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ハッピーエンド
王太子とナタリアの婚約話はあっという間に纏まり、結婚の日取りまで決められてしまった。
王家はよほど切羽詰まっていたようだ。
次第に王太子妃になる自覚が生まれてきたナタリアは、圧倒的に知識が足りないことに悩み、王妃にも相談したが、その答えは力が抜けるものだった。
「あら、全然大丈夫よ。私はあの子が好きな子と結ばれただけで感謝しているの。一緒にダンスが踊れて、隣に立てる子が見つかったのよ?これ以上何を望むっていうの?」
いやいや、ハードルが低過ぎますよね?
私はいるだけでいいんですか?
見た目は地味ですが、これでもやれば少しは出来る子なんですけど、多分。
結局は姉となったアメリが熱心に世話を焼き、率先して知識を詰め込んでくれた為、なんとか体裁は整えられることになった。
結婚式当日、ナタリアはデビュタントの時と同じ色、白いウェディングドレスに身を包んだ。
あの日より遥かに高価なドレスは、王妃が張り切って用意してくれたもので、ヴェールは今回もシスター達が心を込めて編んでくれた。
驚いたことに、デビュタントのドレスの生地は、アメリが寄付したものだと後からわかった。
もしアメリが寄付していなかったら、ナタリアはフェルゼンと出会えなかったかもしれない。
「私って凄いわ!私が二人を結び付けたキューピッドなのね!!」
真実を知ったアメリは得意げに笑い、そんなアメリをフェルゼンは鬱陶しそうに目を細めて見ていた。
祝福する貴族や民衆の中、白いタキシード姿のフェルゼンはいつもより更に格好良く、もはや神々しいくらいに輝いていた。
かつてはその姿を目に入れないようにしていた人々も、フェロモンが弱まった今なら好きなだけ見ることが出来る。
ナタリアは、あまりに美しいフェルゼンの隣に立つのが地味な容貌の自分でいいのか、悩んだ時期もあった。
しかし国民の間で、『不思議なフェロモン体質の王子と唯一フェロモンに靡かない令嬢』の話はロマンス小説になるくらいに話題となり、温かく迎え入れられた。
「ナタリア、綺麗だ。今日からナタリアが妻だなんて、夢のようだよ。私は世界一の幸せ者だ」
フェルゼンは今日も、式の途中にも関わらず、うっとりと愛を囁く。
毎日こんな状態なのだが、ナタリアはいまだに慣れない。
「ありがとうございます。フェルゼン様も素敵です。私もお嫁さんになれて嬉しいです」
赤くなりながら小声で一生懸命伝えると、フェルゼンが耐えられないとばかりにナタリアの唇にキスをした。
「フェルゼン様、まだ式の途中です!!誓いのキスはまだ先なのに!!」
「もう待てないよ。多少の前後は許して?」
「もうっ、またそうやって子犬のような目で。駄目なものは駄目です!!」
厳かな式の途中で突然イチャイチャし始めた二人だが、周囲もいい加減見慣れており、大人しく終わるのを待っていると、イライラしたアメリが止めに入った。
「そういうのは後にしなさい!全く、さっきから全然式が進まないじゃないの」
生温い視線の中、結婚式は無事に終わったのだった。
◆◆◆
2年後、ナタリアは初めての出産を迎えていた。
陣痛が始まり、医師と侍女が慌ただしく動き回っている中、苦しげなナタリアの息遣いが響いていた。
「ナタリア様、もうすぐです。踏ん張って下さい!」
あまりの痛みに泣きながら踏ん張ると、体から産まれ出た感覚があった。
おぎゃあああ
「おめでとうございます!元気な男のお子様です!!」
産声の中、医師の声が聞こえて安堵しながらそちらを向くと、何故か医師達がマスクと耳栓のようなものをしている。
ん?
この姿は一体?
いつからこんな格好を?
疑問で眉を寄せるナタリアに、医師が冷静に答えた。
「これは前回を踏まえた上で、念の為に準備したものです。お気になさらず。さあ処置も終わりました。抱いてあげ・あ、駄目だ・・・」
ガクッと医師が膝を付いた。
あぶないっ!!
咄嗟に赤ん坊を受け取ると、ナタリアは異様な風景に絶句した。
部屋にいる者全てが変なマスク姿で倒れているのである。
なになに?
どういうことなの!?
みんなして変なマスクと耳栓しながら倒れてるって、伝染病とか?
いや、実は食中毒?
フェルゼンのフェロモンを感じないナタリアは、我が子のフェロモンも感じず、何が起きているのかわからない。
泣きそうなナタリアは夫を呼んだ。
「フェルゼン様ー!大変なんですー!!」
出産直後の為、あまり大きな声は出なかったが、フェルゼンはナタリアの声を聞きつけ、すぐさま部屋の中へと駆け付けた。
が。
すぐに倒れた。
「フェルゼンさまーっ!!」
悲壮感漂うナタリアの絶叫の中、意識を失う直前のフェルゼンは初めての感覚を味わっていた。
なるほど、これが天使に連れられていくということか。
うん、悪くない・・・
幸せそうに意識を失う夫が視界に入り、ナタリアが泣きながら息子を抱き締めると、ナタリアの腕の中で美しい金髪の王子はキャッキャと笑い声をあげたのだった。
この王子が運命の女性を見つけるのはまた別の話。
王家はよほど切羽詰まっていたようだ。
次第に王太子妃になる自覚が生まれてきたナタリアは、圧倒的に知識が足りないことに悩み、王妃にも相談したが、その答えは力が抜けるものだった。
「あら、全然大丈夫よ。私はあの子が好きな子と結ばれただけで感謝しているの。一緒にダンスが踊れて、隣に立てる子が見つかったのよ?これ以上何を望むっていうの?」
いやいや、ハードルが低過ぎますよね?
私はいるだけでいいんですか?
見た目は地味ですが、これでもやれば少しは出来る子なんですけど、多分。
結局は姉となったアメリが熱心に世話を焼き、率先して知識を詰め込んでくれた為、なんとか体裁は整えられることになった。
結婚式当日、ナタリアはデビュタントの時と同じ色、白いウェディングドレスに身を包んだ。
あの日より遥かに高価なドレスは、王妃が張り切って用意してくれたもので、ヴェールは今回もシスター達が心を込めて編んでくれた。
驚いたことに、デビュタントのドレスの生地は、アメリが寄付したものだと後からわかった。
もしアメリが寄付していなかったら、ナタリアはフェルゼンと出会えなかったかもしれない。
「私って凄いわ!私が二人を結び付けたキューピッドなのね!!」
真実を知ったアメリは得意げに笑い、そんなアメリをフェルゼンは鬱陶しそうに目を細めて見ていた。
祝福する貴族や民衆の中、白いタキシード姿のフェルゼンはいつもより更に格好良く、もはや神々しいくらいに輝いていた。
かつてはその姿を目に入れないようにしていた人々も、フェロモンが弱まった今なら好きなだけ見ることが出来る。
ナタリアは、あまりに美しいフェルゼンの隣に立つのが地味な容貌の自分でいいのか、悩んだ時期もあった。
しかし国民の間で、『不思議なフェロモン体質の王子と唯一フェロモンに靡かない令嬢』の話はロマンス小説になるくらいに話題となり、温かく迎え入れられた。
「ナタリア、綺麗だ。今日からナタリアが妻だなんて、夢のようだよ。私は世界一の幸せ者だ」
フェルゼンは今日も、式の途中にも関わらず、うっとりと愛を囁く。
毎日こんな状態なのだが、ナタリアはいまだに慣れない。
「ありがとうございます。フェルゼン様も素敵です。私もお嫁さんになれて嬉しいです」
赤くなりながら小声で一生懸命伝えると、フェルゼンが耐えられないとばかりにナタリアの唇にキスをした。
「フェルゼン様、まだ式の途中です!!誓いのキスはまだ先なのに!!」
「もう待てないよ。多少の前後は許して?」
「もうっ、またそうやって子犬のような目で。駄目なものは駄目です!!」
厳かな式の途中で突然イチャイチャし始めた二人だが、周囲もいい加減見慣れており、大人しく終わるのを待っていると、イライラしたアメリが止めに入った。
「そういうのは後にしなさい!全く、さっきから全然式が進まないじゃないの」
生温い視線の中、結婚式は無事に終わったのだった。
◆◆◆
2年後、ナタリアは初めての出産を迎えていた。
陣痛が始まり、医師と侍女が慌ただしく動き回っている中、苦しげなナタリアの息遣いが響いていた。
「ナタリア様、もうすぐです。踏ん張って下さい!」
あまりの痛みに泣きながら踏ん張ると、体から産まれ出た感覚があった。
おぎゃあああ
「おめでとうございます!元気な男のお子様です!!」
産声の中、医師の声が聞こえて安堵しながらそちらを向くと、何故か医師達がマスクと耳栓のようなものをしている。
ん?
この姿は一体?
いつからこんな格好を?
疑問で眉を寄せるナタリアに、医師が冷静に答えた。
「これは前回を踏まえた上で、念の為に準備したものです。お気になさらず。さあ処置も終わりました。抱いてあげ・あ、駄目だ・・・」
ガクッと医師が膝を付いた。
あぶないっ!!
咄嗟に赤ん坊を受け取ると、ナタリアは異様な風景に絶句した。
部屋にいる者全てが変なマスク姿で倒れているのである。
なになに?
どういうことなの!?
みんなして変なマスクと耳栓しながら倒れてるって、伝染病とか?
いや、実は食中毒?
フェルゼンのフェロモンを感じないナタリアは、我が子のフェロモンも感じず、何が起きているのかわからない。
泣きそうなナタリアは夫を呼んだ。
「フェルゼン様ー!大変なんですー!!」
出産直後の為、あまり大きな声は出なかったが、フェルゼンはナタリアの声を聞きつけ、すぐさま部屋の中へと駆け付けた。
が。
すぐに倒れた。
「フェルゼンさまーっ!!」
悲壮感漂うナタリアの絶叫の中、意識を失う直前のフェルゼンは初めての感覚を味わっていた。
なるほど、これが天使に連れられていくということか。
うん、悪くない・・・
幸せそうに意識を失う夫が視界に入り、ナタリアが泣きながら息子を抱き締めると、ナタリアの腕の中で美しい金髪の王子はキャッキャと笑い声をあげたのだった。
この王子が運命の女性を見つけるのはまた別の話。
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