悪役令嬢は、幼馴染の恋を応援する。

平樹美莉

文字の大きさ
3 / 12

2人の想いが重なる時

しおりを挟む
「改めて僕から言わせてくれ。ベルローズ・オルレイン公爵令嬢、幼い頃からずっと愛しています。 僕と結婚してくれませんか?」

   イヴァンが跪き、私の左手をそっと手に取ると、正式な作法に則ってルビ求婚してくれた。
   私はこんなに幸せでいいのだろうか。

   あの後、イヴァンが全て、話してくれた。
   11歳の時に高熱を出して、未来の夢を見たこと。そこでは、私はアレクサンドル様と仲の良いソフィアに対して嫉妬に狂い、虐めてしまうこと。そして、断罪されてしまうこと。
   それを防ぐため、アレクサンドル様達から私の視線を逸らすために、わざと男色の演技をしてくれていたと初めて知った。
   なかなか人に素直に感情を伝えられず、婉曲表現しか出来ない性格の私だ。確かにイヴァンの言う通り、アレクサンドル様に嫌だという本音も言えず、他人には嫉妬に狂った行動にしか見えないようなことを仕出かしていたかもしれない。
   昔から私の性格は、私自身以上にイヴァンはよく理解してくれている。男色のフリをするのはやり過ぎな感じもするが、自分の結婚を避けたいという意図もあったらしいので、イヴァンの対策は正解だったのかもしれない。

   ーーー昔から私を守ってくれるのは、やはりイヴァンね。


   最近は、すっかり女友達と化してたイヴァンだけど、初恋の人だし、こうして見るとかっこいい男性にしか見えない。
   私は求婚され、息の仕方が分からないほど、感極まってしまった。

   ーーーやっぱりイヴァンが好き。

  素直に気持ちを伝えたい!そんな私の口から出た言葉は……。

「なかなか素直でない性格の私ですが、よろしくお願いしますわ」

   微笑んでそう答えるのが、精一杯。
   ああ、やはり素直な気持ちを伝えるのは難しい。

(でも、イヴァンなら分かってくれますわよね?)

  素直でなくて、ごめんなさい。
  こんな私ですけど、末永く愛してください。

   心の中で念じると、察するように、イヴァンがぎゅっと抱きしめて、ゆっくり口付けてくれた。

   ーーー私の気持ちが伝わりますように。



ーーーーーーーーーー



   あの後、テラスで、僕は彼女に真実を教えた。
 彼女は最初、信じられないようだったけど、受け入れてくれたようだ。

 そして、僕は跪き、彼女の左手をそっと手に取ると、僕が覚えている限りの正式な作法で求婚をした。 
   先程はローズに先を越されたが、やはり求婚はきちんと僕からしておきたい。

 ―――この瞬間を、僕がどれ程夢見てきたことか。

 彼女の瞳には、涙が浮かんでいる。

「なかなか素直でない性格の私ですけど、末永く、よろしくお願いしますわ」

 彼女が潤んだ瞳で、微笑んだ。
   精一杯の彼女の返事に、僕は愛おしい気持ちが抑えきれない。
   僕はすっと立ち上がり、彼女をぎゅっと抱きしめた。

 そして、月夜が照らす光の下で、もう一度、誓いの意味を込めて、今度はゆっくり彼女に口付けた。

 ―――僕はこの唇の感触を一生忘れないだろう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢のはずですが、年上王子が幼い頃から私を甘やかす気でいました

ria_alphapolis
恋愛
私は、悪役令嬢なのかもしれない。 王子の婚約者としては少し我儘で、周囲からは気が強いと思われている―― そんな自分に気づいた日から、私は“断罪される未来”を恐れるようになった。 婚約者である年上の王子は、今日も変わらず優しい。 けれどその優しさが、義務なのか、同情なのか、私にはわからない。 距離を取ろうとする私と、何も言わずに見守る王子。 両思いなのに、想いはすれ違っていく。 けれど彼は知っている。 五歳下の婚約者が「我儘だ」と言われていた幼い頃から、 そのすべてが可愛くて仕方なかったことを。 ――我儘でいい。 そう決めたのは、ずっと昔のことだった。 悪役令嬢だと勘違いしている少女と、 溺愛を隠し続ける年上王子の、すれ違い恋愛ファンタジー。 ※溺愛保証/王子視点あり/幼少期エピソードあり

【完結】その令嬢は号泣しただけ~泣き虫令嬢に悪役は無理でした~

春風由実
恋愛
お城の庭園で大泣きしてしまった十二歳の私。 かつての記憶を取り戻し、自分が物語の序盤で早々に退場する悪しき公爵令嬢であることを思い出します。 私は目立たず密やかに穏やかに、そして出来るだけ長く生きたいのです。 それにこんなに泣き虫だから、王太子殿下の婚約者だなんて重たい役目は無理、無理、無理。 だから早々に逃げ出そうと決めていたのに。 どうして目の前にこの方が座っているのでしょうか? ※本編十七話、番外編四話の短いお話です。 ※こちらはさっと完結します。(2022.11.8完結) ※カクヨムにも掲載しています。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

侯爵令嬢の置き土産

ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。 「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。

最近のよくある乙女ゲームの結末

叶 望
恋愛
なぜか行うことすべてが裏目に出てしまい呪われているのではないかと王妃に相談する。実はこの世界は乙女ゲームの世界だが、ヒロイン以外はその事を知らない。 ※小説家になろうにも投稿しています

モブとか知らないし婚約破棄も知らない

monaca
恋愛
病弱だったわたしは生まれかわりました。 モブ? わかりませんが、この婚約はお受けいたします。

婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?

ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

処理中です...