短編集(お薦め！)50＋

【 にゃーこ先生 】

【にゃーこ先生との出逢い】

にゃーこ先生と初めて出会ったのは西新宿のバルコニーに設置した物置の中だった。
何かどこかで鳴き声が聞こえる。
鳴き声に辿りつくとキジトラの仔猫が鳴いていた。
悪友が置いて行ったのです。
興味なかったのですが、いつの間にか仲の良い身内になっていました。今まで犬派の俺が猫派に変わる程でした。
にゃーこはみるみるうちに大きくなって西新宿から東新宿の引っ越しも経験しました。人見知りしない性格で皆に愛されて育ちました。東新宿に越してからは3人のルームメイトが居たので、にゃーこは三人の仲間と三つの部屋を楽しめました。なぜか俺にベッタリだったので俺の部屋でいつも寝ていました。8ヶ月経ったようだったので初めての去勢手術、一日入院でした。俺は寂しくて寂しくて、にゃーこの居ない長く寂しい日を味わいました。にゃーこも同じだったようで病院に迎えに行った時の嬉しそうな鳴き声といったら…。
俺はジャンバーの中に入れ、抱いて帰りました。手術の時に発覚した嘘みたいな事実がありました。
にゃーこは全身、ガンに襲われていたのです。術後、日に日に体調を悪くしはじめ、ご飯も食べれなくなるほど元気がなくなり、ベッドには飛び乗れない。まともに歩けなくなり、後ろ足を引きづりながら歩くようになりました。明日、目が覚めたら、いつものにゃーこに戻っているよう願いましたが悪くなる一方でトイレさえも行けず垂れ流すようになりました。一週間程、長く辛い日が続き、突然、すごく元気なにゃーこがそこにいました。
皆で良くなったみたいと喜んでいました。俺は仕事だったので元気になった、にゃーこに行ってきますと仕事に行きました。
今思えば、スゴい事があったのです。その日、朝、にゃーこを拾った張本人の部屋に行き、大きな鳴き声で起こし、抱かれ連れていかれ、ベッドで一緒に寝たようです。
お昼頃に真ん中の部屋に住む猫好きな友だちの部屋へ入っていき布団の中に入れてもらい一緒に寝ていました。
俺はみんなに元気になったよ！と挨拶してるんだと思っていました。
違ったんですね。
今では最後のお礼参りだったのかな？とも思えました。
いつものように元気になった、にゃーこは俺を仕事へ見送った、2時間後に亡くなりました。ルームメイトから電話がありました。
俺はなんで？どうして？と早くにゃーこの元に戻らなきゃ、会いたいと思い、仕事を切り上げ、家へ帰りました。
ルームメイトに抱かれ、にゃーこがいました。
俺はすぐにゃーこを渡してもらった。まだ温かい。人口呼吸すれば息を吹き返すんじゃと試みようとしたその時、親友に「もう楽にしてあげて！」と言われ、にゃーこを抱きながら泣いた。さっきまで元気にしていたのに…。俺は離れたくなかったが、にゃーこの為にも仕事に戻った。

にゃーことの短く長い8ヶ月に幕を閉じました。

にゃーこを火葬した。
何人ものガタイの良い仲間たちが立ち会ってくれた…。
俺はにゃーこの好きな犬の人形を一緒に入れた。俺の腕の代わりによく顎を乗せていた物だった…。

にゃーこの代わりはすぐに無理だろうけど、すぐににゃーこと同じキジトラの兄妹二匹の保護猫を授かった。ガスくんとミーコ。
二匹はすぐに三人部屋にも慣れ、元気に育った。
にゃーこの分まで元気に生きて！と。
にゃーこへの寂しさは少し紛らわしてくれた二匹。
去勢手術も二匹共、無事に終え、22年経った今も俺と一緒にいる―。
二人ともにゃーこの分も生き、愛されています。
俺の腕に顎を乗せて寝るのが大好きだった、にゃーこ。
過ごした月日は短かったけど、多くの思い出をもらいました。大きな存在感を残し、今の子たちと一緒にいるんだろうな、見守っているんだろうなと思いました。
猫の素晴らしさを教えてもらった第一の愛猫でした。

今後も生きているかぎり、猫派でいようと思いました。

そして虹の橋でまた会う日まで―！

おしまい～