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革命編 七章:黒を継ぎし者

乗り越えた先に

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 創造神オリジンが過去に実行した世界破壊の計画が再始動し、巨大な魔鋼マナメタルで築かれた天界エデンの大陸がそれを成す為の破壊兵器と化す。
 そして大陸の真下に作られた時空間の穴はアリア達が暮らしていた下界せかいと接続され、ついに巨大な極光と共に破壊兵器の砲撃が放たれた。

 一つの世界を破壊できる程の巨大なエネルギーを内包した砲撃は、凄まじい速度と共に時空間の穴を突き抜ける。
 そして黄金色に染まった下界せかいを白い極光で照らし、全てを破壊すべく貫こうとした。

 それこそまさに、歴代の『黒』が未来視し防ごうとした世界の終わりが訪れる光景すがた
 しかしその時、ある現象が砲撃の矛先に出現していた。

「あれは……っ!?」

 その光景を視認していたのは、避難先のゼーレマン侯爵領地で上空を見上げていたセルジアス=ライン=フォン=ローゼン。
 外に自らの足で出ていた彼は、極光と共に起きた異変を細める視線で気付いた。

 そこで見たのは、極光が降り注ぐ空に現れた新たな時空間の穴。
 すると下界せかいの大地まで届く前に、降り注ぐ巨大な極光ほうげきが新たな時空間の穴に飲み込まれていった。

 そうして場面は、再び天界エデンへ移る。
 すると天界エデンの大陸外殻で交戦していた干支衆やアルフレッド達は、大陸の真横に出現した巨大な時空間の穴に驚愕した。

「――……なんだぁ、ありゃぁ!?」

「タマモ!」

「……あれも、時空間の穴や。……でも、なんで真横あそこに――……!?」

 干支衆達は新たに作られた巨大な時空間の穴に気付き、その先に見える極光に気付く。
 すると浮遊する大陸の真横を掠めるように、極光と共に巨大な砲撃が放たれた。

 その振動と余波は、魔鋼マナメタルで形成された大陸が凄まじい振動と大気の揺れを吹き起こす。
 砲塔に形成された大陸の下部したがわに直撃し、干支衆達やアルフレッドを含む人形達はその衝撃によってその場から吹き飛ばされた。

 その光景を投影されている映像越しに見ていたウォーリスは、アルトリアが最後に実行した行動を理解する。

「――……これは……新たな時空間の穴を、形成したのか……!?」

「そうよ。――……『黒』は下界せかいにあの砲撃が放たれた光景を未来視したんでしょ。だから私達では砲撃を止められない事を知っていた。だったら、砲撃を止めずに世界の破壊を回避すればいいだけよ」

「……そうか。創造神オリジンの発した計画めいれいを止めようとすれば、循環機構システムが防いでしまう。だから計画めいれいに直接干渉しないように、時空間の穴を作ったのか……!」

 アルトリアは白い床に寝かされている創造神オリジンを見ながら、『黒』が見た未来を逆手に取った事を明かす。

 今まで『黒』が未来を知るには、転生した彼女自身が実際に見ていなければならない。
 その能力ちからの条件を過去に『クロエ』から聞いていたアリアの記憶によって、アルトリアは世界を破壊する為の砲撃が必ず実行される事を発射の直前に理解した。

 そこでアルトリアが咄嗟に思い付いたのは、『黒』が見ていない状況で世界の破壊を回避する方法。
 すると即座に創造神オリジンの計画を止める事を諦め、放たれる砲撃から世界の破壊を回避する為の手段に切り替えたのだ。

 僅か十数秒でそれを思い付き実行したアルトリアの機転に、ウォーリスは驚きを浮かべながら見つめる。
 しかしアルトリアは操作盤パネルに表示される情報を確認しながら、自らが考えた計画中断の策が実ったかを確認した。

「さぁ、これでどう!」

「……そうか、これは……大陸の砲塔が……!!」

「自分の砲撃こうげきを喰らって、壊れなさい!」

 アルトリアはそうした言葉を見せ、時空間の穴を通過して大陸の下部に浴びせられる砲撃を確認する。
 大陸を形成する膨大な魔鋼マナメタルによって凝縮された砲撃のエネルギーは、放出している砲塔へ直に浴びせられていた。

 それによって砲塔を砲塔自身に破壊させる事も考えていたアルトリアは、ウォーリスと共にその結果を見届ける。
 すると極光に飲まれた砲塔から別の閃光が舞い、砲塔を制御している施設と思しき場所から巨大な爆発が起きた事を確認した。

「よしっ!!」

「……砲塔に流れ込んでいたエネルギーが、一気に低下していく。……やったのか……!」

 映像越しに砲塔が破壊された事を確認したアルトリアは、右手を握りながら拳を作り口元を微笑ませる。
 それに連動するように一つの操作盤パネルを確認したウォーリスは、砲塔に供給されていた膨大なエネルギーが凄まじい勢いで低下し、砲撃が消えていく光景を確認した。

 すると次の瞬間、二人の周囲に展開されていた操作盤パネルの色が赤色から青色へ変化する。
 同時に進行されていた創造神オリジンの計画に停止信号が浮かび上がり、彼等の周囲に展開した天使モドキが突如として停止した。

「――……おっ、なんだ?」

創造神オリジンの計画が、止まったのか……!!」

 二人を守りながら戦っていた未来のユグナリスと鬼神フォウルは、停止した天使モドキ達を見て計画が止められた事を悟る。
 そして振り返りながら計画を止めた二人に対して、口元を微笑ませながら視線を向けた。

 そうして計画が中止された影響は、他の場所でも現れる。
 マナの大樹周辺で神兵達と戦い続けていたエリクやユグナリス達もまた、それ等が動きを止めた事を確認していた。

「――……神兵やつらの動きが、止まった……!?」

「これは……それに、この凄まじい揺れは……っ!!」

 エリク達は凄まじく揺れる聖域の地面へ踏ん張りながら、その姿勢を保つ。
 その最中に停止した神兵達を見て、状況が変化した事を察した。

 それを『青』は思考で理解し、彼等に対して状況を伝える。

「恐らく、創造神オリジンの計画が中断されたのだろう」

「!?」

「五百年前の天変地異の時にも、神兵達やつらはこうして停止した。……止めたのは、アルトリアか?」

「……ああ、きっと……!」

「アルトリアが、これを……」

 『青』は創造神オリジンの計画が中断された事を察し、それを周囲の者達に伝える。
 それに同意しアルトリアが計画を止めた事を信じるエリクと、それに驚く様子を浮かべるユグナリスの姿が見えた。

 しかしそうした中で、再び次の事態は起こる。
 それは循環機構システムを書き換えていたアルトリアとウォーリスの再び起きていた、共闘を終えた事に因る亀裂だった。

「おい、テメェ……!」

「やっぱり、奴を信じちゃいけなかったんだ……!!」

「――……動かないでもらおう。……勿論、君もだ。アルトリア」

「……ッ」

 そこで見える光景は、苦々しい表情を浮かべる未来のユグナリスと鬼神フォウルの姿。
 彼等が見る先にはウォーリスが立ち、その右腕で捕えられている創造神オリジンの姿が見えた。

 そうした行動に出たウォーリスの姿を見て、アルトリアも厳しい表情を浮かべる。
 それは危機を乗り越えた者達の見せた一瞬の油断を突いた、ウォーリスの策だった。
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