アタシのアレクサンドル様に、何ベタついてんの! 不愉快なんですけど!」
「別にベルローズ様は何も言わないし、部外者のイヴァン様は私達の関係に口を挟まないでくださいっ! いつも思っていたんですけど、イヴァン様は邪魔なんですっ。私とアレクは真実の愛で結ばれているんだから! ねぇ、アレク?」
ソフィアが上目遣いでアレクサンドル様を見つめる。
しかし、その笑顔は引き攣っている。
「イヴァン、お前が有能なのは私も認めているし、将来の側近候補として、期待している。頼むから、昔のまともな男であった頃のお前に戻ってくれ。その気持ち悪い話し方は、どうにも受け付けられん」
気持ち悪いと言われ、イヴァンが傷付いた顔をする。
仕方ないので、親友である私がイヴァンの援護をすることにする。
「何を言ってるんですか、アレクサンドル様! イヴァンは本気で殿下のことをお慕いしているんです! それなのにそんな言い方、酷いではないですか! アレクサンドル様に男色の趣向がなくて、気持ちに応えられないのは仕方ありませんが、乙女心を否定するなんて、イヴァンがかわいそうです! 想うくらい、許してあげてくださいませ!」
「ベルローズまで、何を言ってるんだ! 私には全く理解できない…… 。ソフィア、行くぞ」
そう言って、王子とソフィアは逃げるように去って行った。
「イヴァン、平気?」
傷付くイヴァンの顔を見るのは、辛かった。
まだまだこの世界は、男同士の恋愛への理解はない。
「ローズは優しいね。もう少しだから、大丈夫よ。あと1ヶ月の辛抱だから」
もう少し? 何がだろう?
―――1ヶ月後といえば、卒業パーティ?
私には少し変な幼馴染がいる。侯爵家の嫡男、イヴァン・グレイズ。
私達は母親同士が親友ということもあり、物心ついた頃からお互いの家で遊んでいた。
そんな幼馴染が私に恋を打ち明けたのは、学園に入学して1年程経った13歳の頃だった。
サラサラの銀髪に、サファイアのようなパッチリした瞳。
もしかしたら、彼は私より美人かもしれない。
そんな彼が、私の生まれた時からの婚約者である、この国の第2王子、アレクサンドル様を好きであると告白してきたのである。
イヴァンとは、10歳まではお互いの家を行き来するなど、家族ぐるみの付き合いをしていた。
私は幼少の頃より、どうも人に自分の気持ちを素直に述べるのが苦手であった。
例えば、貴族の子供同士での交流のお茶会で、テーブルに2種類のケーキが1つずつ置かれている。イチゴのケーキとブルーベリーのケーキ、どちらが食べたいか聞かれたとしよう。
私ならこう答える。
「イチゴのケーキ、食べてあげても良くてよ」
本当は「私、イチゴのケーキが食べたいわ」と言いたいのに、口から出てくるのは、なぜか婉曲したそんな表現。
こんな言い方しかできないので、もちろん、周りには傲慢だとか、我儘だとか、よく誤解される。
もちろん、親しい友達ができるはずもなく、周りからは距離を置かれ、遠巻きに見られることが多かった。
そんな私をいつも助けてくれるのが、イヴァンだった。
「ローズは、イチゴケーキを食べたいんだよね!」
ツンツン答えた私の後に、いつもニコニコ説明してくれる。
イヴァンは私の性格や言葉の表現をよく理解してくれていて、幼い頃からまるで通訳のように、私の気持ちを上手に説明してくれていた。
ちょっと素直になれない私の性格をよく理解してくれているし、話は合うし、イヴァンと一緒にいるととても居心地が良くて、楽しかった。
もしかしたら、ほのかな恋心を抱いていたかもしれない。なるべく意識しないようにしていたけど……。
11歳の誕生日を前に、私達は会うのを止めた。
なぜなら、私は第2王子のアレクサンドル様の婚約者だから。
幼馴染とはいえ、いつまでも異性の友人と一緒にいる訳にはいかないでしょ?
―――そして、12歳の春、学園で私達は再会した。
クラスは違ったので、見かけたら会釈する程度の付き合いだったけど、その頃はまだ普通だったと思う。
しかし、この13歳の愛の叫びの後、彼はすっかり変わってしまった。
「ローズ、ローズ、見て! このお菓子、とても美味しいだけじゃなく、見た目も繊細で、すごく可愛いでしょ? アレクサンドル様にプレゼントしようと思うんだけど、どうかしら?」
あれから3年。私達は16歳になった。
この語尾にハートマークが付きそうな喋り方をしているのは、イヴァンである。
彼はあれから、どんどん女性化している。
話し方も仕草もだ。
学園では制服着用だし、服装こそ男性だが、長く伸ばした美しい銀の髪は、肩の位置で緩やかに結われ、前側に垂らしている。
なんだかとても優美な雰囲気を醸し出している。
あれから、私とイヴァンの関係は、女友達のソレになった。
あの告白の後、私はイヴァンのアレクサンドル様への秘められた恋を応援することにした。
ちょうど男同士の恋愛をテーマにした恋愛小説を読んでいた影響もあったのかもしれない。
アレクサンドル様のことは、パートナーとしては尊敬しているけど、政略結婚だし、別に恋愛感情はない。
だから、別にイヴァンがそんなに王子が好きなら、陰ながら応援してあげようと思ったのだ。
……イヴァンは私の初恋でもあるので、少し微妙な気持ちではあるが。
「あら、ベルローズ様! イヴァン様! こんにちは!」
我が婚約者のアレクサンドル様に、べったり腕を絡ませて、にこやかに挨拶してきたのは、男爵令嬢のソフィア。
愛妾希望なのか、入学以来、ずっとアレクサンドル様に付き纏っているが、アレクサンドル様も満更ではない様子。
もしかしたら、もうデキているのかもしれない。
「御機嫌よう、ソフィア様」
私が淑女の礼で答えようとすると、イヴァンが口を挟んできた。
「ちょっと、アンタ! アタシのアレクサンドル様に、何ベタついてんの! 不愉快なんですけど!」
「別にベルローズ様は何も言わないし、部外者のイヴァン様は私達の関係に口を挟まないでくださいっ! いつも思っていたんですけど、イヴァン様は邪魔なんですっ。私とアレクは真実の愛で結ばれているんだから! ねぇ、アレク?」
ソフィアが上目遣いでアレクサンドル様を見つめる。
しかし、その笑顔は引き攣っている。
「イヴァン、お前が有能なのは私も認めているし、将来の側近候補として、期待している。頼むから、昔のまともな男であった頃のお前に戻ってくれ。その気持ち悪い話し方は、どうにも受け付けられん」
気持ち悪いと言われ、イヴァンが傷付いた顔をする。
仕方ないので、親友である私がイヴァンの援護をすることにする。
「何を言ってるんですか、アレクサンドル様! イヴァンは本気で殿下のことをお慕いしているんです! それなのにそんな言い方、酷いではないですか! アレクサンドル様に男色の趣向がなくて、気持ちに応えられないのは仕方ありませんが、乙女心を否定するなんて、イヴァンがかわいそうです! 想うくらい、許してあげてくださいませ!」
「ベルローズまで、何を言ってるんだ! 私には全く理解できない…… 。ソフィア、行くぞ」
そう言って、王子とソフィアは逃げるように去って行った。
「イヴァン、平気?」
傷付くイヴァンの顔を見るのは、辛かった。
まだまだこの世界は、男同士の恋愛への理解はない。
「ローズは優しいね。もう少しだから、大丈夫よ。あと1ヶ月の辛抱だから」
もう少し? 何がだろう?
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