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革命編 八章:冒険譚の終幕

真竜の厄災

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 天界エデンにおいて激突する新旧『緑』の七大聖人セブンスワンとユグナリス達は、それぞれに思いを抱きながら戦闘を始める。
 しかし自身の師匠である老騎士ログウェルと対峙したユグナリスは、自身の感情こころを叫びながら最後の説得を試みた。

 それでも弟子ユグナリスの成長に満足した事を明かしたログウェルは、拾い得ていた『マナの実』を食べる。
 すると膨大な生命力オーラ魔力マナを暴風が天界エデンの大陸全域を覆い、その中央にて緑色の鱗に覆われた巨大なドラゴンが現れた。

 暴風あらしの中でそれを視認するユグナリスは、それが『マナの実』を食して変貌したログウェルだと気付きながら叫ぶ。

「――……ログウェル……!! どうして、そんな姿に……。……何かの魔法なのかっ!?」

『魔法……そうじゃな。お主や今までの儂が人間の姿をしておったのも、魔法だったと言ってもいい』

「え……っ!?」

わしおぬしの一族は、人間ひとに信仰される存在じゃった。だからこそ人間ひとの世で暮らす為に、人間ひとと同じ姿を持つようになった。しかし人の血が交じり合う中で、本当の姿を忘れてしまったんじゃよ』

「……じゃあ、さっきのを食べて……真の姿になったってのは……」

『これが、風の一族が持つ真の姿。――……真竜しんりゅうじゃよ』

「真竜……!?」

 竜の姿となったログウェルは、それが『風』の一族が持つ本当の姿だと明かす。
 その話に驚愕を浮かべる中で、ユグナリスの後方から二人の声が響いた。

「――……うわっ、なにあの蛇っぽいのっ!?」

「やはり、真竜あのすがたに成りよったか……!!」

「二人とも……!?」

 その場に駆け現れたのは、マギルスと『青』。
 そして互いに暴風の中に見える真竜ログウェルを見ながら、互いに異なる感想を抱いて驚きの声を零した。

 しかしそれと同時に、真竜ログウェルの真下に存在した小さな暴風あらしが人の姿を模る。
 するとそこには、『緑』の初代ガリウス二代目バリスが現れた。

 それに気付いた三人は、それぞれに向かい合いながら『緑』達の言葉を聞く。

『では御二人とも、彼等を頼めるかね?』

「任せよ。存分にやれ」

「御武運を、ログウェル殿」

「……なっ、待て――……ッ!?」

 初代ガリウス二代目バリスに頼み事を向けたログウェルは、真竜の姿のまま暴風を巻き起こして更なる上空へ向かう。
 それを追おうと『生命の火』で肉体を上昇させようとするユグナリスだったが、それを防ぐように初代ガリウスの矢が幾百本も襲い掛かって来た。

 三人はそれぞれに浴びせられる矢を武器や魔法で迎撃し、全て撃ち落とす。
 しかし真竜ログウェルはその間に遥か上空に上昇し、暴風が僅かに引いた場で五人は向かい合う形を見せた。

 すると『青』は厳しい表情を浮かべ、『緑』である彼等ふたりに対して怒鳴るように声を向ける。

「お前達、何をするつもりなのだ? 『風』の到達者エンドレス、真竜まで蘇らせるとは……!」

「『風』の到達者エンドレス……!?」

真竜アレは『風』の到達者エンドレスと呼ばれた龍王の一匹、【真竜王ドラゴンロード】ワームの眷属だ。『風』の一族とは、その真竜の血を引いた一族だとも言われている」

「真竜を引くって……じゃあ、ログウェルも魔人だったんですかっ!?」

「いや、『緑』の七大聖人セブンスワンは『風』の一族……真竜の能力ちからを継承させるモノだったのだろう。だからこそ、到達者となれば真竜の姿になる。――……そうなのだろう、お前達っ!!」

 『青』は真竜と『緑』の七大聖人セブンスワンの関係を予測し、隣に立つユグナリスにも教える。
 するとこうした事態になった事を、改めて当人達ふたりに怒鳴り聞いた。

 しかし相対するバリスとガリウスは、互いに落ち着いた面持ちで声を向ける。

「試練だ」

「!」

「彼こそが、人間ひとの試練となるのですよ」

「……ログウェルが、試練になるって……さっきから、アンタ達は何を言ってるんだ……!?」

 バリスとガリウスが短く告げる言葉に、改めてユグナリスは動揺した面持ちを浮かべる。
 しかしその言葉を聞いた『青』だけは、その先に起こるであろう事を察した。

「……真竜が仕えた『風』の到達者エンドレス……【真竜王ドラゴンロード】ワームは、数十万年前に死んでいる。その理由が、人間大陸を滅ぼそうとした事が原因だったと伝わっている」

「!?」

「当時、健在だった『火』の到達者エンドレスを筆頭とした猛者達が真竜王ワームとその眷属に挑んだ。その結果、真竜王ワームは討たれ眷属である真竜達も能力ちからが衰えたと聞く。……その再現を、お前達はやろうとしているのか?」

「再現って……それが試練っ!?」

 再び『青』の予測を聞いたユグナリスは、『緑』達が真竜王と呼ばれる存在が起こした試練を再現しようとしている事を察する。
 それに対して言葉での返答を見せない二人だったが、その態度によって答えを返した。

「……さぁ。我々を倒し、再び試練を越えてみなさい」

「そして、俺達に見せてくれ。――……人間ひとの、可能性を」

「来るぞっ!!」

「ッ!!」

 バリスとガリウスは互いに声を向けた後、笑みを失くしながら鋭い眼光を三人に向ける。
 それと同時に二人の変化に気付いた『青』が隣に立つ二人に呼び掛けると、バリスが凄まじい速さで出て来た。
 更にそれを援護するように、ガリウスが生命力オーラの弓を構えて夥しい矢を放ち撃つ。

 前衛バリス後衛ガリウスの連携で迫るその姿に、ユグナリス達は対応するように構える。
 しかし『青』はそんな二人の前に自ら出ると錫杖を振り、矢を迎撃する水球を放ちながらバリスの拳を杖の柄で受け止めた。

「グッ!!」

「『青』のおじさんっ!?」

「……お前達は、奴を止めに行けっ!!」

「『青』殿っ!?」

「この二人は、儂が相手をする! ――……行けっ!!」

 『青』はマギルスとユグナリスにそう言い放ち、バリスの格闘を棒術で捌きながら逆に大きく前へ歩み出る。
 更にガリウスが放つ矢を全て水球で迎撃し、たった一人で『緑』の二人を相手にする様子を見せた。

 その提案は、ここに来る当初から『青』が告げていた方法ことでもある。
 だからこそ、それを聞いたユグナリスは強張った表情を引き締めながらマギルスに顔を向けた。

「……マギルス殿! 俺を、ログウェルが居る上空うえへ連れて行ってくださいっ!!」

「いいの?」

「ここは、『青』殿に任せます!」

「んー、分かった!」

 『青』が戦う背中を見ながら、ユグナリスは頼みを向ける。
 それに応じたマギルスは笑顔を向け、自身の足に精神武装アストラルウェポンを纏った。

 そしてマギルスがユグナリスの右腕を握り、それと同時に足に溜めた魔力を解き放つ。

「行くよっ!!」

「――……っ!!」

 凄まじい脚力と魔力の噴射でその場から跳び上がったマギルスは、ユグナリスと共に遥か上空へ向かい始める。
 それを妨害しようとガリウスは数多の矢を放つが、『青』の放った水球がそれ等を全て吸収して止めた。

 すると改めて『緑』の二人と『青』が対峙し、言葉を向け合う。

「流石ですな、『青』の七大聖人セブンスワン

「チッ、止められなかったか」

「……お前達の相手は、儂だけで十分だ」

 錫杖つえを振り構える『青』は、自身の周囲に水弾と水球を数多に生み出す。
 それと対峙するバリスとガリウスは、再び激戦を交え始めた。

 しかしそうした間に、上空に昇った真竜ログウェルは人間大陸を見下ろす。
 そして自身の巨大な肉体を纏う暴風を、まるで拡散させるように人間大陸の全土に広めた。

 すると次の瞬間、人間大陸の各地にて暗雲が立ち込める。
 更に暴風が吹き荒れながら鋭く重い雨が降り始めて、瞬く間に雷鳴が轟き始めた。

 それが人間大陸に広がる海にも影響を及ぼし、海の増大と津波を発生させていく。
 
『……さぁ、人間よ。儂の試練を乗り越えて見せろよ』

 上空から見下ろしながらそう呟く真竜ログウェルは、自身の生み出す暴風によって災害を生み出し始める。
 それに晒される地上の人間達は、突如として起きる暴風と落雷に驚愕を浮かべるしかない。
 更に大量の生命力オーラ魔力マナを含む暴風と雷雨は、人間大陸の人々や文明に多大な損害を与え始めていた。

 そしてそうした状況になった時、『聖域』にて自分の娘アルトリアと戯れていたメディアが呟く。

「――……ログウェルも始めたかな。だったら、私も始めようか」

「――……ッ」

 森林を削り吹き飛ばしていたアルトリアを横目に、メディアは自身の権能ちからを使って循環機構システムの操作盤を目の前に投影させる。
 そして何かを操作した後、再びアルトリアに微笑みと視線を向けた。

「ほらほら、どうしたの。元気がなくなってきたね?」

「……ハァ……。……ハァ……ッ!!」

 そうして呼び掛けたメディアの言葉に、反発するようにアルトリアは起き上がる。
 しかしその光景は、人間大陸の居る人々に映像として映し出されていた。

 こうして『緑』の七大聖人セブンスワンログウェルは到達者エンドレスとなり、真竜となって人間大陸に厄災を齎し始める。
 それを察知し新たな到達者の誕生を危惧した巫女姫レイは干支衆を遣いに出し、『白』の七大聖人セブンスワンであるみかどに協力を要請したのだった。
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