『聖クロノア学院恋愛譚 』記憶を失ったベータと王族アルファ、封印された過去が愛を試すまで

るみ乃。

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13 語られざる連鎖

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 放課後、俺は自分の寮の部屋に一人で残っていた。
机の上に書類を並べ、片付けているはずなのに、気を抜くとあの講師の顔が浮かぶ。

 あの冷たい目。
 まるで、オメガを見下ろすかのような――あの視線…俺は知っていた



 あれは一年前。
 廊下の先、講師棟のそばで、怯えた様子のオメガの生徒を見かけた。
 その直後、講師が現れて、生徒の腰に手を回した。

 背筋が凍った。
 生徒の顔には、はっきりとした「恐怖」が刻まれていた。

 俺は気づけば、講師の部屋に足を向けていた。
 窓の隙間から見えた

 教室では、隠されている白く細い足、それを割ってはいる……覆いかぶさるような影。

 誰かを呼ばなきゃ。けど、声が出なかった…
 震える足が言うことを聞かない。

 次の瞬間、生徒の上半身が反り返り――
「あっ…!んあっ……」

 小さな、けれど確かな悲鳴が漏れた。

(逃げろ、はやく!!)

 頭の中で警告が響く

 冷たい何かが全身を駆け抜けて、気づけば走り去っていた。
 ……俺は逃げたんだ。



 ベッドに倒れ込んだまま、俺は目を閉じる。
 鼓動が速くなり、冷や汗がじわりと滲む。

 ずっと胸の奥に、棘のように刺さった痛み

「……ユリス?」

 声がして、はっと目を開けた。
 レオンがベッドの横に立っている。眉をひそめて、俺を見下ろしていた。

「お前、大丈夫か?」

 返そうとして、声が掠れる。
 喉が張りついて、うまく言葉が出てこない。

「……なんだよ?」

 やっとの思いでそう返すと、レオンは少し間を置いてから言った。

「なあ、ユリス……あのオメガの生徒のことだけど」

 脳が一瞬、空白になる。
 何の話か、すぐに分かった。

 黙っていると、レオンの目が鋭くなる。

「お前、何か知ってるよな?」

 肩をすくめて、答えない。
 レオンは深いため息をついた。

「……どうせ、聞いても黙ってるんだろ」

「……あいつは、この学院の“裏の顔”の象徴だよな」

 俺がそう返すと、レオンは眉をひそめた。

「どういう意味だよ」

「そのままの意味だ。お前なら、分かるはずだろ」

 短く答えると、レオンは拳を握りしめる。

「アルファ、ベータ、オメガ……まさか」

「さあ……」

 俺は目を伏せた。

「けど、“何か”はされるだろうな」

 沈黙が、部屋を支配した。
 静かな夜に、互いの呼吸だけが聞こえていた。
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