長編「地球の子」

るりさん

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第三章 粉挽き小屋

逃げてきた女性

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 マルコとの約束の時間まで余裕がない。そんな中で、なぜか輝のことを知っているという女性が輝の手を握った。そして、その外見からは想像もできないくらい強い力で彼を引っ張っていって、後を続く町子たちともども、街の裏路地に引きずり込んでいった。
 背中まで伸びる長い金の髪は乱れ、細い腕は必死に輝の腕を握っている。裏路地に着いて彼女の瞳を見ると、月光に浮かび上がる黄緑色の瞳が輝に縋ってきた。
「いきなりごめんなさい。あなた方が、マルコと会うって聞いて、私も連れて行ってほしいって思って。私、名をルフィナと言います。父はマルコのパン屋に粉を卸している粉挽き小屋の主人で、今、悪い人たちに騙されて、私を追ってきているんです」
 そこまで聞いて、輝が頭を抱えた。
「ちょっと待って、話が見えない。君がマルコさんの知り合いだってことはなんとなくわかるけど、なんでそのことで君が追われるんだ? マルコさんに話を聞いてからでもいいかな?」
 ルフィナは、アッと言いながら飛びすさり、輝の手を離すとふと、町子を見た。
「ごめんなさい、私必死で。よろしければマルコのいる場所へ連れて行ってください。マルコとともに私が事情をお話しします」
 ルフィナは、そう言って少し寒そうに体を抱えた。すると、カリーヌが自分が着ていた藤色のジャケットを脱ぎ、部屋着でいるルフィナの体にかけてやった。
「彼女が嘘を言っているとは思えない。千里眼の私でさえ見抜けなかったほどに気配を殺しているところを見ると相当追い詰められているんだわ。おそらく彼女が追われているのはシリンゆえ。助けましょう。マルコも、おそらく彼女を連れて行けば誰だか分かるでしょうから」
「ありがとうございます」
 ルフィナは、カリーヌのジャケットをはおり、寒さに震える体を抱きしめながら、泣いた。
 ルフィナを助けることになり、彼女を連れた一行が車でレストランに着き、マルコと会う頃には、少しだけだが彼女のことを聞き出すことができた。
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