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初デートは乗馬デートです

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頭を左右に振る度に、顔の横でくるりんと揺れる縦ロールに思わずうっとりしちゃう。

ドリル的な表現をされがちな悪役令嬢の縦ロールだけど、実際はめちゃめちゃ可愛いと思うのよね。縦ロール。

今日はなんてったって初デート!しかも乗馬デートですからね。
男は揺れる物を目で追う習性があるとかないとか聞いたことがあるような気がするし、乗馬だけにポニーテールがいいかとも思ったんだけどね。
シルヴィアって悪役令嬢なだけあって大人っぽい冷たい美貌なわけよ。
そんなシルヴィアがポニーテールにするとやたら凛々しくなっちゃう。
デートに必要なのは凛々しさより可愛いさよ!(多分)

そんなワケでツインテールにしちゃったよ!
この二次元か美少女アイドルにしか許されないヘアスタイル!
でも超絶美少女のシルヴィアちゃんには似合ってしまうのだ!
クールな美貌に可愛いが過ぎるツインテール。しかもゆる巻き縦ロールが動く度にふわふわくるりんですよ!

それに耳に着けたシンプルな小粒のダイヤのピアスは太陽の光を浴びて白い肌を更に輝かせて、いつもは出ていない首筋をより魅力的にするはず!

更に乗馬服も、カッチリとしたショート丈のジャケットを華やかに、中のブラウスはシンプルに身体のラインを綺麗に出すスタイルで自画自賛したいほど美しい私!

はぁ


ーーーーーー



「シルヴィア!」

「ご機嫌麗しゅうございます。殿下」

人前ですからね。鉄仮面お人形バージョンでやってます。
殿下もそれを分かっているので気にせずにっこにっこしてる。
あー顔がいい…。
向こうもめっちゃ見惚れてるな。
ツインテール大正解だね。

「あー…シルヴィア…。今日はだな。二人乗りで行こうと思うんだが…」

「!…はい。仰せのままに」

そんな照れ照れで言うなよー!!
鉄仮面が崩れるとこだったじゃないのー!


…ということで。
乗馬二人乗り。
乙女ゲームに転生しちゃった系小説の舞台なので女性の乗馬服はドレスではなくパンツスタイル。
もう何でもありか…と思うけどシルヴィアちゃんのプリップリの形のいいお尻とスラッと長い美しい脚を存分に活かせて幸せだからいいか。

王子に抱きしめられるように馬に跨がる。
周りを護衛が囲んでいるから露骨なイチャ付きは出来ないとはいえ、合法的に密着出来るようにするとはやるな王子。

ゆったりと馬を歩かせ、景色を見ながらポツポツと話しをする。
腰に当たる熱が若干硬度を増してるのはご愛嬌だ。

森を抜けて小さな泉に出る。
これが王城の敷地内だと言うのだからファンタジー世界はすごい。

馬を降りると、小さなロッジに案内される。
ここは王族の憩いの場らしい。
まぁ婚約して約10年一度も連れて来てもらってませんが。
ちょいちょいクズな思い出がトキメキを邪魔して冷静にしてくれるわ~。


泉に足をつけられるほどに張り出したロッジのテラスに出ると、お茶を用意していたメイドがサッといなくなる。
周囲に人はいるだろうに、まるで二人きりだ。

「シルヴィア」

「はい。アルフォンス様」

ええ、希望に応えますよ。その為の人払いですもんね。

ああ…顔がいい。ついうっとり微笑んでしまう。
美形を見るだけで勝手に赤面するミーハーさがいい感じに初々しさを演出してるんじゃなかろうか。
そうして見つめ合った途端に頬に手が添えられる。
こいつ手が早いな。

「シルヴィア…いいか?」

「あ…外で…恥ずかしい…」

近寄ってきた顔を俯いて避ける。
ラッキースケベは良いけど本格スケベは度が過ぎるとヒロインに会う前に飽きられる可能性があるからね。
ヒロイン倒してもモブ令嬢ってラスボスがいるし。
弄ばれてポイなんて一番最悪なパターンだわ。

「わ…悪い…ああ…違うんだ。俺はただシルヴィアにこの景色が見せたくてだな…」

王子あたふたし過ぎ。
違くないだろ。いい感じのシチュエーションでキスしようとしてたろ。

「いえ…こちらこそ…すみません…。ただ…ここでは…その…」

「いや、わかってる。初めてが外では…いやっ!初めてと言うのはそういう意味では無いからな!!」

「へ…あの…口付けをしてくださろうと…してたのでは…無いのですか…あ…いやだっ…私ったら…」

顔を覆っていやいやしてみた。
決して王子の墓穴に笑いそうになってるからじゃないよ!

「あ…それは…」

「申し訳ありませんっ!私…私ったら…はしたなくもアルフォンス様に…くっ口付けを…していただきたいと思って…いて…それで…そんなふうに勘違いしてしまったのです…」

「…それは、勘違いじゃない」

そっと顔を覆った手をどかされ、整った顔が現れる。

「俺もシルヴィアとキスをしたいと思っていたし、しようとしていた。だがこんな外でしようとしたのは少し考え無しだったな。悪かった」

「いえ…いいえ!嬉しいです…。でも…恥ずかしくなってしまって…すみません」

「いや…性急だったな。手は、握っていいか?」

「はい。もちろんですわ。嬉しい…」

それから私達は健全手を繋いでお茶を楽しんだ。



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