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革命編 七章:黒を継ぎし者

見届ける信頼

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 自らの未来を勝ち取る事を選んだウォーリスは、一対一の戦いを望んだエリクと決着をつける為に本格的な戦闘を開始する。
 互いに到達者エンドレス能力ちからを有する者の為に、二人は互いの攻撃で相手を討つ為に激しい戦闘を繰り広げ始めた。

 一方その頃、マナの大樹周辺から大きく離れた森林地帯もりに場面は移る。
 マナの実を掴んだ影響で左手を失っていたケイルは、師匠であるトモエに保護されていた。

 すると意識を取り戻したケイルが、傍に立ちながらマナの大樹がある方角へ視線を向けているトモエに呼び掛ける。

「――……トモエさん……」

「起きたか、軽流けいる

 瞼を開きながら声を漏らすケイルに、トモエは振り向きながら屈む。
 そして上体を起こそうとするケイルを留めて、そのまま話し続けた。

「そのまま安静にしていろ」

「……状況は? エリク達は、どうなって……」

「どうやら、あの神兵と呼ばれている敵は活動を停止したらしい。だが別に現れた巨大なオーラが、もう一つの巨大なオーラを持つ者と戦っているようだ」

「巨大なオーラ……。……まさか、エリク……!?」

「動くな。失血で本当に死ぬぞ」

 ケイルはトモエの話を聞き、まだエリクが戦い続けている可能性を考える。
 それに身体が反応して再び起き上がろうとすると、トモエが強く制止しながら押し留めた。

 すると首を起こして正面まえを確認したケイルの視界に、あるモノが映る。
 そこで目を見開いたケイルは、口を開きながら驚愕の声を漏らした。

「……アリア……!?」

「!!」

 ケイルの口から出た言葉に、トモエは驚きながら屈んだ状態で身を捻り振り向く。
 すると先程まで存在しなかった方角しょうめんに、一人の女性が立っていることを知った。

 それはケイルがよく知っているアリアの姿をしており、その両手には創造神オリジンと思しき女性も抱えられている。
 しかし気配の感知に慣れている二人が視認するまで気付けなかった事で、目の前に居る相手が異様な存在である事を否応なく察せられる事になった。

 それによって最大の警戒で立ち上がり苦無クナイを構えたトモエだったが、次の瞬間に視界に捉えていた女性アルトリアの姿が消える。
 そして次の瞬間、自分達の真横から声が発せられた。

「――……無事みたいね。ケイル」

「!?」

「……お前、アリアなのか?」

「ええ。……そっちの人は、ケイルの知り合い?」

「あ、あぁ……」

 一瞬で自分達の真横に移動したアルトリアを見て、ケイルは驚愕しながらも問い掛けに応える。
 するとケイルの対応に驚きながらも、改めて目の前に現れた女性あいての顔を見たトモエは、箱舟ノアの画面で確認したアルトリアの姿を思い出した。

「……貴方が、連れ去られたという軽流ケイルの仲間ですか」

「まぁね。……それよりも、今はケイルの治療が先よ」

「えっ――……!?」

「……!!」

 そう言いながらケイルを見たアルトリアは、何の動作も無く切断されているケイルの左手に治癒の光を灯す。
 すると巻かれていた包帯が自然に紐解け、ケイルが感じていた痛みが瞬く間に薄まり、更に切断面の先に形成された光の粒子が左手の形を模り始めた。

 それが物質化するようにケイルの失った左手となり、切断面と癒着する。
 すると左手を失っていたはずのケイルが、神経が通うように形成し癒着した左手に感覚があるのを自覚した。

「な……!?」

「どう、もう動かせるでしょう?」

「……う、動く。……これは……!?」

「別に、簡単な魔法よ。貴方の失った左手を復元して、繋ぎ合わせただけ」

「魔法って……。……それ、創造神オリジンだろ? なんで創造神そいつが近くにいて、魔法が使えるんだ?」

「別にいいじゃない、そんな細かい事は」

「……お前、まさか……」

 ケイルは自身の左手を復元し治療したアルトリアの魔法にはでなく、周囲の魔力を無力化させてしまう創造神オリジンの傍でアルトリアが魔法を使えている事に驚く。
 しかしそれを誤魔化すアルトリアの態度に、脳裏にある可能性をよぎらせた。

 その気付きを敢えて言わせないように、アルトリアは言葉を続ける。

「それよりも、貴方も来るでしょ?」

「え?」

「彼は今、自分でこの戦いを終わらせようとしている。私達は、それを見届ける必要があるわ」

「……じゃあ、今戦ってるのは……やっぱり……」

「そう、エリクよ。……行くなら、一緒に連れて行くけど?」

「……」

 そうして創造神オリジンの足を降ろして右手で上体を支えたまま、アルトリアは左手をケイルは差し伸べる。
 するとそれに応じるように、ケイルは状態を起こしながら復元した左手で掴み握った。

「行くに、決まってるさ……」

「そう言うと思ったわ。――……というわけで、ケイルは連れて行くから。貴方は大樹あのきの周りで倒れてる連中の、世話でもしてやって」

「何を――……っ!?」

 そう告げた瞬間、ケイルと共にアルトリアはその場から姿を消す。
 予備動作すらなく一瞬で消えた三人を見て驚愕するトモエだったが、最後に残された言葉によって武玄ブゲンの安否を気にし、苦々しい表情を覆面の奥に隠しながらマナの大樹がある方向へ向かい始めた。

 そして消えた三人は、光の粒子で形成された結界によって浮遊したまま上空に浮かぶ。
 すると奇怪な浮遊感で姿勢を崩すケイルに、アルトリアは下に視線を向けながら声を掛けた。

「――……うわっ、なんだこれ……!?」

「浮かんでるだけよ。不思議でもないでしょ?」

「お、お前なぁ……!」

「それよりも、見届けるんでしょ。――……あそこで、エリクとウォーリスが戦ってるわ」

「!」

 そう伝えるアルトリアの言葉で、ケイルもまた同じ場所を見つめる。
 するとそこでは、巨大な木々を薙ぎ倒しながら激しい戦闘を繰り広げているエリクとウォーリスの姿が見えた。

 しかしエリクだけがウォーリスと対峙しているという状況に、ケイルは驚愕しながら問い掛ける。

「エリクだけ、なのか……。他の奴等はっ!? それに、なんでお前も……!?」

「エリクが言ったのよ。自分一人で戦いたいって」

「はぁっ!?」

「自分だけで決着をつけたいんですって。まったく、相変わらずよね。エリクって」

「それをお前は、認めたのかよ……。なんでだっ!? あいつ一人で戦わせて、もし――……」

「エリクは勝つわ」

「!?」

「エリクなら勝てる。……そう信じて託してあげるのが、仲間ってものでしょ?」

「……クソッ!!」

 エリク一人だけが戦っている状況を責めようとしたケイルだったが、アルトリアが発する自信に満ちた表情と信頼の言葉がそれを阻む。
 すると二人の間に存在する信頼が再び自分の予想を上回っていた事を自覚させられたケイルは、悪態を漏らしながらアルトリアから顔を逸らした。

 こうしてエリクとウォーリスの戦いは、アルトリアによって邪魔が入らない状態となる。
 しかし彼女の信頼が叶えられるかは、劣勢に立つエリクに委ねられる事になった。
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