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24 接触
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午後の中庭は、いつもより静かだった。風も穏やかで、木々の葉擦れすら遠く感じる。俺はベンチに腰掛けて、開いた本の活字をぼんやりと追っていた。
けれど、ページをめくる手が止まる。
……誰かが、こちらを見ている。
気配に気づいて顔を上げるとひとりの男が立っていた。年の頃は三十代後半。
「ユリス・フェルナンドくん、だね?」
「……はい」
「私はクラウス。マルディ医師の助手をしていた者だ。少し話せるかい?」
マルディ医師。俺を育ててくれた、あの人の名が出た瞬間、胸の奥にざらついた波紋が走った。
「先生に、何かあったんですか……?」
クラウスは短く息を吐くと、静かに言った。
「……マルディ医師は数日前から消息を絶っている。連絡も取れない。痕跡も残していない。だが、私は彼が“意図的に”姿を消したと考えている」
その言葉に、思わず背筋が強張った。
「それって……どういう意味ですか?」
「彼は、隠れている。何かから、誰かから――あるいは、何かを守るために。……君を、含めて」
「俺を?」
「そうだ。君に何があるのか、君は知りたくないか?」
クラウスは内ポケットから、薄く折れたメモのような紙を取り出した。
「そこに書かれていたのは、場所と……名前だった。“フラン”という名に、心当たりは?」
……フラン? どこかで聞いたような、それでいてまったく思い出せない。
けれど、名前を聞いた瞬間、頭の奥にざらりとした感覚が広がった。
「……わかりません。聞いたことも、ないような。でも……なんか、変な感じがします」
クラウス医師はそれを聞くと、ほんの少しだけ目を細めた。
「それでいい。無理に思い出さなくていい。ただ、知っておくべきことはある。君の中にある“過去”の痕跡を見せたい」
「見せる……?」
「知りたければ、明日の放課後。学院の南にある旧研究棟に来てくれ。待っているよ。」
「……旧研究棟?」
少し前に、レオンが話してた地下施設をがあると噂がある…あの古びた塔。誰も近づかない場所。そこに――何かがあるのか?
クラウス医師は俺の答えを待つことなく、静かに頭を下げて立ち去っていった。
白衣の背中が中庭の出口に消えたとき、俺は深く息を吐いた。
マルディ医師の失踪。
“フラン”という名前。
クラウスの言葉と、旧研究棟――。
次々に現れる謎に、心がざわついていた。
そして、そのざわつきの底には、もうひとつ別の影がある。
忘れてはいけない感覚のような、けれど、必死で封じてきた何かが――。
……俺は、本当に“知らない”のか?
その夜、眠りは浅く、夢の中で誰かが俺の名を呼んでいた。フラン、と。
けれど、ページをめくる手が止まる。
……誰かが、こちらを見ている。
気配に気づいて顔を上げるとひとりの男が立っていた。年の頃は三十代後半。
「ユリス・フェルナンドくん、だね?」
「……はい」
「私はクラウス。マルディ医師の助手をしていた者だ。少し話せるかい?」
マルディ医師。俺を育ててくれた、あの人の名が出た瞬間、胸の奥にざらついた波紋が走った。
「先生に、何かあったんですか……?」
クラウスは短く息を吐くと、静かに言った。
「……マルディ医師は数日前から消息を絶っている。連絡も取れない。痕跡も残していない。だが、私は彼が“意図的に”姿を消したと考えている」
その言葉に、思わず背筋が強張った。
「それって……どういう意味ですか?」
「彼は、隠れている。何かから、誰かから――あるいは、何かを守るために。……君を、含めて」
「俺を?」
「そうだ。君に何があるのか、君は知りたくないか?」
クラウスは内ポケットから、薄く折れたメモのような紙を取り出した。
「そこに書かれていたのは、場所と……名前だった。“フラン”という名に、心当たりは?」
……フラン? どこかで聞いたような、それでいてまったく思い出せない。
けれど、名前を聞いた瞬間、頭の奥にざらりとした感覚が広がった。
「……わかりません。聞いたことも、ないような。でも……なんか、変な感じがします」
クラウス医師はそれを聞くと、ほんの少しだけ目を細めた。
「それでいい。無理に思い出さなくていい。ただ、知っておくべきことはある。君の中にある“過去”の痕跡を見せたい」
「見せる……?」
「知りたければ、明日の放課後。学院の南にある旧研究棟に来てくれ。待っているよ。」
「……旧研究棟?」
少し前に、レオンが話してた地下施設をがあると噂がある…あの古びた塔。誰も近づかない場所。そこに――何かがあるのか?
クラウス医師は俺の答えを待つことなく、静かに頭を下げて立ち去っていった。
白衣の背中が中庭の出口に消えたとき、俺は深く息を吐いた。
マルディ医師の失踪。
“フラン”という名前。
クラウスの言葉と、旧研究棟――。
次々に現れる謎に、心がざわついていた。
そして、そのざわつきの底には、もうひとつ別の影がある。
忘れてはいけない感覚のような、けれど、必死で封じてきた何かが――。
……俺は、本当に“知らない”のか?
その夜、眠りは浅く、夢の中で誰かが俺の名を呼んでいた。フラン、と。
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