つがいの薔薇 オメガは傲慢伯爵の溺愛に濡れる

沖田弥子

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耽溺の別荘 5

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 今も浴槽で晃久に貫かれながら、首筋に吸いつかれていた。

「あっ……ん……若さま、そんなに……」

 晃久がゆるゆると腰を突き上げると、そのたびに雄芯を銜え込んだ腰が揺れる。浴槽の湯は、ふたりの淫らな動きに、ぱしゃぱしゃと水音を上げた。

「胸元の痕が薄くなってきたな。背中もだ。背中は後でたっぷり付けてやる」

 向かい合わせで浴槽に入り、晃久の腰を跨ぐ格好で貫かれている。風呂で中に放ったものを洗うはずが、気がつくと晃久に抱きしめられて腰を押しつけられていた。常にそのような調子なので蕾や花筒は乾く暇もなく、いつでも濡らされていた。

「そんなに痕を付けなくても、僕は若さまのものです」
「何だ。嫌なのか?」
「だってこんなに痕が付いてたら、誰にも会えませんし……」

 咎めるように強く腰を突かれる。急な刺激に、澪は背を反らして嬌声を上げた。

「っあ、あっあ」
「誰にも会うな。俺だけが見る所有の印だ。まったくおまえは体の熱が冷めると余計なことばかり口にする。淫乱なときはあんなに可愛いのに」

 腰を揺らされながら尖った胸の飾りを指の腹で弄られる。快感を覚えた紅色の飾りは、すぐにぷくりと膨らんだ。

「あ、あ……っ、淫乱だなんて、そんなこと……」
「淫乱だろう。どんなに恥ずかしい台詞でも言って、俺が欲しいと強請るんだからな」
「それはっ……若さまが言わせてるんです」

 目元を朱に染めて晃久を睨むが、雄を銜えながらでは全く力が籠もらなかった。

「そういうことを言うか」

 晃久は面白そうに口端を引き上げる。そして更に激しく澪の体を湯の中に躍らせて、胸の突起を捏ね回した。

「ああ、あっ、あっ、若さま、いく……っ」

 達するときに、いく、と伝えることも晃久から教えられた。すっかり快感を覚え込まされた体は容易に高みへ上り詰める。
 躍る花芯から迸る白蜜が、白い花のように湯に散る。同時に花筒の奥深くに、晃久の欲が撒き散らされた。
 もう何度、晃久の精を注ぎ込まれたか知れない。
 絶倫の晃久は限界を知らず、日に数え切れないほど大量の白濁を呑み込まされている。
 このままでは本当に妊娠してしまうかもしれない。
 以前は男の自分が妊娠するなんて有り得ないと思っていた澪が懸念するほど、晃久と濃密に体を重ねていた。そして貫かれるたびに悦びを覚え、アルファに惹かれるオメガである自分の本能を自覚する。
 達した後の気怠い体を抱きしめられて、晃久の肩口に頬を預けながら澪は呟く。

「若さま……こんなにしていたら、本当に妊娠してしまうかもしれません」
「何をしていたらだと?」

 間近にある晃久の顔を覗くと、楽しそうに笑っている。分かっているくせに、澪にいやらしい台詞を言わせたいのだ。
 意地悪なんだから。
 でも、逆らえない。

「その……セックスして……中で出していたら……です」

 俯いてぼそぼそと告げると、褒美のように頬へ口づけられた。
 晃久は天気の話をするような調子で、ごく軽く、恐るべきことを言い放った。

「いいじゃないか。俺と澪の子ができれば、大須賀家の跡取りになれる」
「……え?」

 怖ろしい可能性を指摘されて、澪の心臓がすうと冷える。
 仮に澪が妊娠して子を産めば、その子が大須賀家の第一子となる。
 晃久と澪の場合は、晃久が正妻の子でさらに年上だったので、澪がいても問題は起こらなかった。長子が継ぐという幸之介の宣言に誰もが賛同した。
 けれど婚約者の恵子よりも早く澪の子が生まれれば、大いなる災いを呼ぶのは想像に易い。

「な……何を言ってるんです。そんなこと有り得ませんよ。大須賀家を継ぐのは若さまと恵子さまのお子さまです」

 晃久は一笑に付した。澪が予測していた未来は晃久の中には微塵もないのだと、そのとき悟った。

「おまえ、そんなこと信じてるのか? 俺は押しつけられた女を義理で抱けるほど優等生じゃない。あの女とは一度も寝ていないから安心しろ」

 何を安心しろというのか。
 澪が妊娠などしたら大変なことになる。晃久の立場が悪くなり、榊侯爵から何らかの責任を取らされるかもしれない。
 子の前に、晃久が大須賀家を継げないという事態になり得るかもしれないのだ。大須賀家の現当主は幸之介なのである。問題を起こした華族の息子が家督を継げず、叔父に譲ったという話もあると聞き及んでいる。
 ことの重大性を改めて認識して、澪は背筋を凍らせた。

「僕が妊娠などしたら若さまも責任を取らされるかもしれません。だって若さまと僕は、同じ父を持つ異母兄弟なんですよ?」
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