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勇気を出して 〜ソフィア〜
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お昼休みの休憩時間、いつもの木陰のベンチで、わたしは緊張の面持ちで、アレクを待っていた。
(……イヴァンには、ああ言ったけど、本当は自信ないなぁ)
ゲームの話の流れでは、このままわたしとアレクの仲が深まれば、いずれアレクとベルローズ様は婚約破棄をする。
でも、わたしとイヴァンが転生者ということが影響して、ストーリーはすでにゲームと異なる進み方をしている。
―――ベルローズ様が悪役令嬢化しないのなら、アレクは婚約破棄をする理由はないのだろうか?
淑女教育、妃教育をしっかり受けたベルローズ様が正室になり、わたしが愛妾にでもなればアレクにとっては万々歳。
いくらアレクがわたしを好きでいてくれても、アレクはベルローズ様と別れる必要性がないのだ。
イヴァンには、大見栄張っちゃったけど……。
―――アレクは本当にわたしと結婚したいと望んでくれるだろうか?
(わたし、知るのが怖いよ)
わたしは目を瞑り、深く溜息をついた。
すると頭をぽんぽんと優しく叩かれ、わたしが顔を上げると、いつの間にか、アレクが目の前に立っていた。
「なんだか思い詰めているみたいだけど、何か悩み事か?」
アレクが心配そうに見つめてくる。
「あっあのっ、アレクに重要な話が……」
わたしがアワアワしながら言うと、アレクはわたしの横に腰掛けた。
わたしは意を決して、アレクの目を見て、話し出そうとするが、なかなか言葉が出てこず、口をパクパクさせてしまう。
そんなわたしの手を、アレクがぎゅっと握ってくれた。
「あ、あのっ、わたし、アレクが好きです! こんなこと聞くと、アレクに嫌われるかもしれないけどっ、アレクはわたしに側にいて欲しいと言ってくれたのは、愛妾としてですか? 我儘だとは思うけど、わたし、アレクが別の誰かと結婚するのを横で見ているのは、きっと耐えられないっ!」
感情的になり過ぎて、私の目に涙が浮かぶ。
わたしの目に浮かんだ涙をアレクがそっと指で拭ってくれた。
「……すまない。私はソフィアを不安がらせていたのだな」
アレクが悲しそうな顔をする。
(ああ、やっぱり……)
私は胸が痛むのを耐え、両手を固く握り締めた。
そんなわたしを、アレクがぎゅっと抱き寄せた。
「正直、私は結婚という未来のことは深く考えていなかった。ソフィアと一緒にいることしか……。まだ14歳だし、結婚はまだまだ先のことだと……。でも、ほとんど会話することもない名ばかりとはいえ、私には婚約者のベルローズがいるもんな。お前にもベルローズにも不誠実だった」
抱き寄せられて感じていた、アレクの体温がすっと離れる。アレクが私の肩に手を置き、私の目を真剣な眼差しで見つめて、話を続けた。
「私は唯一の相手としか、神に愛を誓いたいとは思わない。つまりお前だ。私は第2王子だし、そこまで跡継ぎについては言われないだろうから、生涯お前だけを妻にすることを誓おう」
「あっ、ありがとう」
思わずお礼を口にすると、アレクは優しく微笑んでキスを落とした。目元の涙に、頰に、そして唇に。
お互い額を合わせて、笑い合った。
「でも、ベルローズは公爵の娘だからなぁ。婚約を破棄するには、父上の説得も大変そうだ。ソフィアも協力してくれるか?」
わたしはばっと顔を上げた。
「そっ、そのことなんですけど!」
そして、わたしはイヴァンの話を切り出した。
イヴァンとの話を全部話し終えて、アレクを見ると、固まっている。
「……イヴァンの協力を得るのは分かった。ベルローズを幸せにしてくれるのなら、有り難い。……しかし、なぜにイヴァンが男色になり、わたしに惚れる必要があるのだ?」
アレクは難しそうな顔をして、首を傾けている。
やはりアレクには理解不能だったらしい。
「そっ、それは、イヴァン様ご自身の結婚話が出ないようにするためです! ベルローズ様は公爵令嬢ですし、それなりに作戦を立てないと、簡単には婚約破棄できません! 長期戦になることが予想されます!」
(ベルローズ様を悪役令嬢にさせないためだなんて、説明できないから、もうここは勢いでいくしかない!)
「そっ、それに、イヴァン様はベルローズ様の側にいてあげたいそうです! 普通なら、第2王子の婚約者の側に、異性の友達が近づく訳にはいきません! イヴァン様とベルローズ様は元々仲の良い幼馴染だそうですが、そのため、今は距離を置いていたそうです。男色になって、女友達のようでいいから、側にいたいそうですっ!」
とりあえず勢いに任せて、説得する。
わたしの勢いに押されたのか、アレクは目を丸くして聞いている。
「わ、分かったよ」
アレクの顔にはまだハテナが残っているが、なんとか納得してもらえたようだ。
(よっしゃ!)
わたしは心の中でガッツポーズを決める。
「それに、これが成功すれば、イヴァン様がわたしの後ろ盾についてのいい策を考えてくださるそうです!」
わたしが胸を張って言うと、アレクは心配そうな顔をする。
「イヴァンが優秀なのは知っているが、どうも私の理解を超えるところがある。その作戦、本当に大丈夫なのか?」
「また、3人で相談しましょっ!」
ねっ!とわたしは頑張って嘘くさい笑みを貼り付けて、アレクに同意を求めたが、内心は穏やかではない。
―――ごめんなさい、アレク。実はわたしもすごく心配しています……。
(……イヴァンには、ああ言ったけど、本当は自信ないなぁ)
ゲームの話の流れでは、このままわたしとアレクの仲が深まれば、いずれアレクとベルローズ様は婚約破棄をする。
でも、わたしとイヴァンが転生者ということが影響して、ストーリーはすでにゲームと異なる進み方をしている。
―――ベルローズ様が悪役令嬢化しないのなら、アレクは婚約破棄をする理由はないのだろうか?
淑女教育、妃教育をしっかり受けたベルローズ様が正室になり、わたしが愛妾にでもなればアレクにとっては万々歳。
いくらアレクがわたしを好きでいてくれても、アレクはベルローズ様と別れる必要性がないのだ。
イヴァンには、大見栄張っちゃったけど……。
―――アレクは本当にわたしと結婚したいと望んでくれるだろうか?
(わたし、知るのが怖いよ)
わたしは目を瞑り、深く溜息をついた。
すると頭をぽんぽんと優しく叩かれ、わたしが顔を上げると、いつの間にか、アレクが目の前に立っていた。
「なんだか思い詰めているみたいだけど、何か悩み事か?」
アレクが心配そうに見つめてくる。
「あっあのっ、アレクに重要な話が……」
わたしがアワアワしながら言うと、アレクはわたしの横に腰掛けた。
わたしは意を決して、アレクの目を見て、話し出そうとするが、なかなか言葉が出てこず、口をパクパクさせてしまう。
そんなわたしの手を、アレクがぎゅっと握ってくれた。
「あ、あのっ、わたし、アレクが好きです! こんなこと聞くと、アレクに嫌われるかもしれないけどっ、アレクはわたしに側にいて欲しいと言ってくれたのは、愛妾としてですか? 我儘だとは思うけど、わたし、アレクが別の誰かと結婚するのを横で見ているのは、きっと耐えられないっ!」
感情的になり過ぎて、私の目に涙が浮かぶ。
わたしの目に浮かんだ涙をアレクがそっと指で拭ってくれた。
「……すまない。私はソフィアを不安がらせていたのだな」
アレクが悲しそうな顔をする。
(ああ、やっぱり……)
私は胸が痛むのを耐え、両手を固く握り締めた。
そんなわたしを、アレクがぎゅっと抱き寄せた。
「正直、私は結婚という未来のことは深く考えていなかった。ソフィアと一緒にいることしか……。まだ14歳だし、結婚はまだまだ先のことだと……。でも、ほとんど会話することもない名ばかりとはいえ、私には婚約者のベルローズがいるもんな。お前にもベルローズにも不誠実だった」
抱き寄せられて感じていた、アレクの体温がすっと離れる。アレクが私の肩に手を置き、私の目を真剣な眼差しで見つめて、話を続けた。
「私は唯一の相手としか、神に愛を誓いたいとは思わない。つまりお前だ。私は第2王子だし、そこまで跡継ぎについては言われないだろうから、生涯お前だけを妻にすることを誓おう」
「あっ、ありがとう」
思わずお礼を口にすると、アレクは優しく微笑んでキスを落とした。目元の涙に、頰に、そして唇に。
お互い額を合わせて、笑い合った。
「でも、ベルローズは公爵の娘だからなぁ。婚約を破棄するには、父上の説得も大変そうだ。ソフィアも協力してくれるか?」
わたしはばっと顔を上げた。
「そっ、そのことなんですけど!」
そして、わたしはイヴァンの話を切り出した。
イヴァンとの話を全部話し終えて、アレクを見ると、固まっている。
「……イヴァンの協力を得るのは分かった。ベルローズを幸せにしてくれるのなら、有り難い。……しかし、なぜにイヴァンが男色になり、わたしに惚れる必要があるのだ?」
アレクは難しそうな顔をして、首を傾けている。
やはりアレクには理解不能だったらしい。
「そっ、それは、イヴァン様ご自身の結婚話が出ないようにするためです! ベルローズ様は公爵令嬢ですし、それなりに作戦を立てないと、簡単には婚約破棄できません! 長期戦になることが予想されます!」
(ベルローズ様を悪役令嬢にさせないためだなんて、説明できないから、もうここは勢いでいくしかない!)
「そっ、それに、イヴァン様はベルローズ様の側にいてあげたいそうです! 普通なら、第2王子の婚約者の側に、異性の友達が近づく訳にはいきません! イヴァン様とベルローズ様は元々仲の良い幼馴染だそうですが、そのため、今は距離を置いていたそうです。男色になって、女友達のようでいいから、側にいたいそうですっ!」
とりあえず勢いに任せて、説得する。
わたしの勢いに押されたのか、アレクは目を丸くして聞いている。
「わ、分かったよ」
アレクの顔にはまだハテナが残っているが、なんとか納得してもらえたようだ。
(よっしゃ!)
わたしは心の中でガッツポーズを決める。
「それに、これが成功すれば、イヴァン様がわたしの後ろ盾についてのいい策を考えてくださるそうです!」
わたしが胸を張って言うと、アレクは心配そうな顔をする。
「イヴァンが優秀なのは知っているが、どうも私の理解を超えるところがある。その作戦、本当に大丈夫なのか?」
「また、3人で相談しましょっ!」
ねっ!とわたしは頑張って嘘くさい笑みを貼り付けて、アレクに同意を求めたが、内心は穏やかではない。
―――ごめんなさい、アレク。実はわたしもすごく心配しています……。
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