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第二章 崩壊と再生
エピローグ:新しい日常
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――絶頂の余韻に痙攣する体を抱きとめられながら、美咲は、もはや自分でも抑えきれない言葉を吐き出していた。
「……翔太なんて……もう思い出さない……私の全ては、ご主人様だけ……」
その声音は涙と涎に濡れてかすれていたが、不思議なほど澄んだ響きを宿していた。
羞恥も罪悪感も燃え尽き、跡形もない。
代わりに胸を満たすのは、ただ「ご主人様に抱かれている」という圧倒的な幸福と歓喜。
男が耳元で囁く。
「美咲……よく従ったな。お前はもう完全に俺の女だ」
「……はい……ご主人様……私は……ご主人様の女です……」
掠れた声でそう答えた瞬間、震える唇の端には、涙に濡れながらも恍惚の笑みが浮かんでいた。
胸の奥で、かつての自分が砕け散っていく音が響く。
――翔太の婚約者だった美咲は、ここで死んだ。
そして誕生したのは「ご主人様に従う女」という新しい存在。
***
夜が明ける。
窓から射し込む柔らかな朝の光は、かつてなら「日常」を意味していた。
だが今、美咲にとってその意味は完全に変わっていた。
ベッドの端に腰を下ろし、震える指で髪を梳かす。
(ご主人様に、どう映るだろう。私の声も、仕草も、今日の服も……全部、ご主人様のために整えなきゃ……)
紅茶を淹れる手は、緊張でかすかに震えている。
ひと口飲むと喉を通る液体がやけに熱く、舌の奥にまで「昨夜の残滓」を呼び覚ます。
(あぁ……紅茶の香りより、ご主人様の匂いが恋しい……)
鏡の前で化粧を整える。
頬に指を滑らせるたびに、昨夜触れられた感覚が蘇る。
瞳をじっと見据え、声にならない問いを投げかける。
――「この顔は、ご主人様に抱かれるにふさわしい女か?」
答えは決まっている。
化粧はただの「仕事用の仮面」。
本当の顔は、ご主人様の前に跪き、命令を受ける女の顔。
***
電車に揺られながら、カバンの奥に忍ばせた小さな首輪にそっと触れる。
誰にも気づかれていないのに、その存在を確かめるだけで下腹部がじんわり熱を帯びる。
(ご主人様のもの……。この印さえあれば、私はいつでも従順に戻れる……)
車窓に映る自分の姿。
スーツを着こなし、落ち着いた表情を浮かべる「表の顔」。
だが心の奥底では、昨夜の声と吐息と涙が何度も蘇り、太腿の内側を濡らしていた。
「……ご主人様……」
小さく呟いたその瞬間、隣に座る人には聞こえないはずなのに、頬が一気に熱くなる。
羞恥と同時に甘美な悦びが走り抜ける。
***
職場で同僚に微笑みかけ、仕事をこなす。
だがその笑顔は仮面。
心の中では「次にご主人様に会えるのはいつか」「叱ってくださるだろうか」「褒めていただけるだろうか」――その思考ばかりが巡る。
昼休み、ふとスマホの画面に映るカレンダーを見つめ、唇を噛む。
予定表の隅に書き込んだ、ご主人様に会える日。
その日が来るのを待つだけで胸がざわつき、呼吸が浅くなる。
(ご主人様に命令されたい……叱られたい……褒められたい……)
欲望が理性を食い潰し、日常のすべてを染め上げていく。
指先で机をなぞると、その感触ですら「ご主人様の手」を思い出してしまう。
体が、心が、すべてが「ご主人様」を基準に動いてしまう。
***
夜。
一人でベッドに横たわると、静寂が余計に熱を煽る。
カーテン越しに街灯の光が差し込み、薄明かりの中で首輪をそっと喉にあてがう。
(ご主人様……早く、会いたい……)
そのまま目を閉じると、意識は昨夜の光景へと引き戻される。
ご主人様の低い声、ご主人様の体温、ご主人様の重み。
そして「ご主人様のもの」と刻まれた悦び。
「……もう、戻れない……。私は、ご主人様なしでは生きられない……」
唇から零れたその言葉は、自分自身への宣告であり、同時に甘美な陶酔だった。
***
こうして美咲は、表向きには変わらぬ日常を過ごしているように見せかけながら、
裏では一挙手一投足すべてをご主人様への忠誠に捧げる女として、完全に染め上げられていった。
新しい日々は静かに、だが確実に――彼女のすべてを侵食していた。
「……翔太なんて……もう思い出さない……私の全ては、ご主人様だけ……」
その声音は涙と涎に濡れてかすれていたが、不思議なほど澄んだ響きを宿していた。
羞恥も罪悪感も燃え尽き、跡形もない。
代わりに胸を満たすのは、ただ「ご主人様に抱かれている」という圧倒的な幸福と歓喜。
男が耳元で囁く。
「美咲……よく従ったな。お前はもう完全に俺の女だ」
「……はい……ご主人様……私は……ご主人様の女です……」
掠れた声でそう答えた瞬間、震える唇の端には、涙に濡れながらも恍惚の笑みが浮かんでいた。
胸の奥で、かつての自分が砕け散っていく音が響く。
――翔太の婚約者だった美咲は、ここで死んだ。
そして誕生したのは「ご主人様に従う女」という新しい存在。
***
夜が明ける。
窓から射し込む柔らかな朝の光は、かつてなら「日常」を意味していた。
だが今、美咲にとってその意味は完全に変わっていた。
ベッドの端に腰を下ろし、震える指で髪を梳かす。
(ご主人様に、どう映るだろう。私の声も、仕草も、今日の服も……全部、ご主人様のために整えなきゃ……)
紅茶を淹れる手は、緊張でかすかに震えている。
ひと口飲むと喉を通る液体がやけに熱く、舌の奥にまで「昨夜の残滓」を呼び覚ます。
(あぁ……紅茶の香りより、ご主人様の匂いが恋しい……)
鏡の前で化粧を整える。
頬に指を滑らせるたびに、昨夜触れられた感覚が蘇る。
瞳をじっと見据え、声にならない問いを投げかける。
――「この顔は、ご主人様に抱かれるにふさわしい女か?」
答えは決まっている。
化粧はただの「仕事用の仮面」。
本当の顔は、ご主人様の前に跪き、命令を受ける女の顔。
***
電車に揺られながら、カバンの奥に忍ばせた小さな首輪にそっと触れる。
誰にも気づかれていないのに、その存在を確かめるだけで下腹部がじんわり熱を帯びる。
(ご主人様のもの……。この印さえあれば、私はいつでも従順に戻れる……)
車窓に映る自分の姿。
スーツを着こなし、落ち着いた表情を浮かべる「表の顔」。
だが心の奥底では、昨夜の声と吐息と涙が何度も蘇り、太腿の内側を濡らしていた。
「……ご主人様……」
小さく呟いたその瞬間、隣に座る人には聞こえないはずなのに、頬が一気に熱くなる。
羞恥と同時に甘美な悦びが走り抜ける。
***
職場で同僚に微笑みかけ、仕事をこなす。
だがその笑顔は仮面。
心の中では「次にご主人様に会えるのはいつか」「叱ってくださるだろうか」「褒めていただけるだろうか」――その思考ばかりが巡る。
昼休み、ふとスマホの画面に映るカレンダーを見つめ、唇を噛む。
予定表の隅に書き込んだ、ご主人様に会える日。
その日が来るのを待つだけで胸がざわつき、呼吸が浅くなる。
(ご主人様に命令されたい……叱られたい……褒められたい……)
欲望が理性を食い潰し、日常のすべてを染め上げていく。
指先で机をなぞると、その感触ですら「ご主人様の手」を思い出してしまう。
体が、心が、すべてが「ご主人様」を基準に動いてしまう。
***
夜。
一人でベッドに横たわると、静寂が余計に熱を煽る。
カーテン越しに街灯の光が差し込み、薄明かりの中で首輪をそっと喉にあてがう。
(ご主人様……早く、会いたい……)
そのまま目を閉じると、意識は昨夜の光景へと引き戻される。
ご主人様の低い声、ご主人様の体温、ご主人様の重み。
そして「ご主人様のもの」と刻まれた悦び。
「……もう、戻れない……。私は、ご主人様なしでは生きられない……」
唇から零れたその言葉は、自分自身への宣告であり、同時に甘美な陶酔だった。
***
こうして美咲は、表向きには変わらぬ日常を過ごしているように見せかけながら、
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