あふれる想いを君に

 華奢な身体に、声変わり前の小学生のような声。くりっとした大きな瞳が、小さな顔にバランスよく収まっている。
 ヒナタは生物学的性以外、完全無欠の美少女である。

 桜の花びらが舞う、大学一年生の春。
「一目見たときから、好きでした」
 行く手を阻む数多の同性。
 入学以来、連日繰り返されているヒナタの日常。
 冷たくあしらうまでの流れが日課となっている。

 ヒナタはLGBTQなのか。
 否。性自認は男。恋愛対象は女性である。

 日常的に交際を申し込まれているヒナタ。
 しかし、交際経験は無い。

 モテないわけではない。
 好意を向けてくる人が、恋愛対象外である同性しかいない。

 わかってきたことは、ヒナタの性別を女性と誤認している人が多いこと。学年が違ったり、接点が少ない人の多くが性別を誤認している。

 誤った認識を改めてもらおうと、自身の性別が男であると伝えていた時期はある。
 しかし、ボクっ娘と認識されたり、男の娘でも構わないと言い寄られる始末。好転することは無かった。
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