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2-9 要請

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亜竜のお肉はとてもおいしく魔力も濃厚でした。
しかも、しかもですね。
前の時と違って今回はワンバーンを狩ってきたのです。
つまり、お肉がいっぱい。

これで魔法の研究ができます。
濃い魔力で頑丈なタッパーも作れました。
予想通り、丈夫なタッパーでなら魔法を納めることができました。
ただ・・・予想外だったのはすべての魔法を納めることはできなかった。
これはたぶんイメージのせいだと思う。
火とか光とかで作られた魔法がタッパーに納まるイメージが持てなかったのよ。
ううん、違う。
そういうイメージを一生懸命作ったんだけど、信じ切ることができなかったんだと思う。
特に火は天敵だった。
タッパーが溶けて燃えちゃうんだもん。
あああ・・・亜竜肉一食分が・・・まぁ、いいか。
試行錯誤に失敗はつきもの。
やはり肉・・・つまり強化系や回復系の魔法はタッパーに納まりがよかった。
土や風もタッパーが拒否をした。
うん、タッパーって食料品を入れるもんだもんね。
でも、水や氷は入ったよ。
あと、発動した魔法はタッパーではしまえなかった。
これは、予想通り。

学校のみんな協力してくれてありがとう。

ごちゃごちゃって書いたが、要するにわたしは発動前の他人の魔法をもらうことができる(制限付き)。
またタッパーに魔法を入れた状態でアイテムの中にタッパーを差し込むとマジックアイテムができた。
効果はタッパーの中に入れた魔法に由来する。
ただ、これをやるとタッパーがアイテムの中から取り出せなかった。
なくなったり燃えちゃったのは勿体なかったなぁ。
とはいえ、今のわたしには魔力が手に入るあてがある。
ちょっと面倒だけど。

『おお!姫よ、学校帰りか。
今晩もごちそうになりに来たぞ』

魔力のあて・・・つまり東のジェネラルが自分の治める街に帰りもしないで毎日顔を出しているのだ。
もちろん、ただ飯を食っているわけではない。
東のジェネラルの取得分の亜竜肉を夕食に分けていただいている。
・・・無碍には断れないが求婚され続けるのには困ったものである。

『ところで、姫よ。
わが配下の者が姫の能力を聞いてな、ご母堂のようにわが子に魔力を与えてほしいと願い出た。
むろん、その分プラスαの亜竜肉は用意しよう。
ご協力願えないだろうか?』

・・・いつか来るとは思っていたが、母の出産が終えてからと思っていた。

『安全の保障がありません』

『むろん奴も承知している』

リスクがあるくらいでは止まらないか。

『・・・母体の方もですか?
わたしはここで育ちましたし愛着もありますが、人間の女性でもあります。
お母さんみたいにリスクを承知で賛同していただけなければご協力できませんよ?』

東のジェネラル様はじっとこちらを見て少し考えてから一瞬目を閉じた。

『・・・いや・・・配下の妻の詳細までは把握していなかった。
きちんと確認をしてから返事をするとしよう』

・・・よかった。
理解してくれたらしい。
しかし、他の母体の人か。
当たり前だが、お母さん以外の苗床の人もいるんだろうな。
できるだけ考えないようにしていたが、そろそろ目をそらし続けるわけにはいかないかな・・・。
とはいえ、繁殖という社会基盤にかかわる問題だ。
どこまで干渉していいか・・・いや・・・そもそも干渉できるのか?
わたしのことを『姫』と呼び慕うオークにしたって彼らの生活基盤を壊す行為を受け入れるかはわからない。
・・・いや・・・受け入れることはないだろう。
性欲は食欲・睡眠欲と並ぶ3大欲求。
生物の基本だ。
便利で都合がいいからと見て見ぬふりをしてきたが、そろそろ現実を見なければならないだろう。
言い出すタイミングはやはり夕食時か。

『お父さん、プリーストさん。
今日、東のジェネラル様に配下の胎児にも魔力を分けてはくれないかと頼まれました』

『『なっ?!』』

夕食時に私の言った一言で忌々し気に東のジェネラルをにらむ二人。
お母さんには事前に相談したが、「あなたの好きにしなさい」とだけ言われた。
だからか、明らかに卓上の空気が一変したのにまるで気が付いていないかのようにお母さんだけは優雅に食事を続ける。

『それでできましたら、ほかの女性に会わせていただけないでしょうか?』

『ダメだ!!』

わたしの言葉にお父さんオークは声を荒げテーブルを叩いた。
テーブルの皿が音を立てコップが倒れる。
このくらいの反応は予想のうち。

『なぜですか?!』

『ダメなものはダメだ!』

じ~~とにらみ合うが、ゆずる気はないらしい。

『理由を言ってくれなければ納得いきません!』

『・・・ダメなものはダメなんだ』

とはいえ、ここには仲裁者がいる。
平行線を作っておけば・・・。

『落ち着いてください。こういう話がいずれおこることはおなたも理解していたでしょう。
東の御方も御方です。
その要請は結果が出るまではお待ちくださるようお願いしていたではないですか!』

『望む返答ではなかったのでな。
それに姫は人間としては未成年とはいえ、もう5歳。
オークなら一人前どころか熟練となる者さえいる年齢だ。しっかりした判断ができるとみた。
姫が将来をどうお過ごしになるかお決めになれるだろうと判断したまでだ』

・・・いや、人間の5歳児にその判断は普通はできないからね?
都合がいいから聞き流すけど、普通の5歳児にそんな決定権を与えちゃだめだよ。

『・・・お嬢様の願いをかなえましょう』

『しかし・・・』

『お嬢様は学校に通っています。
知ろうとすればもう知るのを止める手段がありません。
それに、ここがあなたの理想の家庭なのは知っています。
そして、あなたの夢に共感を覚えているオークが多いこともお嬢様の人気を見れば一目瞭然でしょう。
きっとお嬢様も理解してくれますよ』

おお?!さすがはプリーストさん。
お父さんオークの操縦が上手だな~。

『お嬢様も見るならわかってくださいね。
みんなこういう家庭を築きたいのです。だけどできない現実があるのだと』

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